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灰の子  作者: カズマ
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魔導都市

魔導都市アグラザイン

 人口訳50万人、半径訳50kmの世界と記載されている

 誰かが調べたこの世界の歴史を何となく読み漁る

 上層――俺たちが暮らす街、中心に存在する城には何百年と生きた教皇が今も神に祈りを捧げている

 中層――魔法を使えない子供を産んだ罰として落とされる街

「下層……通称灰の街……」

 思わず漏れてしまった言葉が王立図書館の静寂に音をもたらす

 魔導都市アグラザインの中心部に存在する王宮

 そこから少し離れたところに存在する図書館に俺はいた

 王都の中でも権威がなくても比較的入りやすい場所でも王国魔法騎士団の訓練兵では緊張してしまう

 小さく喉を鳴らして何事もなかったかのように本をめくる

「歴史に興味があるのかい?えーとアイン君だっけ?」

 突然呼ばれた自分の名前に体を震わせてしまう

 その拍子に持っていた本が地面に落ちてしまう

「驚かせてごめん、はいこれ……ここだけの話この本私の叔父が書いたものなんだよ」

「え!?本当ですか?」

 受け取った本に驚きながら礼をする

 その返事に男は本当さと返す

「自己紹介が遅れたね、私はアベン。王家直属の考古学者さ」

「王家!これは大変失礼致しました、私の名は」

「アイン ロザリオ君だろ、王国魔法騎士団の期待の新人……いい意味でも悪い意味でも有名だよ君」

 俺は頭を掻きながら何とも言えない表情をとる

 ここまで名前が響いているとは思ってなかった

 でもちょっと上司と揉めただけなんだけどな……

「君、これから暇かい?」

「申し訳ありませんがもうそろそろ訓練所に戻らなければならなくて……」

「ならそこまででいいから歩きながら少し話さないか?歴史について興味を持った人とは意見交流をしたいんだ」

 王家直属の考古学者との会話にはとても興味が湧く、それと同時に俺は絶対無礼を働く気がする

 いやそもそもこの場を断ること自体が無礼なのか?

 少し考えたが結局考えるのをやめた

 無礼を働いた時はその時考えよう

「それなら喜んで」

 アベンは少年のような顔で喜び俺の手を握る

 強く握られた手に少し戸惑いながら俺とアベンは訓練所に歩き始める

「灰の街の由来って何だと思う?」

「……光が届かないからとかですか?」

「それだったら闇の街とか暗いイメージを名前とっても良さそうなのだが人は皆あの地下を灰の街と呼ぶ、その理由は一つの魔法が原因ではないかと考えられているんだ」

「……灰の魔法……みたいなものですか?」

「通称『虚無の心臓』と呼ばれる神様の心臓が保管されているのではないかと私は思っていてね、それにも理由があって古い伝記を見てみるといろんな神様の中に悪い神様がいたらしくてそれをこの世界の最下層に封印されたんじゃないかって」

「……それってあまりにも」

「荒唐無稽だよね……私もそう思う、けど何か想像して予測してそれが正解だったら嬉しいし、間違っていても楽しい……過去の人が何を私たちに伝えようとしたのかを知るのが楽しいから止まらないんだ」

