表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
296/1133

民族いろいろ

 ゴパルがカルパナに気遣いながら、明るい表情で答えた。

「地域の伝統は大事にしないといけません。神域でしたら、私のような酒飲みが入る事は避けるべきですね。では、桃園について相談したい事ができましたら、遠慮なく私に聞いてください。力になりますので」

 カルパナがほっとした表情になった。

 彼女用に別の小皿に盛られていた桃を、そっくりそのままゴパルに差し出す。この小皿には、カルパナは手をつけていないので、ゴパルでも食べる事ができる。

 ヒンズー教では、他人が手をつけた食べ物を、食べる事は禁忌ズトである。タバコだけは例外だが。

 そのためビシュヌ番頭は、ゴパル用とカルパナ用に、小皿を二つ別々に用意して出していた。

「ご理解ありがとうございます。今時、タガタリもマトワリもダリットも無いのですが、隠者様は、その、厳格な方ですので……すいません」


 タガタリは、バフンやチェトリ階級の人々を指す。カルパナやサビーナ、アバヤ医師や隠者が、その階級に属する。

 マトワリは、その下のカーストで、ネワール族やグルン族等の山岳民族の人々を指す。レカやゴパル、養豚団地や養鶏企業の社長が、その階級に属する。

 ダリットとは、その下の階級を指す。いわゆる不浄な人々だ。現在では廃止されている。


 ゴパルがさらにカルパナを気遣って、何やら手足をバタバタ動かし始めた。

「本当に、気にしないでください。実際、スヌワール族には、秘密結社みたいな所がありますから」


 それをいうのであれば、仏教系のネワール族は、密教なので門外不出の秘儀を執り行う。

 グルン族にも民族至上主義の団体があるし、職の無い若者を中心にしたギャング組織もある。

 ラビン協会長のタカリ族では、独自の金融組織があり、銀行を介さない手形決済までできる。

 さらに、アンナプルナ連峰の北にあるムスタン郡では、チベット系の民族による非公認のムスタン王国まである。

 そもそも、アンナプルナ連峰の北側には、ネパール人でもなかなか入る許可が下りない、広大な制限地域がある。部外者お断りの団体や地域は、珍しく無い。


 カルパナが恐縮しながら、その代わりと言って提案した。

「ミカン畑を見てみませんか? 今は実証試験の三年目です。苗畑もですね。ここでしたら、育種学のゴビンダ先生が関わっていますので、ゴパル先生も気兼ね無く立ち入る事ができると思います」

 大学では大学で、教室間の微妙な距離というものがあるのだが、ここは素直に提案に乗るゴパルである。努めてにこやかに微笑んで答えた。

「そうですね。では、見てみましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