不能の蟒蛇
前回から引き続き見ていただいた方、ここから読み始めた方、いつもありがとうございます(*´ω`*)
やっと今回からテンプレのまえがきを使うことができます。ある程度の日常に戻り、牛乳不足からも開放されて私の気分は上々だったりします(*´∀`)
今回は会話回ですが、相変わらず多くの重要事項が入っています。なお、今回開示されているとある設定と題名を見てもらえれば、偶数章で撒き散らした伏線が一つになるようになっております。更に、この物語が楽しく映ってもらえれば幸せです(〃ω〃)
次回の更新は来週月曜日24日20時となっています! 興味がある方はぜひぜひどうぞ!☆(´ε`
ミラとルネが徒歩5分ほどの自宅に戻った後、アイザックは久しぶりにストラスと2人っきりの時間を過ごしていた。
アイザックとストラスの出会いは、100年ほど前の「サイライ事件」である。
アイザックはサイライ研究者の息子で、その後継者としてサイライに務めることになった。しかし、そこで行われていた凄惨な実験により、サイライを解体するために協力者を募ることにした。その際に、同じくサイライに対して恨みを持っていたストラスと手を組み、結果的に解体に成功した。
その時から親友関係であるが、25年前の事件その他のトラブルにより、ほとんど2人で会話するようなことはなかった。お互いにこのような機会を望んでいたが、まさかまさかの奇跡にストラスは機嫌よく冷蔵庫から普段食べないような豪華食品をテーブルに広げた。
しかし、アイザックはカーティスのことからか、どこか浮かない表情で覚束ない視線を揺らしていた。
「……カーティス、無事……だよね」
ひっそりとそう口にしたアイザックに対して、ストラスは、大きく首肯してアイザックの前に果実酒を差し出す。
「無事だ。少なくとも、セフィティナが守ってくれてるなら、絶対に無事だよ。信じよう」
ストラスの言葉に対して、アイザックは少しだけ口角を上げて、差し出された果実酒を口に含む。
「ありがとう。それに、覚えててくれたんだね。果実酒が好きだったこと」
「あぁ、俺は酒には縁遠いからな。周りの大酒飲みは、お前とルネくらいのものだからな」
「そうだね。ストラスは、っていうか魔天はお酒飲めないもんね。コミュニティには流通していないの?」
「この種のうち、酒が飲めるのはダウンフォールだけだから流通なんてしてないさ。誰も買わねーし」
「ビジネスだからなー……仕方ない。でも、もしダウンフォールが致命的に増えたら流通するんじゃないの?」
「あんなのが増えたら洒落にならんわ。全く、お前のブラックジョークのほうが致命的だ」
そんなことを言いながら、2人は大笑いしながら話を進める。
「しっかし、ダウンフォールっていう種族はかなり特殊だな。魔天では処理できないアルコールの分解をできるのはなぜなんだ?」
「魔はアセトアルデヒド脱水素酵素を持たないし、天は酢酸をうまく処理するプロセスに難があるからね。ダウンフォールは、その2つの都合のいいところを受け継いでるんじゃないの?」
「はぁ……まぁ、ほとんど敵意皆無なだけマシだけどな」
「ダウンフォールはむしろ自分たちのパートナー好きすぎるっていうのがあるけどね」
「またノロケかよ」
「ストラスだってベリアル大好きじゃん。なんで今回、一緒に旅行行かなかったの?」
話がまさかの方向に進んだところで、ストラスは微妙な顔で窄める。
「いや、なんかさ……あいつ、今回はみんなで別々の場所に行くことにしているから、ストラスは待っててーって言われて、今度二人っきりで行こうって説得されて今回はお流れ」
「なるほどねー、二人っきりっていうのに惹かれたんだね」
「まーな。ここで生活してれば、二人っきりっていうのは少ないから、なおさら魅力的に感じて……特に何も疑問を持つことなく了承したわけで」
「気持ちはわかる気もするけど、それにしては随分と彼らしくない行動のように思えるね。ベリアルって、結構みんなでやろうっていう精神が強い人なのに、一人旅に近いプランだからってストラスだけ蚊帳の外にするとはちょっと思えない気がする」