 目の輝きをますアベンはさらに灰の街について語り出す

 子供みたいに話すアベンに相槌をしているといつのまにか訓練所にまで来てしまった

「おっと、もうついてしまったか。悪いね私ばかり話してしまって」

「いえ、私も勉強になりました。ありがとうございます」

「それならよかったよ、私はいつも正午には図書館にいるから気が向いたら遊びに来てくれ、それじゃあ」

「……ちょっと待ってください」

 手を振って去ろうとするアベンを少し考えてから呼び止める

 自分が知りたかったことを知るために

「灰の子供についてどう思いますか?」

 アベンは少し悩んでからすぐに答える

「可哀想だとは思うけどしょうがないよ。魔法が使えないなら人としての価値は無い」

 そして何事もなかったかのようにアベンは去っていった

 少し胸が痛くなった

 ***

 俺は魔導隊に属することになった

 星の紋章が入った耳飾りをつけ、王に忠誠を誓う

 ここ、アグラザインにて1人の少年が頂点を目指す物語だ

「だが現実はそう甘くなく、どんな英雄にも下積み時代があるもんなんだよ……」

 深くため息をつきながらパンを一つちぎり口に加える

 魔導隊に入って3週間ほどたった

 仕事といえば雑用や訓練

 魔導隊が何かを成すことがあるわけではないのはわかってはあるがこうも日常とあまり変わらないのは些か退屈だ

「……やっぱ初日のあれが不味かったかな」

「当然でしょ、直属の上司を魔法でボコボコにしたんだからね。あのあとアーノルド様の機嫌を直すの苦労したんだから」

 どすんと勢いよく隣に座った見るからに強気そうな琥珀色のツインテールをした女友達はその勢いでパンを口に頬張る

「ロノ……ああ、クリードリーガル殿ではありませんか、お疲れ様です。」

「やめてよねその長い名前で呼ばれるの嫌だって知っているくせに」

 脛を蹴りながらこちらの食事にまで手を出してくる

「それ俺の……」

「そんなこといいから早く部隊に復帰しなよ、私も一緒に謝ってあげるからさ」

「いや、そんなことより俺の飯……」

「そうですよ!アイン君は早く私の部隊に来るべきです!!」

 今度は別の方の隣にストンと座った少し小柄な腰までつきそうな長い紫色の髪をした女の先輩が隣に座る

「ロベリア副隊長、お疲れ様です」

「お!お疲れ様です!アイン君!」

「うわ出た……」

 聞こえるか聞こえないかわからないぐらいの声量でロノは嫌な顔をしながら呟く

 それを無視してロベリアは話を続ける

「アイン君の実力は誰よりも知っています、私ならもっとあなたを生かすことができます!!すなわち私の部隊に来るべきです!とりあえず明日は暇ですか?私の部隊について相互理解が必要だと思うので朝から晩まで2人っきりで語り合いたいのですが!!」

「いや……あの俺は……「あんたの部隊じゃないでしょ」

俺の言葉よりも先に飛び出る言葉のナイフにロベリアは反応

 そこから最近よく目にするキャットファイトが行われる

 やれ部隊ではトップクラスの成績だの風魔法は私が1番だのなんだの

 そのうち身体の事をダメ出ししていき最後にはただの子供の悪口になる

 これがいつもの流れだ

 その喧嘩が始まる瞬間に席を立ち先ほど奪われたパンの補給へと向かう

 補給し終えて再び同じ席に座ると2人は息切れしながらまだ喧嘩を続けていた

「いただきま「アインロゼリア訓練兵、アーノルドが君のことを探していたよ」

 パンを口に含もうとした瞬間にガラガラな声で自分の名前を呼ばれてその方向に振り向く

「アカシア隊長!!お、お疲れ様です!」

 ロベリアが喧嘩する手をやめ敬礼をする

 魔導隊実働部隊隊長アカシアルッソは穏やかにロベリアに微笑む

「お疲れ様、それとロベリア……君は明日『灰の街』の楽園送りの担当だろ……その準備はしてきたのかい?」

 楽園送り…………その言葉に少し反応してしまう

「あ……のそれは…………忘れてました!!んーと!アイン君すぐにゴミ捨てしてくるので昼から時間いただけませんか?というか空けといて欲しいです!!それでは!!」

 ロベリアは言いたいことだけ伝えてからとてとてと小走りに急ぐ

「すまないねうちの副隊長が、それでは私も失礼するよ」

 ロベリアの後を追うようにゆっくりアカシアもその場から離れる

 ようやく静けさが出始めた食堂でおかわりしたパンを口に含もうとするが途中でやめてそっと皿に戻す

「しょうがないでしょ、あれが私達の常識だもん」

「……あれって?ロベリア副隊長との喧嘩のこと?」

「うっさい、愚痴らせてやんないわよ」

「ははっ、ごめんごめん」

 少し笑ってから言葉を吐こうとするが思わず息を止める

 そんな様子を見かねてロノはアインの脛を蹴る

 観念したようにアインはまた少し笑う

「それが普通なのはわかっているけど……正しくない、何の罪の無い子供をただ魔法が使えないだけで……殺すなんてさ」

 楽園送り――簡単に言えば魔法が使えない子供を奈落に落とす処刑

 それが正しいと思っていた時期が俺にもあるぐらいにこの世界の常識

 魔法至上主義で魔法が使えない人は災いをもたらす忌子として扱われる

「で?アインはどうするの?変えるんでしょ世界」

 当たり前かのように聞いてくるロノにまたもや笑ってしまう

「ああ、俺は変えるよ……もう二度と友達を見捨てたくは無いからな」

 胸に手を当て、今一度覚悟を決める

 それと同時に明日楽園送りにされる子に対しては何もできない自分に胸を締め付けられながら無理やりパンを口の中に詰め込む

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