表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
482/1133

バイクで雑談

 がっかりしているゴパルに気がついたのか、カルパナが無線を通じて話しかけてきた。

「今の時期は、朝方しか見えません。来月になれば、ほぼ一日中見る事ができるようになりますよ、ゴパル先生」

 ゴパルが顔を上げて力なく笑った。

「来月となると、私はアンナキャンプに貼りつけですね。まあ、至近距離から見る事になるので、それに期待します」

 既にバスパークは通り過ぎていたのだが、ゴパルが話題を振った。

「そういえばバスパークには、欧米からの観光客の姿が多く見られましたね。彼らもアンナプルナ連峰の山容を楽しみに来ているのでしょう。早く雲が切れると良いですね」


 カルパナがバイクを運転しながら、左手を左後方に向けた。ちょうど、サランコットの丘の頂上を指している。標高が1592メートルあるので、バスパークからでもよく見えている。

「サランコットの丘では、朝方と夕方に観光客が集まります。ロープウェイが通っていますから、気軽に行き来できますね」

 ゴパルの脳裏に一瞬、パラグライダー強制搭乗の事件がよぎった。ロープウェイからのポカラの夜景と、丘の頂上からのマチャプチャレ峰の展望は素晴らしかったのだが。

 軽いめまいを覚えたゴパルが、後部荷台の縁を両手でしっかりと持った。

「サランコットの民宿や食堂の野菜不足は解消したのですか?」


 ゴパルの問いに、カルパナが明るい口調で答えてくれた。ついでに、路上に出てきた放牧山羊の群れを華麗に回避する。

「はい。おかげさまで大丈夫ですよ。今の時期は欧米人観光客が多くなりますから、サラダの需要も増えてきていますね」

 ゴパルがサラダと聞いて、少し荒れた眉をひそめた。

「サラダですか……前回も話しましたが、注意が必要ですよ。洗ったり消毒したりして、食中毒を引き起こす微生物やウイルスを減らす事はできます。ですが、完全に除去する事は、普通の厨房の設備ではまず不可能ですから」

 サランコットの丘にある食堂で、食中毒が発生したのも、その衛生管理が不十分だったせいだ。そして、それはカルパナが栽培した野菜であっても変わらない。


 カルパナが真剣な口調でゴパルに聞いた。ついでに、道に飛び出してきた子供達を、余裕をもって回避した。

「ラビン協会長さんが指導していますので、かなり改善されましたが、それでも完全では無いのですね。危険性を少しでも下げるには、どうすれば良いのですか?」

 ゴパルが少し考えてから、ゆっくりした口調で語り始めた。専門分野が少し関わっているのか、口調が冷静なものに変わる。

「サラダに使う容器もですが、調理で使う鍋やフライパンには、細かい傷が付きやすいそうですね。食中毒を引き起こす細菌やウイルス等が、その傷の中に忍び込んで汚染源となる場合があります」

 少し考えてから、冷静な口調で提案した。

「予防方法としては、食用油を塗って膜を作っておく事でしょうか」


 鍋についた傷を食用油が覆う事で、雑菌の繁殖が抑えられるという仕組みだ。もちろん、食用油の膜は落ちやすいので、毎日塗り直す必要がある。

 ネパールやインド料理にしろ、パスタ料理にしろ、油を使う場合が多い。どうせ油を使うのであれば、前もって容器や鍋、フライパン等に塗っておくという事だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