「……確かに……それは言えてるかもしれない」
そこからストラスは、唸るように考え込むと凄惨なものを見たような面持ちで最悪の想定を行った。
「もしかして……浮気……?」
思考の方向性がおかしなところに行ったところで、その思考にアイザックは助言をする。
「そうじゃなくて、今回のトラブルに関わっている可能性の示唆をしろって話」
「あっそっちね。なるほど……それなら、ベリアルはセフィティナの仲間ってことか?」
「仲間っていうのはちょっと変だけど、少なくとも可能性としては考えられるよねって話ね。ミライはとっとと旅行から戻ってきてるのに、ベリアルは帰ってこないってちょっと変だよ。イェルとアロマは二人で楽しんでるんだろうから別に変じゃないけど、ベリアルの場合はこういうことなかったからなおさら不審だ」
「ちょっと待って、俺のベリアルがそんなこと……」
「あくまでも可能性の話だ。ただ、セフィティナが絡んでいることを見ると、この天獄の者も資源であることには変わりない。向こうが何を考えているのかわからない以上、あらゆる可能性を想定しておく必要がある。実践経験豊富なストラスならわかるだろう?」
アイザックに諭されたストラスは、小さくため息を付きながら首を縦に振る。
「ベリアル……もし今回のトラブルに関わっているなら、どうして言ってくれなかったんだ……」
「彼は優しい半面、結構打算的なタイプな人だから、考えられなくはない話だね。でも、本当にそうだとするなら、情報を開示しない人物はある意味、それがヒントになっているかもしれない」
「確かに、俺やルネ、ついでにミラやミライとか、言われていないヤツがいるっていう事自体、何らかの意図があるかもしれないな」
「計画の立案者がもし、セフィじゃなくてベリアルなら、何手先も考えて行動している事も考えられる」
「否めないな。しっかし今回の事件も、めちゃくちゃ複雑だな。25年前の事件にしてもそうだったが、面倒なことに巻き込まれるのが通例になってきたな」
ストラスが恨み言のようにそう言うと、アイザックは苦笑いを浮かべながら25年前の事件について話し出す。
「ザイフシェフトで起きた魔天誘拐事件、結局サイライの残党がザイフシェフトと手を組んで起こした事件だったけど、結局僕らが悪者みたいな感じで終わったのは、ちょっと気分がいいものじゃないよね。実際収束させたのは、自然神やノアと手を組んでたっていうのがあるし」
「そういえば、あの事件には自然神も相当絡んだんだっけ。一番の根源は”堕神”で、”白鶯”も絡んでいたな……」
「数式的なエネルギーについても、自然神と魔天は似ているし、僕的にはもうちょっと研究していたかったけど、仕方ないね」
「お前は一応、戸籍上は死んでる事になってるしな。国が統合されてルイーザになって、そのときに有耶無耶にしたのは正解だった。それにしても、ルイーザなんて名前、なんで採用したんだろうな」
25年前にザイフシェフトで起こった事件は、表面上ザイフシェフトと隣国リラが共謀して魔天を誘拐し、兵器実験を行っていたものだが、リスクを犯してこんなことを行った理由は他に存在する。実は、25年前にてザイフシェフトとリラにはとある脅威が迫っていたのだ。その脅威とは、突如活動を始めた自然神と呼ばれる生命体であり、不随意的に自然現象を司る者たちが喫緊の脅威として出現したことが発端だった。
この時、リラのサイライの後継団体にて暮らしていたミラとルネが事件に巻き込まれ、その事件に首を突っ込んだノアが天獄に仕事を持ち込んだところ、ストラスは今回の事件に巻き込まれたのだ。
結局、天獄らの活躍により事件は収束することになったが、国家内部にいた「ルイーザ」という研究員がすべての発端であったこともあり、国家側は事件の詳細については隠蔽することになった。そのため、ルイーザが事件を止めるために命を投じた英雄となり、事件後の復興にて統合された国の新しい名前となったのだ。
