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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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外伝 ーDating with the Princesー Part4

「少し値引きして貰えましたねアルト!」

店を出て先程購入した服の袋を抱えながら話すセレン

「かわいい娘だから割引きしてあげるとのことだそうですよ」

アルトにそう言われるとセレンは無言で頬を紅くする

「ネイダさんとは昔からのお友達だったんですか?」

「ええ、白銀騎士団に入ってアークに移り住んだ時に。私もセレン様のように服を見繕ってもらったのがきっかけでしたね」

初めて会った時に私服がダサいっ!と開口一番に言われたことは秘密だ

「ヘェ〜そうなんですかぁ!…あっ!この首飾りキレイ〜!!」

おもむろにセレンはふと眼を移した店の硝子越しに展示されている首飾りを指差した

それはどこにでもあるような普通の鎖が連なり銀の環がぶら下がる極めて素朴なものだった

それこそアルト自身も幾つか持っているような

値段だってさほど高くはない

「そうですねぇ、誰か気になる殿方にでも送りたいのですか?」

特別に価値を見出したわけでもなければそういう理由だろうか

「ち、違いますよっ!で、でも渡したい人なら…」

少しモジモジしながらセレンは言い出す

「あら?よろしければお教え願えますか?セレン王女様?」

アルトは少しからかうような調子でセレンに問いかけた

「ア、アルトには教えませんよっ!それよりお茶でもしながら休憩しましょう!」

セレンはぷいっと顔を背けて歩いていった

セレンの言う渡したい人というのも差し詰めセリエかグレイド、もしくはエルシア辺りなのだろう

13歳とはいってもまだそういったかわいい子供らしさが残っているのだろう


「フフッ…!」

「どうされたんですか急に?」

近くの喫茶店を見つけて外に用意された席に向かいあって2人は座る

今日は今年1番の冷え込みらしいが出された紅茶が体を温めてくれる

セレンはいきなり口元を指先で抑えて笑みを浮かべた

「いえ、なんだか楽しいなって思って…なんだかデートみたいですねぇ〜」

セレンはほわ〜をとした雰囲気で言う

「おや?セレン様やはり…?」

アルトはまたも悪戯な笑みを浮かべながらセレンに視線を送る

「もぉっ!アルト嫌いですぅ!…あ、アルト、あそこにいるのはリーサじゃないでしょうか?」

セレンはおもむろに立ち上がりアルトを指差し、アルトが振り返る

無論、セレンはアルトを指差しているわけではなく

奥の路地にいるであろうリーサを指差している

「リーサも今日はお休みなんですね、何をしているんでしょうか?」

普段堅苦しい制服を着て堅苦しい態度で自分の身を護る彼女が

今日は年頃の女の子らしく柔らかい雰囲気の服装で街中を歩けばその動向も気になるだろう

「私たちのように買い物ではないでしょうか………」

「アルト?」

なぜかリーサを凝視しているアルトを不思議に思いセレンは声をかける

「セレン様、少しの間自由行動にしませんか?」

アルトはおもむろに立ち上がりセレンに提案した

「へ?でも、お母様は私を心配してアルトと一緒に行かせてくれたのでは…?」

セレンはいきなりの提案に小首を傾げる

「セリエ様から仰せつかったのはセレン様が少しでも女の子らしく一日を過ごされることです。きっとセリエ様もセレン様にひとりで、颯爽と街を歩かれることをお望みだと思います」

さて、セレン様はどんな反応をされるかしら?

「そうですね…分かりました!私もひとりで街を颯爽と歩けるかっこいい女性になりますっ!」

そういってセレンは勢い良くアルトから走って離れていく

「セレン様ぁ!1刻後に北の方にある高台ですよぉーっ!?」

分かりましたぁー!と返事が返ってくるのを確認しアルトも歩きだした


「おい、誰にもつけられていないだろうな?」

狭く暗い路地裏で数人の男達が蠢く

「あぁ、問題ない」

「なら早く例のブツを出してくれ」

ひとりの男が急かす

「そう焦るなよ、ここなら人は滅多にこないからな…」

男達はそう言ってほくそ笑むが

それとは裏腹に彼らを物陰から見つめる者がいた

「よし、ここで証拠を抑えて…」

出て行く瞬間を今かと待ち構える彼女の肩を何者かが掴んだ

「っ…?!」

叫び声が出ないように無理矢理息を押し殺す

「リーサ、何をしているの?」

振り返るといつもと雰囲気が違うアルトの姿があった

「アルト隊長…!どうしてここに…?!」

リーサはなるべく声を殺して驚きを隠しながら聞く

「たまたまリーサを見かけたと思ったら何かを尾行してるようだったから、それとさっきネイダの店でリーサが数人の男達を見るなり急いで出ていったって聞いたから心配だったの。それで、どんな状況だ?」

