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第13話 g'wレディスタート!後編

パフェの容器から手を離すサキ。

同時に、彼女はイマの目ではなく口元の辺りに

目線を向けた。


「じ、実はねイマ……私さ」


言い淀ませ、そして唾を飲みこむサキ。

その言い難い様子は一目瞭然として

イマは変わらず彼女の瞳をジッと静かに。


「皆んなと明らかに、劣ってるなって思ってきちゃって……応募は絶対にするし、頑張りたいけど……さ」


伏し目がちな彼女からは、活力が失われつつあり

瞬きの回数も異様に遅かった。


「なぜ、劣っていると?」


カウンセラーの様にイマは事務的に。

そしてコーヒーカップを持ち上げ、また一口。


傍に置いてあったイマが頼んだ未だ口を付けていない、

パフェをイマは一目したが、気にせず。


「わ、分からない……」


「いつから、そう思い始めましたか?」


「いつ、から…………」


サキは考え込む様にして


パフェとコーヒーカップの位置関係に

箱ティッシュの位置。

広告用のポップやメニュー表。


そんな関係のない

テーブルの世界を訳もなく見下ろしていた。


「劣等感の同義語は妬ましさですよ……

 アタシもその感情を実は抱えています――」


そんな時、イマがいつもの淡々とした声から

微かな温度を帯びた声で語り出す。


「サキやカコ、エミィさんに対して」


「え?」


サキがイマを見上げた。


「あんなに夢を見れて……あんなに優雅に

気持ち良さそうに歌えて、上手に歌えて

感情を正直に表現できて……本当に何もかも」


坦々と、連ねていく……その“ないもの”を

サキは何も言わずに、聞き入るように

愕然としていながらも真っ直ぐに彼女の瞳を。



「ですが、その感情は決して

マイナスな物ではない――そう、思えるのは

紛れもないアナタのお陰なんですよサキ」


問い掛けが、スンッとサキの胸に入り込むと

自然に、その言葉が漏れ出た。


「……ありがとイマ……」


サキは、自分を取り戻したかの様に眉間に力を入れると

自身の頬を軽く叩いた。


「私ね多分、本当は最初から

“自分は劣っている”って、そう思っていたんだよ

2人に屋上で告白した時も、決意の証明した時も」


イマは冷静に尋ねる。


「隠していた或いは気づいていなかったって事ですか?」


「ううん……」


サキは受け応えと同時に頭を、横に振る。


「私はその時々で、確かに気づいていたし

 頭によぎってた……だけど、私はそんなことよりも

 見せたかったんだ、私の模倣(コピペ)を」


サキは目を瞑って、深呼吸をした。

喫茶店のコーヒーの匂いが

パフェの甘さが鼻に脳に澄み渡る。


「私のこの模倣(コピペ)はきっとオーディションでは不利にも有利にも働くと思う……そう思った時に最近、私

急に不安になってきちゃったんだイマ……」


目を静かに開くと、現時点での自分の悩みを

きちんと言語化することが出来た。


イマはその不安な息遣いや声色を認識しながらも

フフッと鼻で軽く笑うと口角を微妙に上げた。


「立派な悩みですね」


冷笑気味に放ちながら、パフェに手を付けたイマ。


「ちょ、急に?イマ!私、本気で悩んでるのっ!

