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【0〜1次審査編完結】Girls Storys!All Stages!!  作者: 秋浦ユイ
【4st】二次審査 ファーデン 序
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第36話 駆ける

――8月3日 12時48分 東多目的堂

そこには5人集まっていた。

多目的堂内の隅に、塊になる。

内2人は息を切らしいたのか、呼吸が乱れている。


「で……久しぶりですね、こうして集まるのは」


イマが壁に背を預けて、放っていた。

口を開けば、その隣のサキが便乗して歯を見せる。


「いやぁ〜本当に久しぶり!カコ、エミィちゃん!」


息を切らしているのは、櫟木カコと篠宮エミィ。

2人の前髪から仄かに見える額から汗が流れ落ちた。


「っ、うん‥‥久しぶりサキちゃんにイマちゃん」


「はいはい‥‥再会を喜ぶ前に状況を整理するわよ」


若干の吃りを聞かせるカコの肩に、自身の肩を軽く突いたエミィ。そんな彼女は、先ほどまでの疲れ顔が嘘だったかの様に切り替える。



「ええ、同感です」


淡々とイマ。

壁に預けていた背が剥がれると、角っこで自身の顔を掌で覆っている、1人の少女へ足先が向かう。


「まず、彼女は“夜噛ツバサ”」


「クックック‥‥やっと、我のターンか?待ちくたびれたなぁ〜」


他3人の視線が一気に冷えまった

サキでさえも一歩引くほどのキャラの濃さ。


「彼女は、これが通常ですので気になさらず」


「ヴェル――連中は我の新しき眷属か?それとも、もしやヴェル‥‥君の眷属か?」


3人が絶えずイマを囲った。

背を低くし、耳打ちをする程の細やかな声で。


「ね、ねえ?イマ、“ヴェル”‥‥ってなに?」

「彼女なりのアタシの愛称です」



「イマちゃん、大丈夫?無理矢理に合わせてない?」

「ええ、大丈夫です。アタシの意思と感情で彼女を信頼に足る仲間として迎えるという判断をしました」


「どう考えてもまともな人間じゃないわよね?」

「‥‥それは実際に接して確かめて下さい‥‥人を直ぐに判断すべきではありませんよエミィさん」


次々に質疑応答が始まるが、イマは淡々と。

正式な改まった記者会見的に、ただ述べていく。


他3人は顔を見合わせ、そしてツバサを一瞥。


「ふっ、ヴェル‥‥まさか君が秘密結社を設立していたなんて思いもしなかったよ‥‥」


彼女達に、澄んだ顔したツバサが奇妙なポーズを何個も、何度も切り替えてアピールする様が映った。


「まあ、イマが言うなら大丈夫!!ねねっ、ツバサちゃんって言葉いっぱい知ってるんだね!!」


サキが駆け出すと、ツバサの手を握って瞳逸らさずに対話しようとする。


「っ!な、なにやつ!」


「小説とかいっぱい読んだりしてるの?」


彼女は自身のペースの枠に入られ狼狽えていながらもサキの積極的な会話のキャッチボールのお陰か笑顔がチラついて見えた。


「わ、我は堕天と熾天の翼を持つ特別な人類だ‥‥故にお主らと違って“知恵”は持て余している!」


「だ、だて?し、シテン?」


カコとエミィは、彼女のその様子を見守る。

段々とそんなツバサの個性も受け入れるのかカコは顔を綻ばせる。


一方エミィは‥‥


「ファーデンにまともな候補生はいないのかしらね」


懐疑的であった。

腕を組み、唇を本の一瞬、少し舐めたエミィ。


「んで、まずエミィ達の状況を伝えるわ」


彼女が切り出すと、全員が彼女の姿を見詰める。



――数十分前 12時30分 西棟付近


「エミィちゃん……なんで、ここに?」


享紺はエミィを背にし、芝居かがった様に所作を加えて始める。


「さあ、なぜだろうね‥‥櫟木カコ」


「エミィちゃんのストーカー‥‥な、なんでアナタがいるの?」


こんがらがっているカコ。手を繋いでいた、逢沢春の温もりが既に消え去っていて手の平に空気が通る。

代わりに横目にチラリと春の姿が映っていた。


「勿論、オレが仕組んだ‥‥君はサイド・ピースだ‥‥可笑しいと思ったんだよあの時、篠宮嬢を庇う君が」


ジワジワと怒りが伝わる、そんな歯を食いしばる音を耳にする2人。


「ちょ、ちょっと待ってきっと誤解してるよ?」


「ぶっ、誤解?dadaちゃん、この目で見たもんね〜」


弁明をしようとした、彼女を茶化すdada。

彼女はカメラのレンズをカコに向ける。


「ね、ねぇ自分達が何をしてるか‥‥分かってるの‥‥もう辞めようよ」


力なく、放つ。

後退るとドサっと身体が当たった。

春の身体だった。


「カコ‥‥“また逃げるの”?」


ぶつかった拍子に彼女の表情が見えた。

笑っているとも哀しそうとも捉えれる曖昧な表情だ


享紺はカコに近寄る、それはゆっくりと。

シューズが土を踏む音が大きく聞こえる様な気がして、でも後ろには春がいて‥‥


逃げようにもエミィを置いてはいけなくて。

何度も思考を回してみても、どうするべきなのか分からない。


このままジッとしていたら何をされるのかは分からない。畏怖だけが心臓を染めていった。


『あぁ〜あ〜聞こえるかいなー』


そんな時だった、放送が流れたのは――


『うん、おっけ‥‥全候補生に報せや』


迫る畏怖が、歪な静寂を全て掻き払っていく。


『来る8月30日、水曜日の宵に――』


その場の享紺、dada、春が意識を取られている。


『“黒石アイ”、“大音アテナ”、“美鴨サキ”』


その数秒の隙を縫う様にカコはエミィの袖を握りしめた。身体が勝手に動き出したのか、何も計画はない。

どこに行くのかも考えもなしに‥‥


『以上、3名が歌唱評価にて“三つ巴決戦”をする‥‥ この3名はそれまでの金曜評価は免除、但しドベケツは直ちに脱落のサドンデスや!』


――ただ、駆ける。

向かう場所は出来るだけ彼女達から遠く離れた場所に自然と方角を決めていたカコ。

連れて行かれるままのエミィも必死に駆けていく。


『異論は認める、但しこれは確定事項や!!』

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