第六話
「ついにお出ましだな」
俺の現在の住処である、町の地下道に轟音が響き渡る。
これは俺に取ったら出勤の合図だ。
「今日も叩き潰してやるよ……エイリアン! 正義の名の下にな!」
俺は足早に町中に向かった。
ーーーーーーーーーーー
「荒れてるねぇ……」
俺が到着すると、町は瓦礫が散らばっている悲惨な状況だった。
住民は避難しているのか、死んだのかは分からない。
しかし、不意に子どもの泣き声が聞こえてきた。
「うわぁ~ん!! お父さん!! お母さん!!」
あんまりデカい声出すと危ないんだがな。
それだけ怖いのだろうが、まずは町をこんなにした犯人を……ん?
「グルルル……」
なんだ? あのエイリアンは? いつもと違うぞ。
いつものエイリアンは、全身紫の肌に細マッチョな全身剥げた身体、黒目塗りのデカい目をした、いかにも宇宙人と言う外見だった。
だが今回の奴は、全身緑色で、竜のような頭にゴリラのような体つきだった。
体格も俺よりデカく、まさに怪獣だった。
エイリアンは泣いている子供の背後から殴りかかる。
「危ねえ!!」
俺はとっさに子供……女の子を庇うと、彼女を抱えたまま殴り飛ばされ、瓦礫の山に叩きつけられる。
「だれだ……?」
俺は瓦礫の中から顔を出して瓦礫の山から降りると、気絶した女の子を地面に寝かせる。
「俺はハンザキ! 正義の大怪獣になるんだ!」
「正義の大怪獣だと……?」
それを聞いた謎のエイリアンは笑う事も恐れる事も無く、感心したように拍手する。
「なるほど、お前が噂に聞くエイリアン殺しのハンザキか……」
「何を嬉しそうにしてんだ……?」
「この町を荒らしたかいがあったと思ったのさ。何せ俺の殴打を食らって平然としている生物は、この星にいない筈だからな」
手応えがありそうな獲物を見つけて喜んでいるようだが……
「俺はお前をブチのめす。それだけだ」
「面白い。俺は竜王星ナンバー3、"バルガー"だ! 受けて立とう!」
何処の星かは知らねぇが、ブチのめしてやる。
「うおおおお!!」
俺は踏み込んで一気に距離を詰めると、バルガーに懇親の一撃を打ち込んでいく。
バルガーはそれを手の平で受け止める。
「ふんっ!!」
バルガーは俺の拳を払いのけると、強烈なアッパーを繰り出す。
俺も負けじと、両腕でアッパーをガードするも、身体が浮く。
俺は身体を後ろに回転させ、地面に着地する。
「中々の一撃だ。ガードをしたが、手にダメージがある」
「ならどうする? 降参するか? 手が使えなくなるぜ」
俺の拳の威力は全てを粉砕する。
手でガードしようもんなら、いずれ負傷するだけだ。
「愚問だな。面白いと言う事だ!」
「……!」
バルガーも踏み込んで一気に距離を詰めると、巨大な拳を叩き込んでくる。
俺は間一髪でガードしたが、そのまま百メートルは吹き飛ばされた。
辺りは破壊された瓦礫の欠片と大量の砂埃が舞う。
「……!」
「んん……!」
俺が身体を起こして上を見ると、バルガーがハンマーのように両拳を振り下ろしてくる。
俺を凌ぐ巨体とは思えないスピードだ。
「おっと……!」
俺に鉄槌をスレスレで避けられたバルガーは、すぐさま距離を詰めてくる。
「オラオラオラオラァ!!」
バルガーは目にも止まらない速度で激しい連打を俺に打ち込む。
相当な威力だ。
普通の生物なら、ガードの上から消し飛んでいるだろう。
「良いね。こんなに手応えのある"悪"は初めてだ!」
この世界に転生してから、怪獣と言う憧れの肉体を手にしたし。
前世に映画で見たような「正義の大怪獣」と言う目標も出来た。
だが、この怪獣は強すぎた。
弱い人を襲う魔物や盗賊、そして世界を脅かすエイリアン。
様々な「悪」を駆逐してきたが、全て一方的にだった。
場合によっては一撃で片付く事もあった。
そのうち俺は思った。
これは「正義の大怪獣」のする事なのかと。
むしろ自分より弱い奴を倒して正義面している俺は、弱い者いじめをしている「悪」と変わらないんじゃないかと。
「だが、今回は違う……」
「……?」
猛攻を凌ぎ、俺はバルガーと対峙する。
「俺はハンザキだ……今から"正義"を執行する!!」
俺は口を大きく開くと、口内にエネルギーを集中させる。
すると、口内に光の玉が出来ると、徐々に大きくなっていく。
「……!! させるか!!」
バルガーは攻撃させまいと、一気に踏み込んでくるが、発射準備完了だ。
「喰らえ!! 全力ビーム!!」
まさに怪獣のように、俺の口から光線が発射され、屈強で巨大なバルガーを焼き尽くした。
丸焦げになったバルガーは絶命。
俺の勝利だった。
ーーーーーーーーー
「……」
目を覚ますと、俺は地下道にいた。
あれ? これまさか、夢落ち?
ガシャーン!!
だが、先程と同じく崩壊音が鳴り響く。
見に行くと、夢の中で出てきた「バルガー」によく似た風貌のエイリアンが何やら叫んでいた。
「俺はバルガーだ!! 人間どもを皆殺しに来た!!」
なんだアイツ? 夢で見た奴と同じ名前だが、サイズが全然違うな。
しかも華奢だし。
しかも、ここはエイリアンの被害があって、住民は誰も住んでいない地域だ。
「何やってんだ? あいつ」
まぁ、万が一誰かに手を出したら良くないから倒しとくか。
「覚悟しろ人間ども!! 早く出てきやが……グハッ!!」
後ろから軽くゲンコツを浴びせたつもりだが、エイリアンは意識を失った。
「……死んだか?」
調べてみたら、意識を失っただけのようだ。
軽いゲンコツとは言え、俺の一撃で死なないとは以外と頑丈なんだな。
「取り敢えず縛っとくか。何か役にたちそうだし」
俺は意識を失ったエイリアンを、担ぎ上げると、地下道へと戻った。