そんな話も25年経てば思い出話となっていた。しかし、迷惑な思い出話に花を咲かせていたのはそこまでで、ストラスのその言葉を聞き、アイザックは死んだような笑みを浮かべる。
「はっはっは……そりゃそうでしょ。”宴のケルマータ”がザイフシェフト研究員であるルイーザと共謀して行ったことなんて、漏れれば国としての信頼は完全に失墜する。即席で死んだルイーザを英雄に仕立て上げて体裁を保ったのは、まぁ国らし意地の悪さだよね。その時、アルベルト・ミラーが結構尽力したって話だし、魔天コミュニティも相当関わっているのはまず間違いない」
「コミュニティに限らず、国家ていうのは打算的なものだよな。ただ、このザイフシェフト地区で新たに問題が出てきたってことはだ、やはり今回のトラブルは25年前の事件と少なくとも接点があるのかもしれない」
「充分あるだろうね。ただ25年経ってトラブルが起きたってことは……あ、やっぱりテンペストか」
はっと思い立ったようにそういったセフィティナに対して、ストラスは首をかしげる。
それを視認したアイザックは、若干酔った口調で説明する。
「テンペストっていうのは、その状態が臨界点に到達して出現するんじゃない。飽和した時間に比例して、齎される事柄が異なる。ちょうど、時間と状態の折衷となったのが、今なのかもしれない」
「なぁんか難しい話になってきたな」
「まぁこの際テンペストが学術的にどういう性質を持ってるかなんてどうでもいいわけで。ここで大事なのは、こんな学術的な内容を把握していて、それを利用している可能性が生じているってことだ」
「それをするって、相当な知識量が必要な気もするし、リスキーだし、現実的なのか?」
「現実的にしたってことだろうね。人材については君のほうが知っているでしょう。なんというか、今回のトラブルも何重にも厄介事が重なっているような気がする。少なくとも、ここに来てたった一つの因果関係を持ち合わせるとは思えない。幾つかの因果が変な形で混在している。セフィが動いているのも、今ここで起きている変な事柄は切り離して考えつつ、つながって考えることもしなくちゃいけない。どっちにしても、今この2つを結びつけるのはルネが言ったとおり、タイミングだけだ。論理的確証は存在しないけど、タイミングがここまで重なるとは確かに思えない。セフィもこれについては理解しているだろう。僕的には、今回の魔天絡みのトラブルに対処するために、セフィは行動しているような気がする。セフィの動向は家族に近い関係である僕らですら確認できていないところから、かなり厳重かつ慎重に行動している。セフィたちの動向を確認してから魔天絡みのトラブルが起きるのは少々考えにくい」
半分も話を理解できず、ストラスは笑いながら怒りを顕にする。
「はぁはぁ……てか、それルネやミラがいるときに言えや!」
「どうせあの二人だって気づいている。それに、二人は今回無関係に近いし、あんまり過剰に巻き込まむのは良くないと思うしね」
「ほとんど片足突っ込んでるけどな」
その時点で、話の話題は別の方向に移動する。
「……そういえば、なんでミラとルネが絡んでるんだっけ?」
「一応、ルネはここの事務員だからな。事務員がトラブルに駆り出されるくらいここには人材がないのです……」
「アロマでしょ? アロマは打算的っていうか、合理的すぎるからなぁ。この天獄も、アウトローすぎるから、収益もまちまち。それなら、今回の事件である程度利益を上げないと……?」
「天獄はサヨナラです」
「なるほどね」
「だから俺は絶対にこの事件を解決してここを存続させる。ここが、俺とベリアルの家だからな」
「僕ら、やっぱりパートナーのために面倒事に巻き込まれるんだね~めんどくさいことに」
「明日にでも見つかってくれたらいいな」
そんなこんなで、2人は酒やお菓子を食べながら一夜を明かすことになる。




