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第5話 身分証の発行と斡旋ギルドの登録

「――この建物が斡旋ギルドだよ。私は次の仕事があるのでここまでですが、紹介状を提示すれば話はスムーズに進むと思います。では、君に幸運がありますように」


 ダイムはそう言って俺に笑みを見せ、俺が馬車から降りたのを確認すると馬車を発車させた。その後ろ姿に頭を下げながら俺は礼を言った。


「色々とお世話になりました」


 ダイムの馬車が見えなくなると俺は意を決して斡旋ギルドのドアを開けた。するとカランカランと小気味のよい音がホールに響き渡った。


「いらっしゃいませ。斡旋ギルドへようこそ。本日はどのようなご要件でしょうか?」


 ギルドに入ると案内係の女性が笑顔で用件の確認をしてくる。


「今からギルドへの登録と仕事の斡旋をお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」


「新規登録と仕事の斡旋ですね。ではあちらの一番のカウンターにて手続きをお願いします」


 流れるような案内に感心しながら一番カウンターに向かった俺はバルドから預かった紹介状を受付嬢に渡した。


「紹介状ですか。内容を確認させて頂きますので少しお待ちくださいね」


 受付嬢は紹介状の主を確認して町長からだと分かると慌てて奥の部屋に誰かを呼びに向かった。


「――お待たせしてすみませんでした。ギルドマスターからお話があるそうなので奥の応接室にお願い出来るでしょうか?」


 数分で戻ってきた受付嬢はギルマスの指示を受けて僕を応接室に案内する。部屋に入ると正面のソファにひとりの男性が座っているのが見えた。


「やあ、君がバルド殿からの手紙に書いてあったナオキ君だね。私はこの斡旋ギルドのギルマスをやっているラーズという者だ。なんでも神木の地から来たと言うじゃないか。神様から授かった能力はかなり特殊だとあるけど、どんなものなんだい?」


 ラーズの質問に僕は正直に答えた。


「治癒魔法士の能力を授かりました。ただし、治せる対象が女性限定になりますが……」


「ふむ。女性限定ときたか。それに、治癒魔法士なんて職業は聞いたことないな」


 大きなギルドの管理者であるラーズでさえ聞いたことのない職業か。本当に珍しい能力なんだな。そうだ、せっかくだから聞いてみるとしよう。


「あの……」


「ん? 何か質問かい?」


「この辺りでは『魔法』って普通に使われているものじゃないんですか?」


 僕は前から聞きたかった事を思い切ってラーズに聞いてみた。


「普通……ではないな。確かに能力は限定されるが魔法を使う魔道士という職業の者は存在する。だが、極めて珍しい職業で大抵は王家に抱えられているか、少なくとも大貴族にしか居ないはずだ」


「治癒魔法の使い手は居ないんですか?」


「そうだな……。魔道士ならばいくつかある魔法の中に使える者が居るかもしれないが、効果は薬治療に毛が生えた程度と聞いたことがあるな。あと、王都に聖女様と呼ばれる女性が居られるが、その方が使えると聞いたことがあるくらいだな」


「その聖女様は治癒魔法士ではないのですか?」


「聖女様は聖女様だろう? 聖女様の務めは神に祈ることだ。そして我々に神託を授けてくれるのが主の職務だ。聖女様の治癒は他に類を見ないレベルだったらしいが、自らの生命力を削るとの事で過去に一度しか使った事がないそうだ」


「では、皆さん怪我や病気になった時はどうしてるんですか?」


「薬師に調薬してもらうのが一般的だな。

 だから君の治癒魔法とやらが使える能力だったら是非とも当ギルドで活躍して欲しいものだな。バルド殿からも君に仕事を斡旋してやって欲しいと書いてあったし、まずは登録をしてもらおうか」


 ギルドマスターはそう言うと近くに控えていた女性の名を呼んだ。


「リリス君、彼の登録手続きをしてやってくれ。その後、仕事の斡旋を頼んだぞ。まあ、頑張ってくれ。何かあったら相談にのるからな」


 そこまで言うとバルドはリリスと呼んだ先程の受付嬢に任せて部屋を出て行った。


「では、新規登録の手続きを致しますので先程のカウンターにお越し頂けますか?」


「あ、はい。わかりました」


 僕はリリスに促されて一番カウンターに戻った。


「――では、この書類に必要事項を記入してください。何か不明なところや質問があれば何でも聞いてくださいね」


 リリスはそう言いながら登録用紙を俺の前に置く。


「名前は、ナオキで職業は治癒魔法士、出来ることは治癒全般、注意事項は女性しか治癒出来ない……っと。これくらいかな?」


「書かれましたか?」


 リリスが書類を確認する。


「ええと、先程も聞きましたので知っているつもりですが、念のためにもう一度だけお聞きしておきます。魔法で治療するけど女性にしか使えないでしたね。もう少し具体的に治療方法を教えてもらっても良いですか?」


「はい。わかりました」


 僕はそう言うとリリスに治癒魔法の使い方の詳細を説明した。


「………。」


「どうかされましたか?」


 説明を聞いたリリスはこめかみを押さえながら難しい顔をしていた。


「一応規則ですから、募集はかけますが治療方法の説明はご自分でなされてください。説明を了承されたら実際に依頼を受諾した扱いになり、報酬も発生します。もし、説明の段階でキャンセルされたら契約は無効となりますのでご注意くださいね」


「はい、わかりました。宜しくお願いします」


「では、明日以降定期的にギルドに顔を出すようにしてください。もし、依頼がありましたら声をかけさせて頂きますので」


 リリスは深くお辞儀をすると俺を見送ってくれたのだった。

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