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灰の子  作者: カズマ
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今日という日に

どのぐらい走っただろう

 息が切れながら舗装された綺麗な道をただ真っ直ぐに走る

 視界は暗く自分が鳴らす音と目の前の小さな光だけが頼りだ

 頭に響く鈍痛から少し前に頭を打ったことを思い出す

 口の中に鉄の味を感じながら頭の中に小さな思い出が駆け巡る

 きっと走馬灯というものだろう

 魔法の使えない私を匿っていた両親は私の目の前で血を流していた

 魔法が使えない人は罪だったのだ

 私の髪を結ってくれた母親は全身が穴だらけに

 過保護な父親は沸騰した血液を口から吐き出し

「お前のせいだ」

 白い帽子を被った人たちはそう言いながら私を魔法が使えない子供の世界『灰の街』に落とした

 私たちの寿命は12歳まで

 その日が来れば奈落に落とされる

 そうだ、落とされたんだ

「アナは大丈夫かな…………」

 ふと思い出した私と落とされた同い年の女の子、アナスタシア

 私を救ってくれた女の子

 思い出してきた

 奈落の底に行き着いた

 光のない空洞で分かったのは人工的に作られた洞窟であることと拭えない死臭が漂っている

 ドラゴンを模った化け物がいた

 私を救ってくれた彼女だけは生きて欲しいと願った

 でも結局私は自分の命欲しさに逃げ出した臆病者だ

 『諦めないよ私は』

 アナスタシアはいつもそう言っていた

 笑顔が絶えない彼女に私は何かできただろうか

 次第に目の前の光が大きくなる

 ごちゃごちゃになった思考を振り払うように頭を振る

 今私ができることは生きてアナスタシアを救うんだ

 そのためにここから逃げる手段を見つけなければ……

 たどり着いた光の中で私は息を呑む

 ドーム状の部屋に対角線に私が通ってきた通路がある

 白い壁に規則的に白い灯りが灯っている

 その中心で何かが台座の上に紫紺に光っている

 その光に目を奪われ

 その存在に気づかなかった

「しまっ――」

 空気の塊が胴体にぶつかり少し吹っ飛ぶ

「ようやく追いついた、本当ふざけないでよね」

 白い帽子を被った女が息を切らしながら歩いてくる

 私たちを奈落に落とした張本人

 執行人と言われていた女はイラつきながら私を蹴り飛ばす

「あんたらのせいで私は訳のわからない化け物から逃げながら魔法がほとんど使えない場所で出口を探さなきゃいけない」

「ゲホっ!一緒に出口を探さない?」

「あんたらを殺してからゆっくり探すわ」

 執行人は指先をこちらに向けて魔力を貯める

 早く動かなきゃ……

 痛みを堪えながら立ちあがろうとするが思うように立てない

「死になさい」

魔法が放たれる瞬間思わず目を閉じてしまう

 近くで小さく呻き声が上がる

 目を開けるとそこには私たちを追ってきた化け物がそこにいた

 四足歩行の翼なの無いドラゴンには皮膚が爛れ所々穴がある

 そのドラゴンは執行人を突き飛ばし高らかに吠える

 思わず耳を塞ぎ咆哮が収まるまで動けずにいた

 執行人は壁に打ち付けられ渇いた咳を何度も吐く

 ドラゴンはそんな音を気にする訳もなくこちらを見つめ薄ら笑いを作る

 次の瞬間焦点が定まらない速度で視界が揺れそのまま腹部の激痛と共に吹き飛ばされる

 背中に激痛が走った瞬間視界の揺れは無くなり変わりに赤い世界が広がった

 背中にぶつかった台座はびくともせずただ小さく光っている

「……綺麗だなぁ」

 私はここで死ぬのだろう

 目の前にいる化け物は私を視界に入れ少しづつ近づいてくる

 当然嫌だ

 死を望む人なんているわけがない

 けれどもしも私が魔法を使えたならこんなことにはならなかったのだろうか……

「私はここにいるぞぉ!!!!」

 どこかで声がする

 アナスタシアだ

「諦めないよ!!絶対2人で生きて空を見るんだ!!」

 化け物は声の方に視線を向けて歩き始める

 嫌だ……アナが死んじゃう……

 私に……

 頭に直接声が響く

 もしも力があるなら

 『お前にその気があるなら』

 今を変える力があるなら

 『俺の心臓をお前にやろう、得られる代価は……』

 どんな犠牲を払ってでも

 『魔法だ』

「お願い……私に心臓を頂戴……」

 『名前を教えろ』

「私の名前は――レヴァ」

 私は今日という日を忘れることはないだろう

 

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