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【0〜1次審査編完結】Girls Storys!All Stages!!  作者: 秋浦ユイ
【4st】二次審査 ファーデン 序
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第34話 三つ巴決戦②

――8月3日 12時20分頃 イマサイド 

新岡イマと夜噛ツバサは東音楽堂の出入り口付近を見張るようにして木陰に身を潜める。



「今、さっき“樽前チエ”が音楽堂に入ってたが――」


ツバサは顎に手を添えて口にした。


「ヴェル、なぜ君は彼女が音楽堂へ赴くと、分かっていた?」


「いえ、知りませんでした……」


淡々と答えるイマ。彼女が深く、何かを考えるように腕を組み直すと木の葉が風で揺れていく。



「今日は、全体を見る日として消費しようと考えていました‥‥」


「つまり、主催側の動向チェックか?」


「はい‥‥ただ早速、幸いにもヒットしましたね」


イマは、音楽堂へと歩んでいく。

テンポ遅れてツバサが彼女の後をついていく。

その表情は疑念を抱いた様に、酸っぱい。


「ヴェル――なぜ、君は我に“隠密”を提案した?」


ツバサは彼女の肩を軽く掴んだ。

掴まれると、途端にその場で立ち止まる。


『ここで、一つアタシと“隠密”しませんか?』


蒸し暑いのは昨日と今日も変わらない。

肌に熱は粘りついて不快感が付きまとう。


「‥‥理由は解らないです‥‥でも“アナタが了承してくれるならアタシは嬉しい”と確かに感じたんです」


2人は互いの顔を見合っていた。

何も言わずに、ただ見つめるだけの時間が過ぎ去る。


「ヴェル、君は‥‥いや、何でもない」


言いかけて辞めるツバサ。

拳を握っている事を確かめるイマ。

ただ、目を逸らす。


「アタシはただ、アタシの心情に従います――アナタがそうである様に、アタシもそうでありたい」


そう放つイマは、忽ち音楽堂に入っていく。

物悲しげな彼女の背中を見るツバサ。磁石に引っ張られた砂鉄の様に彼女に付いて行くのだった。


――同時刻 サキサイド 音楽堂


「僕も“自分”がないから……かな?」


サキは、アテナに視線を送って繊細に声を贈ってみる


「え、アテナ大丈夫?これは私が勝手に言ってる事だから、えーとなんていうか‥‥」


「うん、勿論」


「本当に?」


白銀の彼女は、サキに微笑みかけた。

何かしらの魔法に掛かった様な、微笑みに射抜かれるサキだったが、素直に浮つかない。


「あぁ、白けるわ‥‥」


「その気持ち、察するよ」


2人に対する、三白眼が突き刺さすアイの一言は冷たい物だったけれどアテナは飄々していた。


「喧嘩売ってるって認識して大丈夫ってことね、はいはい‥‥」


「それに返す言葉を敢えて伝えるならば――文字通り“喧嘩を買う”行為をしてるのは君の方じゃないのかな?」


視線が火花を散らし合っている。


「は?」


サキ自身、そんな雰囲気にするつもりではなかったので首を傾げてしまっている現状。


「えーと‥‥みんな仲良くやろうよ〜」


黒石アイはそんなチープな和ましには屈しない。

ナイフの様な鋭い目線を直ぐ様、サキに突き立てる。


「仲良く?何を言ってるのか、さっぱりね」


音楽堂の、その空間では複数人の候補生が滞在していたのだが、一連の会話の応酬にて冷えた目線を送るものも少なくはなかった。


「ええやん、ええやん!」


そんな中、出入り口の扉が開いた。

開いたと思えば飄然とした関西弁が耳を通り行く。

場の候補生らは瞬時に、その存在を理解する。


「オモロそうやないか“三つ巴決戦”決まりやな」


アイとアテナは動揺はせずに、淡々と状況を理解するがサキはそうではなかった。


