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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第2章 友情の涙 (清華視点)
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2-29. ダンジョン大会練習

ダンジョン大会に出るということで、私達はいつもより練習時間を増やすことにしました。具体的には、朝7時から朝練にして、これまで放課後にやっていた訓練を朝の時間に回しました。そして、放課後は、魔獣狩りの予行練習に充てることにしたのです。

その初日の放課後、まずは三枝先生に借りた探知器の使い方を練習しました。持ち歩いて使いやすいようにと、潤子さんは、前から持っていたタブレットPCを学校に持ってきてくれました。それにソフトをインストールして、探知器を付けると良い感じです。部室の隅で計測すると、ちゃんと部員のところにマークが出ました。

「これで大きさまで分かると、人と魔獣の区別が付きそうじゃないかな?」

柚葉さんが潤子さんの方を見ました。

「うーん、そういう風に改造できるかな?まあ、先生に聞いてみるよ。でも、まず今日はこれでやってみよう」

「はい」

私達は、近くの戸山ダンジョンで、探知器を試してみることにしました。手押し車は、学校にリヤカーがあったので、お願いして、ダンジョン大会まで貸していただくことができました。

それで、その手押し車に柚葉さんと私を除いた4人分の盾と剣を載せ、戸山ダンジョンまで曳いて行きました。


戸山ダンジョンに着いて、潤子さんが受付したとき、リヤカーを持ってきた理由を聞かれたようでした。でも、ダンジョン大会に出るのでと説明したら、納得して貰えたようです。

私達は準備を整えて、ダンジョンに入りました。先頭は、経験者の佳林、次に探知器を持った潤子さん、リヤカーを引いている礼美さん、最後が百合さんの順です。柚葉さんと私は、そのあとに指導員代わり兼アドバイザーとして付いていきます。

ダンジョンに入ってすぐ、潤子さんが探知器を動かしました。

「ここだと、通路が狭いし曲がっているから、あまり先が見通せないな。もっと先に行ってみよう」

「魔獣はいませんか?」

「カーリン、カーブの少し先までの範囲ではいないな。ここだと、ライトの届く範囲とあまり変わらないよ。いつものように注意して進んでくれたまえ」

「分かりました」

佳林は、いつものように警戒しながら進んでいきます。

しばらくすると、開けたところに出ました。

「潤子さん、ここではどうですか?」

「開けていると、良く分かるな。右斜め向こうに一体、左奥にもう一体いそうかな?人かも知れないが」

「近いのは右の方ですね、まずはそちらに向かいます」

柚葉さんも私もどうなっているかは分かっているので、もどかしい気持ちもあるのですが、言ってしまっては練習にならないので、黙っています。そう、私だって柚葉さんに遠隔探知を教えて貰ってから練習したので分かるんです。

「潤子さん、右側のは、もしかしてこれですか?」

佳林の前には、大きな岩がありました。

「ああ、そうだな。それが引っ掛かってしまったらしい」

「では、今度は左の方に向かいますけど、他に見付かっているものはありますか?」

「ここから見える範囲では、他にはないな」

「分かりました。進みます」

佳林が先頭に立って進んでいきます。そして、そちらの方には魔獣がいました。

「魔獣です。礼美さん、リヤカーを置いて攻撃の準備をしてください。潤子さんも」

「オッケー」

「私も了解したが、機材を置くのが面倒だな」

そうは言いつつも、潤子さんも剣と盾を持ち、攻撃の準備をしました。

相手は中型のイノシシのようなもので、佳林が盾で突進を受けたところを、横から百合さん、潤子さんが剣で首筋を刺して、難なく斃しました。そして、倒した魔獣を袋に詰めて、リヤカーに乗せました。

