パメのカルパナの家
首都での仕事の引継ぎを済ませたゴパルが、ポカラへ飛行便でやって来たのは一週間後だった。
空港に出迎えてくれた協会長が、ルネサンスホテルの角部屋を、本格的な長期滞在向けにしてくれていたので感謝する。
「ありがとうございます、ラビン協会長さん。でも、今後はアンナキャンプに長期滞在する事になると思います。ポカラへ降りて来る日時は、前もってお知らせしますので、普段は掃除しなくても構いませんよ」
協会長が柔和な笑みを浮かべた。一重まぶたの目を細めている。
彼はいつもの通り、スーツ姿だ。七三に分けた白髪交じりの髪も、隙無く整えられているので、少々ヨレヨレな服装のゴパルとの対比が鮮明になっている。
「左様ですか。では、宿代を少し値引きしておきましょう。長期滞在者は大歓迎ですよ」
協会長によると、大半の観光客は一週間以内の滞在という話だった。自家用車で国境を越えてポカラへやって来る、若いインド人観光客もそのくらいしか滞在しないらしい。
その後、これまたいつも通りにカルパナがバイクで迎えに来て、後部荷台に乗ってパメへ向かう事になった。
今回は種苗店では無く、弟夫婦とカルパナが住んでいるパメの家へ直行した。
そこで試験している生ゴミボカシの状態を確認するゴパルだ。二百リットル容量の、強化プラスチック製のドラム缶型密閉容器が八個並んでいる。
その中で、一番最初に仕込んだ容器のフタを開けて、重しと内フタを取り、中で発酵している生ゴミを手に取った。周囲に、ぬか床のような臭いが漂い始める。
ただ、本物のぬか床と違い、水分が少ないために、パン生地を発酵させている時のような甘い臭いも混じっている。
「順調に発酵していますね。これでしたら、土ボカシを前倒しして仕込んでも良いでしょう」




