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第十一章:初めての血、最初の奇跡

奴隷狩りたちの自信は石に砕かれたガラスのように粉々になった。ゴンドの待ち伏せは壊滅的な精度で展開された。隠れた位置から矢と弩が唸り、落とし穴が馬と騎手を呑み、連携した攻撃が狩人を獲物に変えた。


ゴンドは剣を抜き、戦いに加わる。鞘から現れた刃は、もはや粗雑な黒い鉄ではなかった。銀のように輝き、冬の星光のように鋭い。


「神々よ」近くの者が弓を下ろし、目を見開く。「ついに指導者にふさわしい武器を選んだな」


ゴンドは流れるような所作で戦場を駆け、刃が敵の間を舞い、足は危険な地面で確かな足場を見つけた。すべての判断が直感から流れ出る。敵が左に回り込めば、すでに反撃の待ち伏せがある。高地に退けば、弓兵が待ち構える。戦闘の流れが地図のように広がり、一手一手が必然だった。


コルヴェンは職人の精度で戦っていた。鍛冶屋のハンマーが鎧も骨も等しく砕く。大男は待ち伏せ隊への参加を主張し、鍛冶場での力が他の者には持てない武器を振るわせた。一撃で奴隷商の胸当てを陥没させ、青銅で補強された鋼鉄を羊皮紙のように潰した。


「後ろだ!」ペルが叫び、谷の入り口近くで二人の奴隷商と交戦する。


ゴンドが振り返ると、巨大な隊長の剣と刃が交わった。男の力は凄まじく、一撃ごとにゴンドを後退させる。鋼が鋼と鳴り響き、隊長の経験が計算された一撃に表れていた。


奴隷商の刃がゴンドの防御をすり抜け、太腿の奥深くまで突き刺さる。炎が脚を駆け上がり、よろめく。血が靴に溜まる。その傷は男を不具にし、生き延びても一生足を引きずるはずだった。


だがゴンドは戦い続け、動きはほとんど鈍らなかった。変化した刃が超自然的な速さで空気を切り裂く。隊長が剣を上げて防ごうとしたとき、銀の刃は鋼鉄を羊皮紙のように切り裂き、胸当てと兜の隙間を貫いた。男は後ろに倒れ、切断された武器が石の上で音を立てた。


戦況は決定的に変わった。指導者が倒れ、残りの奴隷商たちは崩れて逃げ出す。ゴンドの民は谷の端まで追撃し、雄叫びを上げて戻った。


戦いの余韻が静まる頃、ペルがゴンドに近づく。顔は青白い。「その傷は…」ゴンドの脚を指差す。血が布に染みている。「神よ、あの刃が完全に貫通したのを見た!痛みで叫ぶはずなのに、なぜ立っていられる?」


ゴンドは見下ろし、布をめくる。深い傷を予想したが、太腿に浅い擦り傷があるだけ。出血も止まっていた。眉をひそめる。


「確かに見たんだ!」ペルは頭を振り、一歩退く。「刃は深く突き刺さった。一体どうなってる?」


だが勝利に酔う間もなく、野営地への帰還は別の恐怖を明らかにした。ひっくり返った鍋、散らばる持ち物、土に残る引きずり跡。二人の奴隷商が戦闘中に忍び込み、戦えない者たちを狙っていた。主力が壊滅したと悟ると逃げていた。


だが痕跡は残っていた。


老ヘンリクが子供たちの避難所の近くに横たわる。弩の矢が体に無数に刺さる。風雨にさらされた元兵士は、守ると誓った者たちを守って死んだ。手は折れた槍を握りしめていた。近くで、若い母親が木にもたれて座る。虚ろな目が虚無を見つめ、胸の傷から血が滲む。彼女はつい二日前に避難所に来たばかりだった。


シムが子供たちの避難所の横にひざまずき、右手を胸に押し当てていた。拳は割れて血まみれ、奴隷商の剣が近くに放棄されていた。持ち主はどこにもいない。ゴンドが近づくと、司祭は苦痛の目で見上げた。


「そうするしかなかった」シムは静かに言う。声は苦悩で重い。「やつは子供たちを狙っていた。私には…」強く飲み込む。目は古い痛みで遠くを見つめる。「手首を打った。剣を落とすだけ」肩が落ちる。「でも楽にはならない」声はかすかな囁き。「楽になることは決してない」


