外伝 ーHe Loves Me?ー PART2
ーそして翌日ー
ラルク達はライカがスキップしながら出かけて行ったのを確認して
早速ライカに色仕掛けをするべく準備を始めた
「シルヴィア、早速服脱いで下さい!」
セレンがシルヴィアがいつも着ている黒の法衣に手をかける
「セレンやめて下さい、自分で着替えるのでみんな少し廊下に出て待っていて下さい」
シルヴィアはセレンの手をどける
「あ、ごめんなさい、じゃあこれを…」
セレンは白と淡いピンクのいかにも女の子という感じのワンピースをシルヴィアに見せた
「レギオン王城に初めて行った時頂いた物です」
「かわいらしいワンピースですね」
やはりと言っては自分の命が危ぶまれるが
アルトも一応女の子だから彼女のイメージとは違っても
こんなかわいらしい服にも興味があるようだ
「じゃあ着替え終わったら呼んでねぇ?」
ラルク達は部屋を一旦出て行った
「着替え終わりました」
しばらくして部屋の中からシルヴィアの声が聞こえてきた
「うわぁ…!」
セレンが声を上げた視線の先には
その場にいた全員が眼を疑う程可愛らしくワンピースを着こなしたシルヴィアがいた
「ちょっと丈が短過ぎませんか?」
シルヴィアはそう言いながらスラリと細くて白い足が出ている裾を気にする
「あのさぁ…シルヴィアって男だよな…?」
思わずそんな言葉が出てしまう
「もぉ何いってるのラルク!私は男に決まってるじゃない」
シルヴィアはラルクの質問に対し
普段の細くて低い声ではなく
細くて高い女の子っぽい声で答えた
何や感や言ってやる気満々じゃねぇか…
「じゃあ次はお化粧だね!」
「ところで、ライカの好みのお化粧…というより異性の好みってどんな女性かしら?」
そういや俺達1番大事な所外してたな…「ライカはねぇ、確か…かわいければ誰でもいいって…人……なのかな…?」
段々とメリッサの声が小さくなってくる
「自分で言ってヘコむなよ…」
「と、とにかくお化粧はじめましょう」
セレンはシルヴィアを椅子に座らせ手鏡を持たせると
女性陣が楽しそうにシルヴィアに化粧を施し始める
「あ…えと、俺は……?」
何…すれば……いいんだ?
シルヴィアに集まる女性陣の周りを自分の役割を求めてうろうろする
そして女性陣はキャッキャしていてラルクに気づく様子もない
「………………」
あ…あれだな……俺…邪魔だな……
「出来たぁ~!」
ラルクが必要性の無さに打ちひしがれている中メリッサの声が聞こえてきた
「出来たか?」
ラルクは寝ていたベッドから体を起こして女性陣の人数を数えるとそこには4人いた
その真ん中にいるシルヴィアは若い果実のような潤いを持った唇に
淡く桜色に染まる頬
シルヴィアは完全無欠の女の子になっていた
「おっ!かわいいな…」
ラルクが言うとシルヴィアはありがとうこざいますと言い
セレンとアルトはちょっとムッとした顔でメリッサは驚いた顔をラルクに見せている
おっと…罠を踏んじまったか?
「ラルク、かわいいなんて言うんだ!?」
まぁ、一応言いますよ、シルヴィア可愛かったんで…
「ラルク私達にかわいいなんて言ってくれなかったじゃないか!」
「この前香水変えたのにラルク気づいてくれなかったです…」
倦怠期夫婦か!俺達は!
「だって…アレだろ?女の人に面と向かってかわいいって言うの恥ずかしいだろ?シルヴィアは男だからさ…」
眼を反らしながら苦し紛れに言ってみたが
「そんな…かわいいだなんて恥ずかしいです…」
「もぉ…ラルクったらシャイなんだから…!」
危ねえぇ…!
ライカが女の人口説くの観察しててよかったぁ…
「ラルク、命拾いしましたね」
シルヴィアに小声で囁かれラルクはアルト達に気づかれないように小さく頷いた
「で?準備はこれで大丈夫か?」
ラルクは女性陣を見渡す
「そうだね、後はシルヴィア君次第かな?」
「意外と手の込んだ準備したわね…」
たかだか色仕掛けのために大袈裟かもしれないが
相手はあのライカだ
「でも、シルヴィア可愛く仕上がりましたよね」
「それはどうでもいいですが、早いところ行きましょう」
「シルヴィア君口調っ!」
メリッサが人差し指を立てて注意する
「……フフッ、それじゃあ行きましょ!」
またかわいらしい声を出す
「シルヴィア…ホントに男だよな…?」
「あ、ライカいたよ!」
宿の近くの酒場に来てみるとライカがボーッと頰杖をつきながら席に座っている
「よし、シルヴィア頼んだぞ」
シルヴィアをライカの元に向かわせラルク達はライカに気づかれないようにライカの背中側の離れた席に座る
「ねぇ、ここの席いい?」
早速シルヴィアが恥ずかしそうな仕草を見せながらライカに声をかける
「お、もちろん!どうぞ」
ライカも快くシルヴィアを向いの席に誘う
シルヴィアは椅子に浅く斜めにキレイに脚を閉じて座る
「バレてないみたいね」
確かにライカに女装をしているシルヴィアを疑う様子はない
「なんかこっちがドキドキしちゃいますね…」
セレンは鼓動が高鳴る胸を抑える
「こんな昼間から酒場でこんなかわいい娘に会えるなんてな…」
「お!早速口説きにいってるみたいだな」
よく見るとライカも女装したシルヴィアと同じように斜めに座り左肘をテーブルに掛ける
「嬉しい…あの……あなたの隣に行ってもいい…?」
シルヴィアは上目遣いでライカを見る
「おっと、それは俺も嬉しいな…」
ライカはニコッと白い歯を見せて笑い
円卓に並ぶ4脚の椅子の内一脚を自分の左に引き寄せる
隣に座ったシルヴィアは体を恥ずかしそうにくねらせ頬を紅く染めながら
「あ…あなたの事、このお店に入ってきた時から素敵だなぁ…って思って…」
あんな言い方で言われたら男はイチコロだろう
「シルヴィア君大胆だね…」
メリッサは感心しながら言う
恐らく演技しているシルヴィアからしたら造作もない事なんだろう
「この分ならシルヴィアにしばらく任せておいて大丈夫そうね…」
「じゃあお腹空いたしなんか食べない?」
「私たまには甘い物食べたいです」
セレンもメリッサの提案に乗ってきた
「お前らお茶しに来たんじゃねんだぞ?」
「そんな事してたらライカを見失ってしまうぞ?」
アルトも反対のようだ
「そう言えばアルトもこの前甘い物食べたいって言ってましたよね?頼むのが嫌なら私とメリッサと3人で分ければ問題無いですよね?」
セレンがアルトを誘惑する
「んん…っ…いえ、そういう問題ではなくてですね…」
アルトお前何ぐらついてんだよ!?
