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第28話 回せ、PDCA!

オリバーは、すーっと血がひいていくと同時に、

足に力が入らなくなるのを感じた。

まるで冷水に浸した、重い毛布を被せられたかのように

大気に冷たく押し潰されるかのように

眠気にも似た灰色のなにかが

体の自由を奪い思考を覆っていく。

絶望的に広がる虚脱感の中で


ふわり


額に少しだけ暖かみが舞い降りる。


しかし、オリバーが

まるで暗い冷たい海の底に引きずり込まれるように落ちていくのを押し止めるような力はない。

わかっている。

死にはしない。


死を先に延ばすための、眠りなのだから。


『パーパ』


ああ、失望に満ちた声が聞こえる。


『なんで?』


本当にごめん。


『約束したのに。』


約束したのに…


たぶん、レイリークの祝福の力だろう。


普段は抗えない意識の喪失を

ほんの少しだけ先のばしにてきたのは。


暖かい頭が、ぐりぐりと押し付けられた。


『ふぇぇっ…っうあぁあ…うっ…』


熱気が布団の中にこもる。


くっついて、嗚咽をもらし、泣く小さい子供。


本当は抱き寄せて、頭をなでてやりたかった。


ごめんね。アスラン。


オリバーは、抗えずに眠りに落ちていった。



『ねぇ。このシステム、やめませんか。』


次の日、オリバーは、シッキムとレイリークに申し出た。


『あまりにも…あまりにも、不便です。』


二人は、顔を見合わせた。

そして、レイリークはあっさりと頷いた。


『わかりました。』


『え。』


『プランBに移行します。』


『プランB。』


『はい。

プランAを実行した結果を反映したプランBです。』


『反映…。』


『アスランを泣かせない、プランBです。』


『…ありがとうございます。』


オリバーはちょっと涙ぐんだ。



『起きている時間を現在の二倍に拡張します。

それでも、一日の三分の一程度ですが。』


『二倍に!』


『これは、オリバー様の心身の修復が、プランAによってだいぶ進んだ為に可能になりました。』


『良かった‼』


『さらに、イルハン様から可能な限りの魔力供給を受けます。』


『可能な限り…。』


『これは、イルハン様にも説明いたしましたが、

限度を越えた魔力の貯蓄は、体に負担をかけます。』


『そうなんだ…。』


『そして…最近判明した、私からの魔力供給もわずかではありますが、お役に立てるでしょう。』


『真実の…』


『それです。』


ふたりのやりとりを見ていたシッキムは

けたけたと笑いながら口を挟んだ。


『それと、筋トレしてもらうよ。』


『筋トレ…』


『やっぱり、人間は体が資本だって、痛感したよ。』


シッキムは、オリバーの不健康に細い腕をみた。


『どんなに魔法だとか精霊だとかに近寄っても、人間であることを辞めちゃだめだよ。』


オリバーは、自分の腕を見た。


『たしかに、ちょっとよくないかも。』















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