「えっ!聞いていたんですが、樽前さん!」


樽前はその反応を予測していたのか、天井や壁と複数箇所へ向けて指差す。


「言ったやろ?君達は常に、見られてんねん」


腑に落ちたのか、サキは声を上げずに口だけを開けて大きく頷いた。


『ただし――注意して欲しいのが、ファーデン内には数多の撮影カメラが設置されてる。』


ここでアテナはクスッと控え目に笑う。


「なに、笑ってんのよ‥‥」


「うん‥‥ただ、サキの反応が可愛いくて」


伏せ笑う、彼女に一言放ったアイは訝しむ。


「って事で‥‥さっきの会話やらはライブ配信されて――」


樽前はアイを一瞥し、目を綻ばせる。

それからサキに近づくと肩に手を置いた。


「大変、その“バトル”が視聴者から『気になる』『楽しみ』やら、何やらって注目を浴びてんねん」


胸ポケットから樽前はスマートフォンを取り出して、実際にライブ配信されている現在の音楽堂の様子を見せびらかす。


「特に‥‥君の、勇気ある言動と悔しさをエンタメに昇華しようとする貪欲さを私は賞賛したい」


画面には、正に現状が映し出されている。

サキ自身に樽前が励ます様に肩に手を添え、それを背後に2人が見つめる図だ。


「私‥‥を、賞賛?」


「あぁ、勿論や‥‥」


樽前は、それから自由に練り歩き出す。


「“千年に一度の逸材”黒石アイ‥‥俳優、モデルそして一時期は歌手としても活動していて、それどれもが圧倒的な力で捩じ伏せた正に逸材や」


アイの周辺を、ねちっこく歩む。

次は平等にアテナへ出向く。


「超の付く一流音楽家系の“大音家”の長女‥‥幼い頃から手に馴染ませてきたピアノで国内問わず、好成績を納めてきた“音楽の女神”大音アテナ――」


そして最後に樽前はサキの目の前に戻ってくる。

半笑いでありつつも、彼女に拍手を送った。


「そんな2人に、真っ向から挑む‥‥君や――興奮せずにはいられないやろ?何てったって下剋上やもん」


3人は、何も言葉を発さなかった。

じっくり煮込み出した沈黙は樽前は静かに、飲み干していくように言葉を次々に紡ぐ。


「じゃ、じゃあ‥‥バトル認めてくれるって事ですよね?」


サキは、声を低くして発言する。


「勿論‥‥ただ、これは相当オモロくなりそうやから、決戦日は8月30日――」


唾を上手く飲み込めそうになかったが、固唾を何とか滑らせたサキだ。


「実質ファーデンでの最後の夜や‥‥絶好やろ?」


「なぜ、そんなにも期待するんですか?」


間髪入れずにアイ。

自信に満ち溢れているかのように腕組みをし続ける。


「言ったやろ?オモロくなりそうし‥‥視聴者からの注目が案外、高いからや」


ここで、手をスッと挙げたアテナ。


「ん、何や?」


「その決戦は通常の評価と変わらない扱いですか?その日までに目標adoreに届いていたら、それこそ緊張の無い面白味に欠ける」


注意深く、樽前は聞いていると笑いを噴き出す


「あぁ〜君ら、真面目やなあ‥‥安心せえ、ちゃんと考えてんねん――」



――同時刻 イマサイド 東音楽堂 渡り廊下

2人は音楽堂の渡り廊下で、本堂の出入り口にて話を聞いていた。



『まず、決戦まで君らには毎週金曜の評価は免除‥‥代わりにその決戦が起死回生の大勝負――』 


イマは終始険しい表情だ。


「君の友達はどうやらギャンブラーらしいなヴェル」


「‥‥いいえ、ギャンブラーではなくバーサーカーと言ったほうが彼女に合います」


淡白に答えるが、表情は何一つ変えない。

緊張の絶えない現場を見続けるイマ。


『つまり、そこで大負け‥‥ドベケツになった者はオーディションから“落選”や』

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