第235話:一回目の世界
「一回目の世界。私たちは、創造神を殺したさね。」
そう告げたエミルさんは、静かに、その世界のことを語り始めた。
ーーー
創造神。彼はこの世界を一から作り直すことを望んでいる。
つまり、この世界を壊すつもりなのだ。
それに立ち向かうため、作られたのが冒険者協会。
表向きは、冒険者を総括する組織だが、裏では、強き者を厳選するための組織だ。
それを作ったのは空神カオス。彼が、冒険者協会を立ち上げた。
創造神が復活する時、彼の集めた勇気ある者たちが集結した。
ラーファルト・エレニア。
サナ・ラスファント。
その他、フローハットの面々。
ジェット・ノイル。
ミル・ルインド。
死闘の末、創造神を殺した、その瞬間、世界は神話大戦が終結の時代まで遡った。
ーーー
「これが、一回目の世界での話さ。」
「一回目の世界.....その記憶をどうしてエミルさんは引き継いでいるんですか?」
とサナが質問した。俺も、それは話を聞きながら思ったことだ。
「創造神との距離の問題さね。創造神が死んだ瞬間の距離。基準よりも近ければその記憶を引き継ぐさ。」
「でも、それって創造神にとって不利ですよね?」
「ええ、まあ。そうさねぇ。」
「この世界のルールは創造神が決めたのにそんな不利な条件をなんで定めたのか.....」
いや、むしろ逆か。
「不利な条件がなければ生き残れない程追い込まれた。」
「そうさね。あの時は、封印明けでまだ万全じゃなかったさね。だから、討ちとれたのさね。そして、二回目の世界の今、創造神は死を回避するために動いているさね。」
話が繋がった。
「だから、創造神は俺を、いや、俺たちを狙っているんですね。」
「そうさね。ラーファルト・エレニアを最優先に、その周囲の人々もさ。」
そして、実際のところそれは一部成功している。
例えば、ジェットだ。彼は魔神聖によって殺された。
「でも、今も封印されているんですよね?それでも、活動はしていると?」
「そうさね。創造神が封印されているのは、世界樹。それ故に封印は全世界のどこからでも漏れ出す可能性は存在するさね。」
漏れ出す。これは、フィックス先生にも来た、声のことなのだろう。
この声によって、人を誘導。または、神話時代の仲間を扇動し、俺たちにぶつける。
「封印が漏れ出すせいで、二回目の世界は一回目と全く違う。そのせいで全ての動きは読みきれないさね。」
「でも、エミルさんはそれとは別に未来が見てるんですよね?」
サナはそう聞いた。俺もそれは聞いている。初めに未来が見えると言っていた。
「ええ。そうさね。ただ、その精度は100%じゃないさね。せいぜい85%程度さね。」
「その誤差ってどうやって生じるんですか?」
「そうさね.....私の見るミライは、計算によって導かれるさね。つまり、力量が見立てと異なるときとかさね。例えば、今の創造神。」
今の創造神?
「一回目の世界と同じじゃ?」
「違うさね。一回目の世界は封印が解けた直後。それに対して今は、封印中も活発に動いてるさね。」
封印されていても活発に動く。一見矛盾だ。
ただ、そのぐらい規格外の力の持ち主であることは間違いない。
『封印が漏れ出た例の予想ですが、恐らく、マスターも体験したことがあります。』
え、俺も.....??
『はい。呪いの森での出来事。あれは、世界樹の根ですから。』




