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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
寒くなるとチヤ休憩が増えるよね編
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野菜五種類の栽培

 ナウダンダではカルパナに案内されて、野菜を商業栽培する畑を見て回る事になった。段々畑に分かれているのだが、これらを組み合わせて面積を確保している。さすがに総面積が広いので結構歩き回る。

 それでも一通り巡って撮影を終えるゴパルだ。ふう、と一息つく。

「さすが商業栽培だなあ……面積が一気に広くなりました。でもこれで農業に復帰する人が増えますね」

 カルパナも汗を拭く。彼女はいつもの野良着姿である。

「リュックサックを担いだままですが、重くありませんか?」

 ゴパルがその場で軽くジャンプしてニッコリと笑った。

「全然重くありませんから、ご心配なく。体力もかなりつきましたし。ああでも、やっぱり車の中に入れても構いませんか?」


 今回植える野菜は、西洋ネギ、春ジャガイモ、春ニンジン、カブそれとホウレンソウの五種類である。その植えつけ前に畑の準備をしている段階だ。

 刈り草や落ち葉に生ゴミボカシを混ぜて、それを畑にすき込む作業が中心になる。野菜に応じて肥料の要求具合が異なるので、生ゴミボカシの量を調節する事になるが。

 ホウレンソウについては、追加して骨粉を畑に撒いている。骨粉は、空港近くにある精肉所から安く買っているものだ。そのままではサイズが大きいので粉砕して、KL培養液に浸けて臭い消しをしている。


 まだ畑には何も植えられていないのだが、ゴパルがスマホカメラで撮影した映像を確認して、満足そうにうなずいた。畑の土を手に乗せて、それの撮影もしている。

「土の状態も分かりますね。ええと……この五種類の野菜で輪作するんでしたっけ」

 カルパナが穏やかに微笑んで、肯定的に首を振った。

「はい。ですが、春ジャガイモだけは少し珍しい品種を使っていますよ」

 通常この標高でのジャガイモ栽培は、西暦太陽暦の十一月第四週あたりから畑の準備をし、種イモの植えつけを開始する。今は十二月第二週なので半月ほど遅い開始だ。


 カルパナが軽く肩をすくめて話を続けた。

「輪作の組み合わせを考えて、この遅い時期に植えつけができる春ジャガイモの品種にしました。味の方は大丈夫だと思いますけど、収穫して実際に食べてみないと分かりませんね」

 小規模な栽培試験はここでずっと行ってきている。そのため、今回の大規模栽培に移行してもまず心配はないだろう、というカルパナの判断である。


 ゴパルがスマホをポケットに突っ込んで軽く背伸びをし、カルパナに礼を述べた。

「栽培前の状態が撮影できて良かったですよ。これから土がどのように変わっていくのか楽しみです。忙しいのに案内してくださって、ありがとうございました」

 土も後日サンプルを採取して、成分を検査する予定だ。そのサンプルを採取する場所も、今回カルパナと相談しながらゴパルが指定して撮影している。


 照れているカルパナが、フェワ湖を挟んだ対岸のチャパコットの森を指差した。

「ヤブツバキが赤い花を咲かせました。生ゴミボカシを散布しているのですが、良い感じですよ」

 野犬や野ネズミがある程度の生ゴミボカシを食べてしまうのだが、ヤブツバキの林への悪影響は出ていない様子だ。


 ゴパルがチャパコットの森の一角を眺めて、笑顔を浮かべる。

「それは良かった。野生キノコもたくさん生えてくると嬉しいな。ポカラとABCを往復している際に、菌やキノコの採集を道端で続けているんですよ。ほとんどが一般のありふれたモノばかりなんですけれどね」

 ゴパルや博士課程達はもうすっかり街道の有名人になっているようで、道端で採取していたり、野菜クズを買い込んだりしても怪しまれなくなっていた。

 カルパナが少し困ったような笑顔をゴパルに向ける。

「ですが、チャパコットでは単独行動を避けてくださいね。通報されてしまいますよ」


 そういえば、とカルパナがシスワ地区のイチジク園の作業を話してくれた。昨日、追肥をしたそうだ。イチジクの木一本あたり、食用廃油を混ぜて発酵させた土ボカシを一キロと百グラムほどの草木灰を、木の根元から少し離して撒いている。

 ゴパルがスマホを取り出して録音しながらメモを取る。そして、恐る恐る聞いてみた。

「パッションフルーツの収穫はまだ続いていましたっけ?」

 カルパナがクスクス笑いながら、手を振って否定した。

「終わりましたよ。すいません、ゴパル先生。酸っぱい生ジュースも販売終了していますので、安心してくださいな」


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