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第25話 Zero to First Stages!! 後編 【0〜1次審査編 完結】

――――7月 某日 東京 渋谷

人々の雑多と喧騒が止まない。

そんな中で渋谷駅前のビジョンが派手な演出と音で一際、存在感を放った。


『Girls Storys!二次審査8月始動 各種動画配信サービスにてドキュメンタリー番組も順次更新、地上波では毎月、生放送を実施する』


大々的な宣伝に足を止めて、スマホを構える女子高生も、足を止めずに進んでいくスーツ姿の人も通りすがる。


東京は燃ゆる、そして茹だる。

熱気か、または肌に纏わり付くのか。


とあるファストフード店で屯する女子高生達はオーディションの公式サイトを開いて。


「ね、ヤバくない?全員、めっかわなんだけど」

「え?誰推し?てか、300人もいんのに1日1人しか票入れないとかパナくない?」

「マジそれな〜、まあアッシは番組始まってどんな奴か確かめてから推しは決めるし?」


また別の場所では満員の電車にて、肉塊と肉塊の間を縫って、無表情でスーツ姿の男が宣伝動画を閲覧。その額には、肌には汗が滲むもの。


またまた別の所では小学生程の子供と、その親が今オーディションのテレビCMを観て興味を寄せる。

エアコンの空気に、愛おしさを覚えるぐらい子供は手には汗を握ってる。


――公式サイトでは二次審査突破者全員の名前と、そして顔写真が掲載される。

既に、サイトでは300全員分が掲載され賑わう。


あの大手ホテル会社“シノミヤグループ”の令嬢


“一千年に一度の逸材”と謳われる希代の役者


現在、インディー音楽で急上昇を見せる“一弦なくしたギター”のボーカル


他にも様々な経歴、背景を持つ候補者にSNSではオーディションの雲行きを心配する声や、純粋なエールと驚嘆の声と期待が飛び交う。


世間一般からは今や、人気絶頂期にいる『三美神』を排出した大手事務所が東京ドームの2個分という規模感の施設を建設する熱意と、無謀な賭けに面白おかしく話題を掻っ攫う。


