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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
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汚水処理システム

 リテパニ酪農の汚水処理システムは、丘の斜面を利用したものだった。牛舎やチーズ工房は丘の尾根筋に沿って建てられていて、汚水は丘の西側の斜面に沿って設けられた棚田を流れ落ちていく。

 棚田と書いたが、実際には作物は栽培されておらず、湿地状態だ。これが上下に四段重なっていて、汚水が浄化される。そして、最終処理水は、河岸段丘の底を流れる白ガンダキ川へ排出されている。

 糞尿と、牛乳が腐った臭いとが混じりあった悪臭が、丘の斜面に漂っている。雨期の末期という事もあって、棚田の湿地もドロドロ状態だ。ハエの数もかなり多い。そのハエが、十数匹の単位で衣服にまとわりつく。


 それらを手で振り払いながら、クリシュナ社長が真剣な表情でゴパルに視線を向けた。二重まぶたの黒褐色の瞳も、真面目な光を帯びている。

「酪農パーラー排水の量だが、平均して毎日六立方メートルほど出ているかな。これを浄化するために、見ての通り、四段の人工湿地システムを使ってる。湿地の床面積は、合計で六百六十平方メートルだな」

 小さくため息をついた。

「排水基準は合格してるんだが、この悪臭とハエでな……困っている」


 酪農パーラー排水というのは、酪農場の搾乳場や牛舎から出る、牛乳や水牛乳や糞尿等が混じった排水の事だ。

 クリシュナ社長の話では、糞については一年ほど放置して、厩肥きゅうひ化してから紅茶園やバナナ園、パパイヤ園や川向こうにあるオリーブ園に施肥しているそうだ。


 ネパールでの畜舎排水は、BODと呼ばれる生物的酸素要求量という水質基準値が、一リットル当たり百ミリグラム以下となっている。これでも、かなりの汚染度で、悪臭も酷いままだ。

 ちなみに、鯉やナマズ等を養殖する池では、この値が五以下である事が望ましい。飲料水の原水としては一以下だ。

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