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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
肥料も色々あるよね編
215/1133

映像特典

 画面が切り替わり、光合成細菌の培養箱の上で、工具や部品、それに箱の材料の端材が、ダンスを始めた。ストップモーションの手法で撮影したアニメーションだ。

 さらに人工音声ソフトを使っての、歌まで収録されている。しかも、シンセ音での太鼓伴奏付きだ。太鼓は、ネパールで一般に使われている、膝の上に置いて叩く、マーダルと呼ばれる伝統楽器の音であった。ポンポコ、ボンポコと軽快な音が鳴る楽器である。

 歌詞は、このようなものだった。


『蚕がピリリ、蚕がピリリ、桑の葉よこせー、寝床もよこせー、蚕がピーリーリ……』

 ゴパル達が、思わず吹き出した。

 この元ネタは、ポカラ周辺地域の童謡である。養蚕で飼育する蚕を歌ったもので、ピリリという音は、絹糸を紡ぐ音を擬音化している。

『ゴパルがピリリ、ゴパルがピリリ、ちょっと太めだ、チヤとか飲むなよ、ゴパルがピーリーリ。どーすりゃいいのよ、どーしようもないよね、ゴパルがピリリ……』

 ケダルとゴパル父母が、爆笑した。ゴパルは目を点にしている。

「こ、これはレカさんの仕業だな。まったくもう……」


 ケダルが驚愕の表情になって、ゴパルを見つめた。隣の父母も、驚きの表情になっている。

「ゴ、ゴパル、お前……ポカラで二股かけてるのかよっ」

「は?」


挿絵(By みてみん)


 何の事か、まるで理解できていないゴパルに、ケダルがメガネを外して、真剣な表情で告げた。切れ長の鋭い眼光がゴパルを射抜き、がっしりしたアゴを右手でかく。

「お前は、インド映画のハーレム主人公じゃないんだから、彼女は一人だけにしておけよ。まったく、童貞で素人の癖に、無茶な事をっ」

 ここでようやく状況を理解したゴパルである。慌てて弁明するが、ケダルも父母も呆れた視線を、ゴパルに投げつけるばかりであった。

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