野営地の中央で、ダックスが自らの血溜まりに倒れ、苦しげに喘いでいた。


少年の胸が荒く上下し、息のたびに唇から紅い泡が湧く。奴隷商のメイスが肋骨を砕き、骨の破片が肺に刺さっていた。一息ごとに命が削られる。


シムはダックスの横にひざまずき、負傷した手の痛みを無視して治癒力を注いだ。汗が額に玉を作り、顔が青ざめる。手が震え、煌めきが死にゆく蝋燭のように揺れる。


「だめだ」シムは息を詰まらせ、涙で視界がぼやける。「アラニィよ、お許しを、損傷が…ひどすぎる。私には…できない」手が脇に落ち、光が消えた。


生存者たちが静かな輪を作る。肩が落ち、手が口を覆いすすり泣きを押し殺す。目が死にゆく少年から逸れ、無力さに耐えられない。アリアが兄の横にひざまずき、涙が血に染まった顔に落ちた。


ゴンドは抗えぬ何かに心を引かれた。足が無意識に前へ進み、心と少年を結ぶ糸に引かれる。嘆く輪が彼の前で分かれ、顔には諦めが刻まれていた。


ダックスの横にひざまずき、手を傷の上に浮かせる。呼吸は浅く、時間がなかった。


アリアが見上げ、涙で頬が濡れる。止めようと手を伸ばす。


「彼にやらせろ」シムが静かに言い、彼女の手首を掴む。目はゴンドの顔から離れない。


ゴンドは手のひらをダックスの胸に置き、目を閉じた。最初は何もなかった。血のべとつきと、手の下で衰える心臓のリズムだけ。


*アラニィよ*心の中で祈る。*もしそこにいるなら、これが本当なら、彼を救うのを手伝ってくれ*


やがて、夜空の最初の星のように、存在を意識する。生命の火花、死にゆく燃えさしのようにかすか。ダックスの本質が体にしがみつき、闇に滑り落ちかけていた。


ゴンドはその火花を心で包み、冷たい炉の石炭に息を吹きかけるように想像した。少年が完全である姿を思い描き、幻想にすべてを注ぐ。


火花が燃え上がり、炎となる。


突然、ダックスの生命力が野火のように爆発し、ゴンドの意識を押し戻す。黄金の閃光が手から溢れ、野営地全体を照らした。


少年の傷が閉じ始める。骨が音を立てて繋がり、肉が修復される。血が逆流し、傷が消えていく。


灼熱がゴンドの腕に流れ、手のひらが焼けるように熱い。力が稲妻のように駆け抜け、筋肉を震わせ、息を鋭く喘がせた。


視界が白くなり、治癒の繋がりが断たれる。意識が戻ると、よろめきながら手を離した。指先は残る暖かさでうずき、口の中に甘さが残る。


視界がはっきりすると、ダックスが起き上がっていた。手が傷のあった場所に動き、無傷の肌だけが残る。目は澄み、痛みも怪我もない。


息一つ動かぬ静寂。風さえ止まり、自然が息を呑む。火の燃えさしの音が、絶対的な静寂の中で響いた。五十人がゴンドを見つめ、畏敬と恐怖、崇拝の表情。黄金の光は消えたが、記憶は目に焼き付いていた。


「アラニィの慈悲よ」誰かが囁く。


「奇跡だ」別の者が息を漏らし、ひざまずく。


年老いた女がアラニィの円を指で作り、唇が祈りを紡ぐ。若い父親が子供を抱き寄せ、驚きと恐怖で目を見開く。何人かは後ずさり、他は前に押し寄せ、聖なる力に触れようと手を伸ばす。


ゴンドはよろめき、地面に座り込む。震える手を見つめ、否定も合理化もできなかった。流れた力は神聖で、その性質も範囲も疑いようがなかった。


シムが近づき、顔が輝く。「今度は信じるか?」優しく尋ねる。


ゴンドは手を見つめ、燃える光の記憶にうずく。神殿、幻視、声のことを思い出す。すべての兆しがそこにあったが、見ようとしなかった。


「信じる」息を漏らす。認めることで魂の重荷が下りた。続けて、祈りのように呟く。「信じる、アラニィよ、助けてくれ」


司祭は微笑み、肩に手を置く。「彼女はすでに助けている、友よ。」


ダックスが立ち上がり、ゴンドのもとへ歩く。顔は年齢を超えた厳粛さ。「ありがとう」と短く言い、ひざまずいてゴンドの手にキスをした。


「頭を上げろ」ゴンドは慌てて言う。「俺は神でも王でもない」


その仕草がゴンドの胸の何かを壊した。少年を立たせ、民の顔を見回す。今や彼の民だった。信仰と奇跡と黄金の光で結ばれていた。


彼はアラニィに選ばれ、力を授けられた者だった。望んだかどうかは関係ない。


人々が歌い始めた。天に昇る賛美歌、抑圧された者の希望と正義の約束。ゴンドはその中に立ち、もはや運命と戦わず、受け入れ、神の目的という重荷と祝福を担う覚悟ができていた。


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