テレビ・ラジオ・新聞のオールドメディアから

動画配信サービス・SNS等のニューメディア。

そして芸能界全体にーー


“旋風”の報道と、その拡散が度々され話題になる。

それは当然、良いも悪いもある。

プロジェクトの内容を茶化す物や、候補者の過去や経歴を引っ掻き回す輩も既に存在してしまう。


――だが故に、これは運営側から見れば戦略的大成功

批判も否定も肯定も称賛も、全て話題の渦中である

何よりの証拠だ。


熱は、新たなる熱を生み、そして火力を増す。

だからこそ、人々は薪をくべる。


――――7月19日

祭り屋台も、提灯も薄光に思えるほどに

空に花が咲いた。何本も咲き誇った。


「うぁ〜!!キレィー!!」


いつもの幼馴染3人は、その空の花を見る。

美鴨サキの手には団子の代わりにリンゴ飴。

そしてもう一つの手には綿飴だ。


「そうですね」「うん、本当に綺麗だね」


雰囲気だけでもと浴衣を着て欲しいと、サキとカコにせがまれたイマ。そんな彼女の浴衣は淡い青のアネモネ柄だ。


「今年も、綺麗に咲けたね」


カコの洒落に召していたイヤリングが小さく動く。

珍しく、髪を結んでいるカコの首筋に風がまた通る


「夏は、まだ始まったばかりですよ」


「そうだよ!!特に今年の夏はまだまだ特大イベントが控えてるんだから!!」


空から飛び散る、火の粉がゆっくりと消えていく。

星は遠い。でも花は、手に届きそうで届かない。


皆、見上げているのだからと

もっと沢山、咲きたい花が、また一つ空に散る。

ここで一つ、大きくて、そして壮大な物が打ち上がる


ヒューと茎を伸ばして、パッと花が咲く。

一瞬で枯れてしまう存在だけれど一瞬で記憶に焼き付く大きな花だ。


――――二次審査  当日 8月1日 早朝

玄関前にはサキの母と、姉のミライが微笑みかけている。


「お母さん、ミライ姉……」


サキは大きなリュックを抱え、片手にもバック。

彼女は笑顔ではなかった。

ただ、不安でもなさそうだ。


「が、頑張るのよ!!サキ!」


母が両手をギュッと握った。

それを照れくさそうにサキは受け入れる。


「なに?もう、ホームシックになってるの?」


ミライが茶化した。母の二歩後ろだ。

背中を押す訳でもないが

ただ、何となく期待を込めているような目つきだ。


「ホームシックなんて、しないやい!!」


サキが頬を膨らませて、ミライに野次を飛ばす。

母はそんな様子を見て安心したのか、握った手を緩めて、そしてゆっくりと解いていく。


「ビッグになって帰ってくるからさ、ちゃんと見守っててよ!!あと毎日、私にポイント入れる事ね!」


自分から、足を一歩、また一歩と進めていく。

そしてまた後ろを振り返って2人を覗く。


どことなく、淋しそうな2人だ。

でも、どことなく自分の事を誇りに思ってくれているような、そんな小さな小さな微笑みが見えた。


「うん……」


立ち止まった、サキ。

彼女がスッとパンツから取り出したのは――


「私は、断然!2番の人間だから!!心配しないでね!」


2人に見せびらかせたのは、母から貰ったお守りだ。


これ以上、サキは振り返らなかった。

家族も何も声をかけなかった。

だからこそ、前に進めたサキでもあった。


「行ってきま〜す!!」


――――300人はそれぞれに指定された時間と場に集まる様に運営メッセージにて指示されていた。


サキがその時、訪れた時には30人程が集まっており。

大人のスタッフとバスの運転手、カメラマンもいた。


促されるままに、荷物をバスのトランクルームへ運ばれていく。まるで修学旅行の様な気持ちにもなった。


最後はスタッフに促され、サキはバスに乗る。

最後方の隅っこだ。

窓はカーテンが予め閉められていた。


自分と同じくらい、または少し上と下の子達。

その子達は自分と同じオーディションに受けて、五万人から、ここまで勝ち残った精鋭。


席に座るけれど、ずっと頭の中でそんな事ばかりが回っている。緊張なのか不安なのか興奮なのかサキには今はまだ分からなかった。


いつもの3人とエミィの姿はここにはない。

事前に情報を共有していたので一緒の時間帯ではないことは理解していた、だが落ち着かない。


手が勝手に落ち着こうと絡み合う。

するとクネクネと動いていて忙しない。


「あっ!えと……?」


突如、カメラが自分に向けられた。

先ほどまで車内全体を映していたのに。


「あぁ、気にしないで色々と表情とか撮りたいからさ。後々、一人一人にインタビューとかも取るから」


「は、い!」


カメラマンについて回っていた1人のスタッフが答えた。慣れた様な穏やかな口調だ。


身体が大きく前に、引っ張られる。

バスが発車したようだ。


バス車内は通常のバスより遥かに幅が広かった、

前方にはモニターが大きくあって、画面は真っ暗だから、サキからは全員の表情を窺えた。


サキにはそんな全員の表情がそれぞれ違って見えた。

ただ共通しているのは、何処となく自信を持った前向きな表情であったのだ。


『あ、あ……聞こえるかい、聞こえるかい?』


ここでモニターの画面がついて1人の女性が映った。



――篠宮エミィ サイド

バス車内は騒がしい。

お世辞抜きで控えめに言って五月蝿かった。


「やあ、そこのお嬢さん」


「……なにか?」


「オレと密会(ランデブー)しない?」


「は……?」


エミィは閉まっていたカーテンを少しだけ開けて

外を眺めていたのだが――


「オレの名は享紺唯(きょうこん ゆい)……

気軽に享紺と呼んでくれて構わないさ」


――櫟木カコ サイド

カコにとって、それは予想外だった。

予期せぬ事態であり頭が真っ白になっていた。


「え……なん……で?」


バスの席は固定されていた。

ただ、移動の際にカコの背から声をかけた者がいた。


「カコもオーディション参加してたんだね

気づかなかったよ……会えてうれしいよ」


彼女にとって、会いたくなかった人物だ。

サラサラな黒髪に、真っ直ぐで通った声。


自分が彼女にあげた赤のカチューシャは、もうすっかり、トレードマークの様になっていた。


「……逢沢‥‥春ちゃん……」



――新岡イマ サイド


「堕天は我が右手に!そして左手には熾天使!夜噛ツバサの翼は堕天と熾天使の翼であーる!!」


揺れる車内で、1人の少女が叫んだ。

他の候補者達はおろか、スタッフも動揺を見せる。

カメラマンは辛うじて、そんな彼女を納めるように努めていた。


「さあさあ!!ここに集まったのは、選別の儀式に定まれし純白の民か、はたまた偶像たる者か!!」


紫色の髪が車内の中央で舞う。

呆れも、羞恥心も全てが混じる場は正に地獄。


「ふんっ!!精査しなくとも解るなッ!

 我ッ、夜噛ツバサしか勝たん!!」


スタッフが彼女に近づく。


「あ、の……危ないので座って頂けませんか?」


「なに、玉座に座れと?」


「はい、危ないので」


「まあ、それは一理あるな……我の席はどこだ?」


イマは、心に誓った。

彼女には絶対に関わらないでおこうと。

彼女の視界に入らないように身を縮こめるイマ


「おお!ここか、我の玉座!暫く、(カラ)にしてあったが、よく誰にも取られずにおったな!!」


小さく舌打ちをするイマ。

まさか、例の彼女が自分と相席する子だったとは。


「まさか!!お主が、玉座を守ってくれたのか?」


話を掛けられても無視を心掛けるイマ。


「名を何と呼ぶ⁇お主っ!名をっ何と呼ぶ?」


窓を見ても、服に隠れてもグイグイやってくる。

肯定しなければ話が進まないロールプレイングゲームのNPCの様だと、心の中で呟くイマだった。


『あ、あ……聞こえるかい、聞こえるかい?

やあ、300人の偶像候補達よ――私は樽前チエだ』

ヤッタ!これにて0〜1次審査編 完結です!

再来週からは二次審査 ファーデン編です!

(来週から、ちょっとしたここまでの整理が入ります)

本当にここまで読んでくれた皆様ありがと!


評価等入れるなら、このタイミングです!

(めっちゃモチベになります!)


後もう少しだけ、夏祭りの話とか色々と書きたかったけどテンポが死んじゃうので泣く泣く!

短編で書くかも、書かないかも!


あっ、推しとか好きな子いたら教えてね!

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