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第14話 ここからはオリジナリティ勝負 後編

だが写真に写った、それぞれの微笑みと眼差しは

希望と野心が融合した明るい物だった。


「おお!!盛れてるっ!」


「分かるっサキちゃん!やっぱり照明とか、カメラが違うからなのかなあ〜」


サキとカコが自身のスマホのカメラロールを熟視。

その傍にはホワイトバック、正面には厳かな照明機材と撮影機材が設置されている。


「アナタ達、感謝しなさいよ!

 エミィの温情があっての撮影だからね!」


「はぁーい!」「ありがとっエミィちゃん!」


エミィが胸を張りながら、足早に休憩スペースに座る。

その机に置いてあった自身のスマホをチラッと覗かせた。


「それよりも想像以上でしたよ……最早、写真スタジオそのものじゃないですか」


パイプ椅子を引いてエミィの隣にサッと座るイマ。


「元々、叔父様がカメラが好きだったと言うのもあるけれど両親が事ある毎にエミィ達の写真を撮っていた産物よ」


イマとエミィは部屋の奥、ホワイトバックの前で2人が何やら仲良く話しているのを遠目に見る。


「そうですか」


そう、相槌を打つ彼女の手元にはスマホ。

画面はエミィからは見えないし、見ようともしなかった。


エミィは時折、深い溜息を吐く彼女に

二度、三度と視線を移しては俯く。


「な、なんなの……なんか悩みでもあるの?」


「……はい?」


「い、いやっ何でもないなら、何でもないわ」


エミィは痺れを切らしたのか勢い任せに頬杖を付くと

そっぽ向くように。


「悩みではないですけれど、懸念ですね」


スマホを手元から離して、懐から手帳を取り出すイマ。

粛々と手帳を眺めながら、ふとエミィを一瞥。


「懸念……何かしら?」


「なんの話してんのー!!」


タイミングよく

サキの両肩に両手を置いて電車ごっこの2人が

嬉々としてやってきた。


「丁度よかったです、この際ですから――」


イマが手帳を開いたまま、スッと椅子を引き

立ち上がる。


「“今日、この場で今すぐに応募しますよ”」


サキとカコは一瞬、キョトンとしたが

気を取り戻した様に厳粛な雰囲気が漂った。


「やるんだね、イマちゃん」


誇らしく思うのか、または何処か案ずるのか

声を落として事実確認を行なうカコ。


「ええ、やりましょう」


カコはその両肩に置いていた、もろ手を静かに移動して

自身のシックなボックスプリーツの丈を握っていた。


「ねね、私から提案があるんだけどいい?」


珍しく慎んで、手を後ろに組んだサキは

首を傾げてイマに上目遣いだ。


「サキが、進んで提案ですか?意外ですね」


「えぇ〜なんかダメ?」


彼女が語尾を伸ばすと、イマは横に首を振る。

その動作を見るなりサキは組んだ

手を自身の両頬に当ててパチンと音を立てる。


「よしっ!言うねっ」


一連の流れを3人は見守りながら、言葉の先を考える。

写真撮影明けのリラックスした時間から一変して

水を差す隙のない静粛な空気感に移り変わっていく。


「ここからは!一旦、一人一人の時間でやってみない?」


提案の内容は非常にシンプルな物でありつつ

サキは活力溢れる前向きな声色とニュアンスを含んだ。


「……サキちゃん?それってどう言う……?」


カコが素直に疑問を口にし、目は何処か揺らいでいた。


「だってほら、ここまで皆んなで頑張ってきて

 オーディションを受ける準備をしてきた訳でしょ?」


サキは3人とゆっくりと目を合わせる。


「ただ、オーディションは皆んなが皆、受かる訳じゃない……それが現実で、それでも挑戦したいのが私達」


自身の胸に手を置いて、ギュッと服を握りしめた。

それから天を仰いだまま話を進めた。


「イマの0次審査があって……カコの復帰もあった

その前と後からエミィちゃんには現実を知らされて――」


それぞれ言葉のタイミング事にサキは一人一人に

改めて、視線を送って最後にニコッと微笑んだ。


覚悟を決めた様にサキはスマホを目の前の机に置いた。


「自己PRと応募ボタンを押すその時も

ここからはそれぞれ、オリジナリティ勝負でやろう!」


3人に真摯に語り掛ける。

部屋はヤケに冷房が効いていて、肌に切なさを覚えるのはカコであったが、半歩前に出ると


「うん、ワタシは皆んなに助けてもらいっぱなしだし、最後の応募送信する時ぐらいワタシの力で頑張りたい――」


自信を持った返事の後は

カコもサキと同様に自身のスマホを机に差し出す。


「それに落選した時に全部、ワタシの責任で済むようにワタシはサキちゃんに賛成だよ」


サキに向けて、純度の高い笑顔を見せるカコ。