いつもみたいな頭の堅さはどうした!?
「ちょっとぐらいいーじゃーん!食べようよー!」
メリッサが足をバタつかせながらテーブルを叩く
「バッ…メリッサ静かにしろ…!」
メリッサを静かにさせようと立ち上がると
ラルクの座っていた椅子が倒れ
その音が酒場中に響き渡る
「キャッ…!」
そんなアクシデントも見逃さずにシルヴィアは体を縮こませながらライカに体を寄せる
「……?」
「おいやべぇって!ライカこっち見てんぞ!」
ラルク達は地震が起きた時の様にテーブルの下に身を隠す
「椅子倒したのラルクじゃん!」
小声でメリッサが反論する
「周りのお客さんにも見られてますよ…」
確かに目立っているようだ
酒場中の視線を集めてしまっている
「一旦座り直すぞ、このままだと目立ってしょうがない」
アルトの提案でラルク達はテーブルの下から出て座り直す
一応、最低限の変装をしているから大丈夫なはず…
そぉっとライカの方を向くと隣にいるシルヴィアと楽しそうに話している
どうやらバレてはいないようだ
「じゃあさ、バレてないみたいだからパフェでも食べよう!」
甘いもんはもういいだろっ!
「おい、んなもん食べてる…」
「あ、すみません、この特大パフェをスプーン3つでお願いします…」
あれ?いつからこの娘達こんな自由になったんだっけ?
俺達もうちょっとマジメじゃなかったっけ?
言いかけている瞬間にはもうセレンはメニューを見ながらが注文していた
「はい、かしこまりました」
店員の女性は笑顔で応えて厨房に向かっていった
酒場でパフェって…しかも多分俺は食べない事になってるな…
「お待たせしました、特大パフェでございます!それではごゆっくりどうぞ」
しばらくして店員の女性はラルク達の座る円卓にその特大パフェとやらとスプーンを3つ置いていった
「おいしそうねぇ…」
アルトは頬に手を当てながらスプーンを取る
…ってアルトも食べんのかよ!?
「ん~おいし~!しあわせ~!」
やっぱ女の子の喜ぶ顔見んのはいいもんだなぁ…
ってライカみたいな事思ってる場合じゃねぇよな
「ん?ラルクどうしたんですか?」
パフェを幸せそうに口に運ぶセレンがラルクの視線に気づく
「もしかしてぇ…食べたいのぉ~?」
メリッサがイタズラな視線でラルクに聞いてくる
そりゃ食べたいっすよ…でも、大の男がパフェって…どうなんよ?
「ライカ見張ってなくていいのかよ?」
食べたい願望を悟られないように話しを元に戻す
「シルヴィアの事だ、何処かで何かしらライカを試すための山場を考えているだろう。今はああして警戒心を解いていってるしな…」
あのアルトの意志の強さを砕くとは…特大パフェ恐るべし…
まぁ、俺はそんな誘惑には…
「はい!ラルクあ~ん…」
「お、ありがと…」
セレンにスプーンですくった生クリームを差し出され
思わず口を開けてしまう
「おいしいですか?」
口の中にもたらされる幸せな甘さに思わず頷いてしまう
もうそれだけで意思が揺らいでしまう
もう一度言おう、恐るべし特大パフェ…
甘味という幸せに暫く浸っているとラルクはある事に気づいた
「おい!シルヴィアとライカ店出てくぞ!?」
ラルクがライカの席を確認すると
ライカはシルヴィアを連れて店の出口へと向かっていた
「ホントだ!行こっ!」
メリッサが急いでスプーンを置き席を立つ
「待って下さいメリッサ!残したらお店の人に悪いですよ!」
セレンもメリッサを追う
「お待ち下さいセレン様!ほっぺにクリームがっ!」
「おい!お前らお会計は?!」
出遅れたラルクが先に席を立ったメリッサ達を引き止めようとすると
「ラルク頼んだ!」
アルトの声が返ってきた
…結局俺が払うのかよ……




