アナの扱い方
アドレアさんを治してからオレとアナだけダドさんのところに帰ってきた。
「ダドさん、アナの能力で魔女の呪いが治せたよ」
「おお、それは良かったです」
これでダドさんに任せた人の妹さんも治せるけど……。
「ダドさん、さっき言ってた人の妹さんだけど居場所はわかるの?」
「いえ、何も聞いていません。さきほどのダークエルフの方はお礼のためここに戻ってくるとだけ言っていました」
ダークエルフの人なんだ。ただ、居場所がわからないと戻ってくるまでどうしようもないな。
「ヒーロよ。普通に会話しているがヒーロの後ろにくっついている精霊はいつまでくっついているんだ」
「うーん、オレも聞きたい」
アナは今もごく自然にオレのうしろから抱きついて何かをつぶやきながら首のところのニオイを嗅がれている。なんか前にも似たようなことがあったな。
「アナ、そろそろオレから離れて欲しいんだけど」
「ヒーロさまぁ……ヒーロさまぁ……」
「アナ!」
「はっ……ヒーロ様、何か御用でしょうか?」
「いや、そろそろ離れて欲しいんだけど……」
「うぅ……私はもういらない子なんですか?」
えぇぇ、なんで離れて欲しいと言っただけでいらない子になるんだよ。もしかしてこの子は今まで会った子の中で一番ヤバイ可能性が……。
「いらなくはないよ。ただ一回離れて欲しいだけで」
「なるほど、わかりました!」
アナがそう言うと、なぜかアナはオレの前に周り腕を首にまわした状態のまま腕を伸ばした状態でオレと向かい合った。
「ヒーロ様、離れました!」
いや、たしかに距離的にはさっきから離れたけれども! この子ヤバイ……どう扱っていいのかわからない。
『マスター、もう我慢の限界です。私がなんとかします』
「おい、アナという精霊! ヒーロが困っておるだろ。ふざけているのなら我も手を出すぞ」
「やれるもんならやってみなさい」
あぁ、2人にケンカ売っちゃった。アナの能力を全部知ってるわけではないが、実力はダドさんと同じぐらいだと思うから死にはしないだろうけど。
『では、いきましょうか』
「そうだな、我々にケンカを売ってただで済むとは思うなよ」
「2人ともほどほどにな」
「えっ!? ちょっ――」
オレがそう言うとミコが一瞬でアナを咥えウィネとともにこの部屋から出て行った。50層にあるトレーニングする空間にでも行ったのだろう。
「はぁ、変わった子が出てきたな」
「ヒーロさん、あの精霊さんは大丈夫ですの?」
「まぁ、ウィネがいるからうまいことやってくれるだろ。あと回復系の能力も持ってるから自分で治すだろうし」
それよりもダークエルフの人の妹さんだな。早くしないと間に合わないような気がするが。
「ダドさん、ダークエルフの人の妹さんは魔女の呪いになってからどのくらいなの?」
「2カ月ぐらいとおっしゃっていましたね」
「えっ!? 2カ月も経ってるの!?」
「何やら妹さんは特殊な能力をお持ちだそうでそれでなんとか進行を遅らせているそうです」
へぇ、どんな能力なんだろう。
「それじゃ、急がなくても大丈夫か」
「えぇ、そうですね。おそらく戻っては来ると思うのでそのときでも」
「ただ、戻ってくるのはいいんだけど今回森で死にかけてたんだよね。次も危ないような気がするけど」
「たしかにそうですね……」
グーモンスの森は弱い魔物が淘汰されて結構強い魔物が増えてきている。例えばオーク3匹がチームで動いているような魔物も出てきているのでこの森はなかなかな魔物の巣窟になっている。
ダークエルフの人が帰るときはウィネが魔物を威嚇して帰られるようにしてあげたはず、ウィネが森で力を解放したことには気づいていたのでタイミング的に間違いない。
「グーモンスの森に人族が入ったら気づけるからそのときに迎えに行けばいいか」
「ありがとうございます。そうしていただけると助かります」
「どんな感じの人だった?」
「イーリスさんというダークエルフの女性で、髪は長めの銀髪でした。背はヒーロさんと同じぐらいですね」
「了解。それだけ聞けば間違うことはないでしょ」
そうこうしているうちにミコとウィネとアナがこの部屋に戻ってきた。アナは浮きながら肩を落としている。
『マスター、わからせてきました』
「ヒーロよ、アナと話をまとめてきたぞ」
「うぅ、何なんですかこの人たちは。なんで私の【 万物遮断 】でも攻撃が通るんですか」
なんとなく名前からどういう能力かは想像できるが、やはりアナは別の能力も持っていたか……この子はサポート系なのかな。
「で、どういう感じにまとめたの?」
「我がアクセサリーを用意するから普段はそのアクセサリーに宿ることになったぞ」
「そのアクセサリーは誰がつけるの?」
「もちろんヒーロに決まっておるだろ」
ですよね。人の身につけるものを勝手に増やさないで欲しいけど今回は仕方ないか。
「今夜ヒーロ様と交配ができてヒーロ様の近くにいられるならアクセサリーで我慢します」
「ん?」
いまアナが何か言ったような気がするけど……交配って何の話?
