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不条理なる管理人  作者: 古井雅
第九章 嗤う鵜篝
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見えざる内通者

 前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)

 震災の影響が出ている間に第8章がしれっと終わり、再び奇数章パートに入ります。恐らくお気づきの方も多いかもしれませんが、この物語は確かに2つの章どちらの情報も、お話の動向を知るのに必要ですが、圧倒的に奇数章パートが長いです。後半では統合の可能性もあるので、それについてはなにか考えておきますね(´・ω・`)

 次回の更新は来週月曜10月1日20時となっています! 興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`


・魔天コミュニティ 寄宿舎



 アーロン・ベックに偽の情報を送ったイレースたちは、30分後に届いたアーロン・ベックからのメールに震撼していた。


 その内容はたった一言だけ、「嘘つき」とだけ残されていた。


 まるでこちら側の動向が完全にバレているような言葉に、3人は怪訝な表情をしてため息をつく。

 この状況で、「嘘つき」などというメリットは存在しない。その言葉はまるで、こちら側を挑発しているようなものだった。気味の悪さを感じるほど意味不明の言葉に対して、イレースは強い恐れを抱いたようだった。


「……めっちゃ怖い」

「イレース可愛いところあるんだな~」


 一方のカーティスは、そこまでこの状況が飲み込めていないのか脳天気な声色で相変わらずレオンの頬をぺちぺちしている。

 それに対して呆れたイレースは、微妙な表情を浮かべながらイリアに話しかける。


「イリア……どういう意図があると思う? 僕には全然なんだけど」

「完全に挑発されてるってことだろうが……この状況でこんなメッセージだけ送ってくるなんて、相手にしてはデメリットしかない。相手は相当な自信家か、こんなセリフを吐いても目的を遂行できると踏んでいるのか……どっちにしても、まともなやつではないことは確かだろう」

「これは宣戦布告っていう見方もできるよね? どうしよう……一旦メルディス様に指示を仰ごうか?」

「いや、ベック先生にすり替わるくらいだ。こちら側の情報収集も欠かせていないと思うし、何よりここに来て宣戦布告をしてくるなんて十分な下調べがないとしないだろうし、ただ気が狂ってるってだけで、こんな変なタイミングでしてこないだろう。頭おかしいって他に、勝算ありと判断したと推測するのが利口だ」

「軽度の混乱を招くことも目的だったってことか……でもでも」


 イレースがかなり混乱した調子で話している様子を見て、イリアは落ち着かせるように声を掛ける。


「今お前にできることは、とりあえず落ち着くことだ。お前のほうが権限も大きいし、とっとと冷静になってもらわないと困る」


 そう言われたイレースは、自らに語りかけるようにしばらく黙り込み、すぐにこれから取るべき行動を指示し始める。


「イリアの言った通り、敵側はある程度勝算があってこんな事をしたと推測される。それなら、この場所に侵攻してくることもあるかもしれないから、とりあえず僕らはコクヨウと合流するためにここを離れよう。相手の行動の目的は、レオンの可能性が高そうだしね。イリアは本物のアーロン・ベックを探してほしい。なりすましを行っているのなら、本物のベック先生の安否は不明……できるだけ迅速に彼の安否を確認してほしい。手段については一任するけど、できるだけ急いでほしい。危険が迫っている可能性だってある」

「了解した。一応は、私の師でもあるからな。すぐに殺されることはないとは思うが、こっちも使えるだけのマンパワーを使って探し出そう」

「ということで、僕とカーティスはすぐにコクヨウのところへ行こう。ネフライト君と一旦合流して、そのまま他のメンバーと合流して意見を仰ぐ。戦闘において、というよりはこの状況においては多数の意見があったほうがいい。僕らの独断だけで行動すればあまりいい結果には結びつかないだろう。それじゃ、行動開始だ」


 イレースがそう宣言した後、寄宿舎の扉が大振りに開き、そのままコクヨウのメンバーであるフラーゲルが侵入してくる。


 どうやら、話についてはすべて聞いていたようで、すぐにイレースに声を掛ける。


「話は外から聞かせてもらった。とりあえずはコクヨウのメンバーが普段集まっている集会場-Xに案内しよう。メンバーは招集をかけたが、リーダーとなる人物はいない。まぁ、イレースなら誰だかわかるだろうがな」


 フラーゲルが失笑するようにそう言うと、イレースはとある人物の名前を口にする。


「ティエネスさんね。フラーゲルとお友達なんだっけ?」

「まぁ友達っていう柄じゃないけどね。同僚よ。実践経験豊富なのは貴方も知った通りだから、とっとと行きましょう」


 皮肉っぽいことを言った後、フラーゲルは急ぐように寄宿舎を飛び出してしまう。それに続いてイレースらも寄宿舎を後にする。その際、イレースはイリアに対して「イリアも気をつけてね」と言葉を残して、部屋から出ていった。


 部屋に残ったイリアは、別行動を始めるために電話をかけ始める。

 それは、一旦避難している同僚であるアゲートらだった。つい最近導入されたグループ通話により、4人全員で通話することが可能になっている。勿論、この場で伝えるのは集まる場所のみである。


「アゲート、フー、ベス、ある程度ことが収束したから、一旦集まろう。各々調べていることをまとめて、いつもの場所で待ち合わせをする。以上」


 通告のようにそういったイリアは、すぐに電源を切り、早速「いつもの場所」であるレストラン、「フラグメンツ」へと赴き始める。


 その最中、イリアは3人の経歴や実績をまとめた資料を閲覧し始める。


 というのも、エノクδことレオンの機械的拘束が解かれた際、ほぼ完璧なタイミングで宴の襲撃が始まったことについて引っかかりを覚えていた。このことからイリアは、この3人の中で宴、もしくはトゥール派に通ずる内通者がいるのではないかと推測したのだ。


 その中でも、最も怪しいのはアゲートである。区域Aメンバーの中では最も経歴が浅く、それと同時に資料の裏が取れていない唯一の人物だ。今まではその優秀さ故に放置されていたが、実際彼がどのような理由が入ってきたのか不明であり、しかも彼がここに配属されたのは2ヶ月ほどである。今回のトラブルが生じ始めた頃と一致しているし、スパイとしてはかなり濃厚だろう。


 しかし、アゲートは配属から2ヶ月とはいえ、かなりの功績を残している。具体的に言えば、ダウンフォールのエネルギーをある程度抑制するシステムを考案したのも彼だし、実際に機器を製作したのも彼である。スパイとしては、こちら側に与えられたメリットが大きすぎるし、どうにも目的が不明である。そのため、この疑念をイレースにすら伝えていないのだ。


 こんな圧倒的に怪しいアゲートがいる一方、他のベスとフーについても他に内通している可能性がある。ベスはメルディス派であるものの、そのメルディスの政策には否定的でむしろ思想としてはトゥールに傾倒していると言えるだろう。ここに所属しているのは、自分のしたい研究ができるからであり、決してメルディスのことを崇拝しているわけではない。


 対してフーは、思想については不明なものの、元々はトゥール派に属していた経歴があり、その軍事的経験を生かして勤務している。経歴的に言えば、どれもこれも怪しい人物まみれである。それこそ、信用できるのは今の所イレースくらいしかいないだろう。

 状況的にはこちらもあまり良くないが、本当にスパイがいるのであればこれほど厄介なものはない。

 イリアは、すぐに3人と約束した「フラグメンツ」へと向かった。

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