外伝 ーSolitude of Invisibleー Part4
「…!…シルヴィア!」
振り返る眼の前にはシルヴィアが長い黒髪をなびかせながら立っていた
「ラルクちゃんは隠れ寂しがりやだな~」
ライカがいつものようにヘラヘラ笑いながら頭の後ろで腕を組む
「ラルクは昔から我慢しちゃう癖があるのよね」
「アルトと似た者同士だね~」
メリッサが顔を背けるアルトの顔を覗き込もうとする
「みんなどうして……?」
気付くはずがないと思っていた
自分でも理解するのにこれだけの時間がかかった寂しさという感情を
しかし、仲間達はそれを察したから今ラルクの眼の前にいる
「シルヴィアが教えてくれたんです。ラルクの事を、それに私たちもラルクが何か思い悩んでいるように見えて…」
セレンはシルヴィアの両肩に手を置きながらラルクを心配そうに見つめる
「ラルクの考える事はお見通しです」
「シルヴィア、その前に言う事があるでしょう?」
アルトが仕方ないなと言わんばかりにため息をつく
「ラルク、寂しいんなら私たちに甘えていいんだよ?」
「いや、甘えるって………」
ラルクは躊躇った
16歳にもなった自分が今更人に甘えられる筈がない
いや、甘えてはいけない
「ラルクはこういう時だけ正直ですね」
シルヴィアの声にラルクは伏せていた眼を上げる
「子供みたいに甘えられないのは知ってるわ。でも、きっとラルクの心は子供みたいに甘えたいのよ」
恥ずかしい話しだが反論出来ない
図星だが自然と怒りは湧き上がってこない
むしろ、安心感がラルクの心の中に気づかぬ内にあった
「寂しかったら寂しいって言えばいんじゃね?仲間なんだぜ俺ら?」
仲間………
ライカの唇から出たその言葉がラルクの心に温かく広がっていくような気がした
「ラルク、私も分かったんです。お城にいた時は家族がいましたけどなかなか会う事が許されませんでした。みんなと会ってそれが寂しい事だと気づいたんです。だから、平和になったらみんなに思いっきり甘えようと思ったんです!」
気づいていなかった
こんなに近くに自分と同じ寂しさを共有する仲間がいたなんて
「……わかったよ、みんな……あ、甘え……させてくれ…」
気恥ずかしさと喜びで舌をもつれさせながらなんとかその言葉を口にした
「もちろんです。さぁ、帰ってみんなで寝ましょう」
シルヴィアがラルクの手を引き仲間達と共にまた新たな夜明けを迎えるために帰っていった
親父、母さん…俺、みんなに会えてよかったよ…
また会った時は思いっきり……あ、甘えさせて…くれよ…?
そして、翌朝…
「はいラルク、アーン…」
セレンが朝食のスープをラルクの口元に持ってくる
「ラルク、昨夜はよく眠れましたか?寝相が悪くて毛布がはだけていたので掛け直しておきましたよ。それから…」
シルヴィアがラルクに何も言わせる隙も与えずに喋り続ける
おい………
「眠かったらいつでも私が膝枕してあげるわよ?」
アルトがラルクの頭を撫でながら言う
「プクク……ッ!ラルク子供みたいだね…!」
「ラルクもか、かわいいとこあんじゃねぇの…プハハッ…!」
笑うんじゃねぇメリッサとライカ…!
「俺は子供じゃねええぇぇ…!!!!」
ラルクは心の中で叫ぶのだった




