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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第12章 ーFor whom Mercy isー

ラルクが再び眼を開けると見えるのは自分の腕の中で気を失っている少女だった

どうやら助かったようだ

それにセレンにも対したケガらないようだ

そっとラルクはセレンの体を地面に寝かせる

「…ッつ…!」

体に力を入れようとすると脇腹や頭、腰などのあらよる部位に痛みが走る

「セレン、大丈夫か?」

痛みに耐えながらラルクはセレンの体を揺する

「んん……ラルク…?私達、助かったのでしょうか…?」

セレンはすぐに眼を覚まし体を起こしながらラルクに聞く

「みたいだな、セレンがいるってことは地獄ってわけじゃなさそうだ。まぁ、結構落とされたみたいだけどな」

どうやら2人は崩落に巻き込まれはしたものの運良く足場に留まることが出来たようだ

「あ、ラルク、ケガしてるじゃないですか?!見せて下さい!」

セレンは杖をラルクの体の前にかざし詠唱を始めると

体が暖かい光に包まれ段々と痛みが引いていくのがわかる

「セレンはケガなかったか?」

ラルクが逆に聞くとセレンは茶色の瞳を伏せた

「大丈夫です……ごめんなさい。私の身勝手な行動でこんなことになってしまって…」

「まぁ、一応死んでないし、大丈夫だろ」

そうセレンに声をかけてみたが彼女は伏せた瞳を上げようとしない

「けど、ここに落ちてきたのは俺達だけじゃないみたいだな…」

辺りを見回すと先程戦ったであろう謀反軍の兵士が幾人も横たわっている

動かないところを見ると彼らにもう息はないだろう

スカーレットの姿もないようだ

ここよりさらに下へ落ちていったのかと推測しながら深い谷底を覗く

深淵は不気味な低音を響かせて口を開いている

「スカーレットはここに…」

セレンはラルクの後ろから身を引くようにして谷底を覗き込む

「落ちたんだろうな……ん?」

何か背後で人の足音のような音が聞こえてラルクは振り返った

「セレン、下がってろ」

セレンにそう促したラルクの視線の先には脇腹を抑えた黒金の騎士が1人もう片方の手に剣を握ってたたらを踏みながら立っていた

「ッハァ…ッ……死ねぇ…!!」

騎士はラルクを視界に入れるや剣を構えて突進してきた

突進してくる剣をラルクは受け止めるが相手の剣にはほとんど力がこもっていない

おそらく最後の力を振り絞ってのことなのだろう

ラルクが力任せに剣を押し返すと剣は彼の手から投げ出され谷底へと消えていった

そして、剣を失った兵士は諦めたようにうなだれ

ラルクは止めを刺すために剣を振りかぶる

「待って!殺さないでっ!!」

またもセレンのひと声でラルクの剣は振りおろされることはなかった

「やっぱりこの方ケガしてます…」

セレンが苦痛にうずくまった兵士に駆け寄る

よく見ると左脇腹から血が流れている

そうでなくとも体中の外傷が目立つ

「っ…触るなっ…!」

兵士は力を振り絞ってセレンの手を払う

「せっかくウチの姫様が手当してくれるってのにそりゃねぇだろ」

ラルクもセレンが敵にたいしてもこういう態度をとるのは半ば分かっていた

「うる…さい…お前も早く……殺せ…」

兵士はラルクを睨む

「セレン頼む。んで、何が楽しくてそんなに死に急ぐんだよ?」

治療魔術を施すセレンを横眼にラルクは質問する

「ここでスカーレット将軍の下に…生きて還ったら……確実に…殺される」

兵士は息を整えながら話す

「そういや、前にもそんなこと言ってたな…でも、さっきの戦いでスカーレットはそこの谷に落ちたぞ?」

「嘘をつくな……もういい、十分だ…」

兵士はそう言って立ち上がりフラフラと谷底へと向かう

「何する気だよ?」

ラルクは特に後を追うでもなく問いかける

「ここから身を投げる…スカーレット将軍の下で嬲り殺しにされるよりはましだ…」

兵士は崖淵までもつれる足で歩こうとするがまだ辿り着かない

「セレン、なんかあいつを眠らせる魔術かなんかないか?」

ラルクはセレンに耳打ちする

「えと、やってみます」

セレンが頷きラルクは兵士に向き直る

「なぁ、アンタ家族はいんの?」

男はもつれる足を止めた

どうやらラルクの声は届いたようだ

「妻と…娘がひとり……」

「生きて還って顔見せてやればいいだろ」

ラルクはそう語りかけた

親に取り残されるのは悲しいものだ

「ダメだ…フィルス公からは死なない限り逃れられな……ぃ……」

兵士の声が段々と小さくなり傾いていく彼の体をラルクが受け止める

「やっぱりあいつが首謀者か……セレン、続き頼めるか?」

ラルクは崖から少し離れた場所に兵士の体を横たえる

「ラルク…あの……ごめんなさいっ!」

ラルクに近づきセレンは勢いよく頭を下げた

「どうしたいきなり?」

突然頭を下げられたラルクも驚く

「私のせいでラルクやみんなを危険な目にあわせてしまって…この方だって本当は私の助けを必要としていないのに私が甘いばっかりに余計に苦しませてしまって……でも…!でも、目の前にケガをしている人がいたら放っておけなくて…!!」

セレンは小さな拳を握り締めてぷるぷると震えていた

「どんな結果を招こうと他者を想う心を大切にしろ…だろ?」

ラルクがそう言うとセレンはゆっくりと頭を上げた

「それは…グレンさんが最期に…」

グレンが最期にセレンに遺した言葉だ

「セレンは困っている人を見たら俺達より早く体が動いちまう。確かにそれで全ての奴が助かるわけじゃない。でも、敵味方関係なく助けようとするセレンだから親父はそう言ったんじゃないか?って俺は思うけどな」

ラルクはセレンの頭に手を置いて笑って見せる

「ラルク…」

セレンは少し茶色の瞳を潤ませてラルクを見つめる

「まぁ…そんなわけで早く手当終わらせてみんなと合流しに行くぞ」

セレンに見つめられて顔が少し熱くなった

どうもこういうのは慣れない


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