「ヒーロよ、アナもヒーロとしたいと言ったから今夜相手してやってくれ」
「ヒーロ様、今夜はお願いします。頑張って交配しましょうね」
「交配って……アナは受粉したりするのか?」
「もぉ、ヒーロ様ったら。ヒーロ様との子は成したいところですが私は精霊ですからそこは無理ですよぉ」
それじゃ、交配っていう言い方よ。花の精霊だから受粉でもするのかなって思ってしまった。
というより、オレの意思は! 自然と今日会った子とすることになってるけどウィネに任せるとそのあたりが緩くなるからな……というよりどこでするんだよ。
「場所はどうしようか……家だとミコがいるけどミコも一緒にするのか?」
『アナが最初は1人のほうがいいと言ったので、仕方ないので私は庭で寝ます』
ミコまで話をまとめてるあたりウィネはすごいな。
そのウィネはアナが宿るためのアクセサリーを作るためにすぐに自分の部屋に戻っていった……あいつは本当に面倒見がいいな。
「あわわわ、とうとうヒーロさんの恋人に精霊の方まで増えましたわ」
ヘルミーのいう恋人の定義がいまいちわからない……告白も何もしていないんだけどな。
とりあえず恋人になるらしいアナのことを少しでも知りたかったのでウィネが戻るまでオレはアナと会話でもしておこう。
「アナ、ものすごく気になっていたことがあるんだけど……あの花ってものすごく虹色でキラキラしてるけど、その精霊であるアナ自身に虹色要素が1つもない気がするんだが」
「あれは見つけていただくためにあの色になっているだけで私自身は黒色が好きです」
ただそれだけのためにあのキラキラなのか。まぁ、オレが見つけられたのもキラキラしてたから目に入ったと考えると理にかなっているのかな。
「アナの服からなんとなく力を感じるけど気力でできてるのか?」
「はい、精霊の服は特殊で自分の好きなように変えられます。ちなみに、下着も黒色です!」
服が作れるのはミコも似たような力を持ってるからいいんだけど思っていたよりも黒色が好きだったな。
「アナって花の精霊なのにアクセサリーでも宿れるんだな」
「普通の精霊には無理ですよ」
「えっ、そうなの?」
「私の能力の【 宿場選択 】で、発見者の所有物であれば宿るモノをなんでも選べます」
この子何気に凄いのか……いまもオレのことをなんとも言えない目で見てるが、いろんな意味で凄いのは間違いないな。
そしてアナと何気ない会話をしているとウィネが手に何かを持って戻ってきた。
「ヒーロ、我からのプレゼントだ」
「プレゼントって、間違ってはないけど……ペンダントか」
ウィネから手渡されたのは革っぽい紐でペンダントヘッドには1円玉サイズのキレイな黒色の石がついていた。
「では私はそちらに宿りますね――――私に『 宿場選択 』」
アナが言っていた力を使うとその場から消えペンダントからアナの力を感じるようになった。
『ヒーロ様、これでいつでも一緒にいられますね』
『頭の中で話せるんだな』
『はい! ちなみにですが、私が宿ったことでヒーロ様は私の力の恩恵を受けます』
『恩恵?』
『ケガをすれば私がすぐに治しますし、危害を加えられそうなら結界で守ります』
なるほど、それは助かるけど……いまはほぼそのケースになることがないな。
『トレーニングのときはオフにすることはできるのか?』
『はい、大丈夫です』
『それはありがたいな』
『では、今夜はよろしくお願いします…………ぐへへ、楽しみです』
せっかく普通に会話できていたのに、最後の最後で本音が漏れてしまっている。