「アタシも賛成ですね……サキの言うことは一理ありますし、実際ここからは1人で戦うことがメインになってきますし」


淡々と事実を述べるイマは何も躊躇いなく、自身のスマホを2人のに綺麗に次ぐ様に並べ置く。


「ありがと、イマ、カコ……

そもそも私が2人を誘ったのにごめんね」


サキが自分の手を両者に差し出すと

2人は嫌味な顔一つもせずにコクリと頷く。

そして互いに自然と握手していた。


「ハぁ……」


それを眼前に捉えるエミィは浅い溜息を吐くと

得意げに髪を後ろに流して


(はな)からエミィも、そう考えていたわよ……

まあ敵に塩を送るような真似をしたのはお互い様ね」


エミィも、その場に立ち上がると

スマホを持ってサキの目の前まで歩き出す。


サキもサキで、彼女を目で追う。


「言葉通り、サキ……ここからは“熾烈”よ

 誰が落ちても受かっても恨みも何もないわ」


「うん、分かってる」


エミィはその場で持っていたスマホを机に差し出す。


「エミィはアナタ達と今日まで行動を共にして

 正直…………嬉しかったし楽しかった――」


エミィは一歩、二歩引いて3人を一瞥。


「確かに最低な事もやってしまったけれどね……」

恥ずかしそうに言いながらもキチンと伝える。


「だからこそ、|二次審査で会いましょう《ファーデンで戦いましょう》……絶対よ」


四人は互いに目を合わせながら微笑み返す

そんな時間が続く、とあるG.Wはあっという間に過ぎ去り

5月も瞬く間に消え去って行く。



――――6月初旬 書類最終審査 都内某所

会議室に集められたのはオーディションの責任者達


オーディション番組CP・香藤

代表スポンサーの重役・尾野

審査アドバイザー『三美神』代表・小栗華

そしてオーディション運営最高責任者・立花藍


会議室のデスクは楕円形。

均等に配置された無機質な椅子に、彼らは重苦しく腰を据え息を潜める。そして見つめた先には立花藍。


「本日は皆様『Girls Storys!』書類最終審査にて貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます――」


仰々しく話し始めた“立花藍”

今件においての運営最高責任者の1人であり

サンセット事務所の社長という重役。


「運営審査チームの厳正なる一週間の書類審査期間を設けまして今日、一次審査へと進む応募者達を確定させたく、関係者皆様のご意見も反映させたくお集まり頂きました」


丁重に、まるでアナウンサーかのように澱みなく伝える。


「まず、本件の応募者数は約5万人……これは私達どもが想定していた数を大きく上回っています」


緊張や憂慮などを全く感じさせない。

抑揚を付ける説明は一同がより意欲を掻き立てさせれる


「嬉しい悲鳴というのは正にこの事ですね――

ただ、書類最終審査まで残ったのは“350人”」


ここで、挙手した者がいた。


「スポンサー代表で参りました音楽配信サービス『オントモ』運営の株式会社ECエンターテイメントチキン(ワタクシ)尾野と申します……」


同社は今回のオーディション全般の筆頭スポンサー。

立花社長は粛々と受け応えを


「はい、ありがとうございます尾野様」


細々とした様相である彼の物腰は規律正しく

言葉を連ねていく。


「立花社長、私共の審査基準は言ってしまえば話題性や弊社の事業に貢献でき得るかどうかというのですが……構いませんでしょうかね?」


「はい、各々の基準があっての審査ですので」


それを耳に流しながら腕組みする香藤。

彼は手元に置かれた応募書類を眺める。そこには5人ずつ応募者がまとめられている。


「んで、一次審査に落ちるのは50人ぐらいって事か?」


立花を一瞥してから、また応募書類に目を通す香藤。


ピリッとした空気が一瞬、過ったことを感じた小栗は身構えるように椅子に座り直す。


「そこは厳正に審査を致します。300人が上限ではある物の可能性や実力があれば……」


粛々と彼の問いに答える立花を遮るように


「じゃあ逆に――」


香藤が応募書類の一枚を手に取ってブラブラと

それを揺らす


「300人以下にする事は可能か?今この書類審査で……」


彼は虚ろ目なまま、息が詰まりそうな程に声を落とした。


無機質にブラブラと揺れるその一枚の応募書類は一瞬にして会議室の全員の目線を奪った。

次回更新は来週金曜5月22日 20時!


感想コメント、♡、ブックマーク等々よろしくお願いいたします!


下記のYouTubeチャンネルにて

作中楽曲が実際に聴けます!


https://www.youtube.com/@%E7%A7%8B%E6%B5%A6%E3%83%A6%E3%82%A4

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