どう思う?書類審査通るかなっ!私の模倣(コピペ)って――」


「あ……甘い……」


身を乗り出して訴えるサキを見聞きしながら

呑気にパフェを食べて、その甘さを口いっぱいに感じる


「ちょっとイマ〜?」


サキはもう一度、掬って食べようとするイマを食い止めようとパフェを自身の手元に引く。

イマは取られたパフェをジッと見て、その様子を伺う。


「真面目に聞いてよっイマ!」


サキが頬を膨らませて、焦ったそうに。

イマはその様子を面白可笑しく捉えてから

一呼吸入れて


「すみません……つい

パフェに気を取られてしまいました」


「……んで、どう思う?イマちゃん……

 私って書類応募とか、もっと先に行けるかな?」


「正直に、現実を見るとしたら――」


イマはコーヒーを口に含んでから

眉を細くさせて、トーンを落とした。


「まず、今件の応募者数を事務所の大きさや知名度と話題性、など鑑みてあらかじめ、予測はしています……

だいたい小さく見積もったところで2万人から3万人」


サキは唇を噛んで前髪に一瞬、触れる。


「ざっと……書類審査で8割落とされると仮定した場合

4000〜6000人、そこから一次審査でさらに絞られて300人、事実ベースで話すと書類審査に受かるのなんて」


「“奇跡”……だね」


「その通りです」


サキは彼女の言葉を遮って、結論を示した。

2人の間に静寂が訪れる。


サキはパフェをイマの方に戻して

座席に深く深く座った。


「ただ……大切なのは結果ではなく過程です……

 千里の道の風景をどれほど楽しめるか、どうかです」


「じゃあ、イマは元々、半ば諦めていながら

私に付き合ってくれてたの?」


サキは深く座ったまま腕を組んだ。


「いいえ、“アナタの決意と努力を見たからです”……」


イマは声を落とした。

それから続けて淡々と考えを述べた。


「まあ、現実的な話アタシ達4人で

唯一、受かるとするならば、エミィさんでしょうかね」


「そうかも……ね」


サキが虚空を見つめ、何を考えているのか

はたまた考えていないのか。

そうする内にイマはパフェを食べ終えていた。


「で、アナタはここで諦めるんですか?

応募もせずに、現実を見ることを選びますか?」


イマは席を立ち上がり、伝票を持ち

隣の座席に置いていたベレー帽を被る。


「え、そりゃ……えと…………」


サキの目には光がなかった。

即断するような問い掛けにも即断出来ずに

不貞腐れるように顔を曇らせる。


「サキ、アナタが応募せずともアタシは……

アタシは、それでも受けますから――」


イマの瞳は鋭く、ヒシヒシと覚悟が伝わる。

それを感じ取ってサキも勢い任せに立ち上がる


「わ、私も!2人を巻き込ませた張本人でもあるし!

当然っ絶対に応募して受かってやるから!!」


そして、そのサキの行動を目にしたイマは

何も言わずに衣服の皺を正して一言


「……じゃあ、まずはパフェを食べ切ってください

アタシは化粧室に行ってきますので」

 




――――

その後、一向は各々のショッピング等を楽しんだり

ゲームセンターで遊びまくったりして

あっという間に夕方を迎えようとしていた。


「明日の予定ですが、応募用の写真撮影、自己PRの作成をしましょう……あわよくば明日中に応募です」


イマが駅のホームのベンチに座る4人に伝える。

他の4人は遊び疲れ果てているのか

口数が明らかに少ないが、1人ベンチから追い出される様な形で立っているイマには関係ない。


「写真撮影について質問なのだけれど、プロのカメラマンやスタジオを用意していたりするのかしら?」


右隣のエミナがウトウトとしているのを横目に。

エミィが腕組みをしてベンチに座る。


「残念ですが、アタシ達にその様な

 資金などはありません……」


「なら、エミィが――」


「いえ、その必要はありませんよ」


イマがサキから強引に持たされた荷物を

若干重そうに持って、やんわりエミィの提案を収めた。


「アタシ達がお互いを撮影しましょう……

 その方が、アタシは好ましいと思います」


「そ、そう?スタジオなら直ぐにエミィが――」


スマホを片手に腑に落ちないエミィ。

そこでサキとカコが知らぬ間に目を瞑っている事を

エミィは理解すると、呆れた様にフフッと笑って見せた。


「その気心だけで、十分ですよ……エミィさん」


イマが正面の赤く染まる空を耽る様に静観する。

何を考えているのか考えも付かないエミィは

彼女の横顔だけを一瞥してから、その空を眺めた。


「そう、なら……せめて

 エミィの家で撮るのはどうかしら」


2人は正面を見つめるだけで、お互いを見ることはない


「それは、有難い提案ですね、是非そうさせて下さい」


エミィはエミナの寝顔をフッと見下ろして

再び、顔を上げた。


「ねぇ新岡イマ……最初からエミィの家で撮影しようと考えていたんでしょう?」


「いえ……そんな図々しい事、アタシは思案しませんよ」


イマは淡々としていた。


『まもなく〜電車が到着いたします黄色い点字ブロックの内側まで下がってお待ちくださいませ〜』


アナウンスがホームに鳴り響くと

目を閉じていた三人は自然と目を開けていく。

スローに、そして目覚めた彼女らは気だるげに立ち上がり

覚束ない足取りで停車した電車に乗り込むのだった。

次回更新は今週の金曜日5月8日 20時!


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下記のYouTubeチャンネルにて

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