アルトは一気にいつもの白銀騎士団王女親衛隊隊長アルトの顔にもどった

それなりの緊張を要する場面だというのはリーサを最初に見た時から分かっていた

「はい、今あそこにいる男達は魔装具の流通経路からの横領で指名手配されています。隊長の言われた通りネイダさんのお店にいた時見かけたので」

とは言ったがリーサは今日は休暇

その上私服だから武器を携帯しているようにはとても思えない

「リーサ、武器は持っているか?」

「いえ、持っていません。一応動向だけでも追おうと思って…」

リーサは俯き加減に応えた

「わかった、一応私は有事の時のために魔導符を持っているからこれを使ってリーサは援護してくれ」

アルトはそう言ってリーサに色付き魔術陣の記された透明な紙を渡す

「はい!」

リーサはアルトから魔導符を受け取り服の袖を捲りそれを腕にかざすと

魔導符から魔術陣だけが抜けていきリーサの腕に沈着する

「それじゃあ……行くぞっ!!」

路地の門に張り付き一呼吸を置いてからアルトが合図し2人は男達の元へと飛び出していった


「天気が良かったらもっと景色がいいのに…」

セレンは街の向こうまでも一望できる高台の手摺に手を掛ける

今日の鉛色の空はセレンが望むような眺望は見せてくれそうにない

そんなことを思いながら今日一日の出来事を思い返す

眼下で営まれる暮らしは人々にとっては当然の日常だが

セレンにとっては非日常だった

そう思うと決して左団扇ではないがそういった暮らしが羨ましくもあった

「セレン様」

背中の方で自分を呼ぶ声が聞こえた

「あ、アルト」

アルトは階段を駆け上がり鋼色の空の下に黒髪の少女を見つけることが出来て内心ホッとした

さっきの出来事に彼女を巻き込まないためとはいえ

この国の王女を街に独りで放りだすのはかなり勇気が必要だった

だが犯罪を取り押さえる現場には巻き込みたくはなかったからああすることが最善の策だった

「アークの城下を歩いてみた感想はいかがでしたか?」

アルトはなるべく何事もなかったことを装いながらセレン聞いた

「はい、とても楽しかったです!いろんなお店の方とも仲良くなれました!」

セレンは本当に満足そうな顔を浮かべた

どうやら危険な目に会うことなく無事に楽しむことが出来たようだ

「そうですか、それはよかったです。セリエ様にもお土産話しができますね」

アルトも笑みを返すとセレンがおもむろにアルトと距離を詰めてきた

「アルト、髪が乱れてますよ?」

「あ、セレン様…」

セレンはそう言いながら背伸びをしアルトの長い焔のような髪に抱きつくように手を回す

体が密着するとアルトの体に陽だまりのような温かさが伝わってくる

「フフッ…!」

セレンが笑みを浮かべながら体を離すと首に何やら違和感があった

「セレン様、これは…?」

首に手をもっていくとひんやりとした金属の感触があった

「アルトと別れた後にどうしても欲しくて買っちゃいました!」

セレンの言うそれは先程セレンが興味を持っていた首飾りだった

「それにほらっ!アルトとお揃いです!」

そう言ってセレンはマフラーを緩めるとアルトと同じ首飾りが下がっていた

「セレン様…」

アルトは自分の心が暖かくなるのを感じた

セレン様が首飾りを渡したい人って私のことだったのかもしれないわね

「アルト…?もしかして、お気に召しませんでしたか?」

セレンが少し不安そうな顔で首飾りを見つめるアルトの顔色を伺う

「いいえセレン様、とても嬉しいんです。とても素敵な贈り物ですね、大切にしますね」

アルトはそう言ってセレンに柔らかい笑みを送った

その笑顔の通り嬉しかった

この国の王女から贈られたからではなく

セレンから贈られたことが何より嬉しかった

「はい!……あ、ゆき…アルト、雪が降ってきましたよ!」

セレンが手をだすとひとひらの雪の結晶が掌の上で溶けていく

「ええ、ここから見渡すと綺麗ですね…」

高台から城下街を見渡すと鉛色の空に散りばめられた小さな光が街にゆっくりと降り注ぐ

「アルト、今日はありがとう…」

セレンが街を見下ろすアルトの左手を右手で優しく握る

アルトの冷えた指先にゆっくりと温もりが伝わっていく

「私の方こそありがとうございます。セレン様と一緒に遊べてこんなに素敵な贈り物までいただけて、私は幸せな騎士です」

アルトもセレンの手を握り返す

「また、一緒に遊びに行ってくれますか…?」

セレンは上目遣いでアルトを見つめた

「はい、必ず…今度はリーサやセリエ様が一緒だといいですね」

「はいっ!」



「へぇ〜そんな思い出がその首飾りにあったんだぁ〜」

メリッサがアルトの首飾りを微笑ましく見つめる

「えぇ、また一緒に遊びに行く約束が今は一緒に旅をしているから不思議ね」

アルトは嬉しそうに苦笑いを浮かべる

「アハハッ!そうだね〜」

「おもしろい話しですか?私も混ぜて下さいよぅ〜」

後ろからセレンの声が聞こえた

振り返ると部屋の扉の所にセレンが立っていた

「あ、セレン。…ねぇ、セレンの着けてるやつってもしかして?」

メリッサがアルトの首元とセレンの首元をいったりきたりさせる

2人の首には同じ白く光る連なる鎖に白銀に輝く環が下がっている

「あ!アルトそれ…まだ着けていてくれたんですね!」

セレンも寝台に飛び乗りアルトの首飾りを見つめる

「もちろんですよ。大切なセレン様にいただいた大事なものですから」

アルトもセレンの首飾りを掌に乗せる

「アルト大好きですぅー!」

セレンがアルトにのしかかるようにぎゅーっと抱きつく

「アタシも仲間にいれてー!」

メリッサも同じようにアルトとセレンに抱きつく

「メリッサまで…しょうがないわね。…でも、私も大好き…よ?」

アルトも頬を紅くして2人をぎゅーっとした

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