リテパニ酪農の裏手
実験が終了したので、ラジェシュがギャクサン社長とバルシヤ社長を、ピックアップトラックに乗せて送り届けていった。エンジン音とタイヤが土砂を噛む音が、次第に遠ざかっていく。
ゴパル達は、白い作業服を脱いで、今はリテパニ酪農前の駐車場に居た。ゴパルがクリシュナ社長とレカに、改めて礼を述べる。
「実験を引き受けてくださって、感謝します。ありがとうございます。光合成細菌ですが、これも飲み水に混ぜて与える事ができますよ。希釈倍率は、これも千倍程度で良いでしょう」
そして、ちょっと考えて補足説明をした。
「臭いが気になる場合は、KL培養液を加えて三時間ほど曝気すれば大丈夫です。ですが、それ以上の時間をかけて曝気すると、雑菌で汚染されてしまいます」
ついでに、もう一点だけ追加説明を加えた。
「アミノ酸等が少し含まれていますので、多少は栄養補助剤の役目をしてくれると思います。曝気時間が長くなると、これも菌によって分解されてしまいますので、ちょうど良い時間を見つけてください」
クリシュナ社長が黒い短髪をかいて、二重まぶたの黒褐色の瞳を細めた。太めで長い眉も上機嫌に上下に動いている。
「そうかい。じゃあ、それも試してみるか。ま、栄養補助剤は、専用の物を使うけれどな。レカから頼まれていた、自家製のヨーグルトとチーズのサンプルだが、今、ゴパル先生に渡せば良いかね?」
ゴパルが微笑んだ。
「そうですね。お願いします」
そして、クリシュナ社長が、カルパナに笑顔を向けた。
「カルパナさん。うちのリテパニ酪農もKL事業に参加するよ。いきなり悪臭が消えるとは、思わなかった」
カルパナが、ほっとした表情を浮かべた。
「気に入ってくださって、良かったです。では、ゴパル先生、KL種菌の追加注文を、後日発注しますね。培養液を仕込むタンクも、増やさないといけないかな」
クリシュナ社長が、家から出てきた作業員に合図を送った。太い眉を上下させてゴパルとカルパナを見る。
「順番が逆になってしまったが、ゴパル先生の歓迎をするか。モッツァレラチーズを食っていってくれ」




