映像特典
画面が切り替わり、光合成細菌の培養箱の上で、工具や部品、それに箱の材料の端材が、ダンスを始めた。ストップモーションの手法で撮影したアニメーションだ。
さらに人工音声ソフトを使っての、歌まで収録されている。しかも、シンセ音での太鼓伴奏付きだ。太鼓は、ネパールで一般に使われている、膝の上に置いて叩く、マーダルと呼ばれる伝統楽器の音であった。ポンポコ、ボンポコと軽快な音が鳴る楽器である。
歌詞は、このようなものだった。
『蚕がピリリ、蚕がピリリ、桑の葉よこせー、寝床もよこせー、蚕がピーリーリ……』
ゴパル達が、思わず吹き出した。
この元ネタは、ポカラ周辺地域の童謡である。養蚕で飼育する蚕を歌ったもので、ピリリという音は、絹糸を紡ぐ音を擬音化している。
『ゴパルがピリリ、ゴパルがピリリ、ちょっと太めだ、チヤとか飲むなよ、ゴパルがピーリーリ。どーすりゃいいのよ、どーしようもないよね、ゴパルがピリリ……』
ケダルとゴパル父母が、爆笑した。ゴパルは目を点にしている。
「こ、これはレカさんの仕業だな。まったくもう……」
ケダルが驚愕の表情になって、ゴパルを見つめた。隣の父母も、驚きの表情になっている。
「ゴ、ゴパル、お前……ポカラで二股かけてるのかよっ」
「は?」
何の事か、まるで理解できていないゴパルに、ケダルがメガネを外して、真剣な表情で告げた。切れ長の鋭い眼光がゴパルを射抜き、がっしりしたアゴを右手でかく。
「お前は、インド映画のハーレム主人公じゃないんだから、彼女は一人だけにしておけよ。まったく、童貞で素人の癖に、無茶な事をっ」
ここでようやく状況を理解したゴパルである。慌てて弁明するが、ケダルも父母も呆れた視線を、ゴパルに投げつけるばかりであった。