「一体倒せたが、これからどうしようか?」

「探知器には、何か反応は無いのですか?」

「残念ながら、ここからだと先程の岩以外の反応がないよ」

「では、奥にいく通路があるので、それを進みましょう」

佳林は、そこから奥にいく通路を進んで行きました。そして、もう一体の魔獣を見つけて斃しました。4人掛かりだったので、5分も経たずに難なくたおすことができています。

しかし、2体目を袋に詰めてリヤカーに乗せた時点で25分を過ぎていました。

「潤子さん、時間からしてそろそろ戻らないと45分に間に合わなくなるかもしれません」

「確かにそうだな。よし、来た道を戻ろう」

一行は、佳林を先頭にして来た道を戻ります。一度通った道とはいえ、あとから魔獣が来ているかも知れず、どうしても慎重になってしまいます。入り口に戻ったときには、40分を過ぎていました。

「時間的には、大体こんなものか。皆、お疲れ様。部室に戻って反省会をしよう」

うむむ、今回は柚葉さんと私の出番が何もなかったですね。皆危なげなく動いてましたし。戸山ダンジョンに何度も通った成果でしょうか。

「柚葉さん、今回私たち出番がありませんでしたね」

「そうだね。でも、戦っているときにハラハラすることが減っているのは良いことじゃないかな。もっと良い防具を使えば、動きも良くなりそうだけど、まだ高校生で使えるお金も少ないから仕方がないよね」

「そうですね。そこまで本気でダンジョンに挑むなら装備を良くすることは考えられますが、まだ高校生ですからね」

柚葉さんと私は、お互いの意見に同意して、頷き合いました。



皆で部室に戻ると、今日の魔獣狩りの反省会を始めました。

「皆、解決できるかどうかは分からないが、思ったことは全部言ってくれ。まずは、カーリンからで良いか?」

「はい、そうですね。行く方向を、毎回潤子さんと相談しないと決められないのが少しもどかしかったように思います。あと、魔獣を見つけた時、潤子さんや礼美さんの準備を待つ時間が惜しいかもしれません。それから、道に迷うことを考えると、地図が欲しいですね。戸山ダンジョンは慣れてきているので、私たちが入れる辺りの道は覚えていますけれど、東京ダンジョンは分からないですから」

「なるほど、考えてみよう。次にレミーはどうだ?」

「佳林ちゃんに言われてしまいましたけど、リヤカーを押していると、魔獣を見つけてから準備をするのにどうしても時間が必要ですね。だけど、リヤカーは必要ですし」

「そうだな、ユーリはどう思う?」

「私も、魔獣を早く見つけるためにも地形を把握しておいた方が良いと思うのと、魔獣を見つけてから戦うまでの時間を短くできればと思いました」

皆、大体考えていることは同じようです。

「柚っちとサーヤは見ていてどうだった?」

「皆、戦いに慣れてきてるので、今日くらいの魔獣なら、先に佳林ちゃんと百合ちゃんで攻撃を始めても良いんじゃないかな?二人で攻め切れなければ、潤子さんや礼美が後から参加すれば斃せるだろうし」

「時間効率を考えると、それが良いかな。どうだカーリン、それでできそうか?」

「はい、まずは百合さんと私で攻撃を始めるのでやってみたいです」

「良し分かった。では攻撃の手順はそれで行こうか。東京ダンジョンの地図は今度の土曜日に一度東京ダンジョンに行ってみて、売っているか確認しよう。それから探知器のことについては、三枝先生に相談したいと思う。それでどうだろう」

潤子さんが皆を見回したが、誰からもコメントはありませんでした。皆、それで良いと考えたのでしょう。

「異論は無さそうだな。では早速三枝先生のところに相談しに行こうと思うが、カーリン、一緒に来てもらえるかい?」

「分かりました」

潤子さんと佳林が、探知器の道具一式を手に持ち、部室を出て三枝先生のいる物理科の教官室に向かいました。

「潤子さん、気合い入っていますね」

礼美さんは、潤子さん達が出ていく後姿を見送った後、私たちの方に向きました。

「そうですね。もう5月ですし、そろそろ部活動からの引退も考えているのではないですか?そうすると、このダンジョン大会が最後のイベントになりますから、例えお祭りの余興みたいなものだったとしても力が入ってしまうのだと思います」

「ですよね。三年生は一人で頑張って来た潤子さんのためにも、思い出に残せるような大会にしたいですね」

百合さんも気合が入っているようでした。


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