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「姉様は、覚えていらっしゃいますか?」
「え? 何を……かしら――」
天井の高さと同じく、木縁の両開きの窓は、外側に放たれていて部屋には、燦々と降り注ぐ陽と爽やかな風がカーテンをそよがせていた第五の月。
その窓から外を見るようにして、揺り椅子に座って本を読む女性が一人。
椅子の背もたれから垂れるウェーブがかった銀色の髪の毛は、床につきそうな程に長く時折、風で靡く。
後ろから声を掛けられた女性は、読んでいた本に栞を挟み膝の上で閉じると穏やかな笑顔で声の主に答えた。
声の主は、入り口の扉を開けたままドアの隣の壁に寄り掛かって、女性を見ながら部屋の中に立っていた。
茶髪で横よりも少し高い位置で結っている外跳ねのツインテールの少女。
返答があった後に壁から体を浮かせ部屋の中央へ向かって数歩出ると一度、目線を女性から落として俯くが、ぎこちない笑顔と共に目線を戻し、
「いいえ。なんでもありませんわ……」
両手を体の後ろに回して申し訳なさそうに首を傾け言った。
そう。と優しい声で少女の話を聞き流した女性は、栞を挟んでいた本を開き視線を落とす。
部屋の中に佇んだままの少女は、何事もなかったように本を読む女性を前に踵を返し部屋を出て行こうとするのだが、後ろ髪を引かれるような思いがし立ち止まると、
――覚えているはずがないわ。何故なら……姉様は、私のことだって覚えてはいらっしゃらないでしょ? あの日……姉様の身に何が起こったのですか? 最愛の人を亡くした。あの日に……




