待ち焦がれた瞬間
ロリアデラ視点です。
ヒーロさんと実戦を行った後自室に戻ってきました。
ヒーロさんが明日を楽しみにしておくように言っていましたが何をされるのでしょう。
「それにしても久しぶりに楽しめました――もう1000年以上ぶりになりますか」
ソファに座り久しぶりにある程度の力を出して体を動かしたことで充足感を味わっていました。
それにしてもあのような者が人族大陸にいたなんて恐ろしいですね。
あのサキュバスのウィネさんは今の私より少し下でしょうが、ヒーロさんとミコさんは確実に上ですね。私がこのフードを取った場合にどうなるかまではわかりませんが、あの者たちが侵略などを考えていなくて助かりました。
『ロリアデラ様、いまお時間大丈夫でしょうか?』
『シー、どうかしましたか?』
『いえ――あの訓練場からしばらくロリアデラ様とヒーロさんの力が漏れていましたので』
やはりあのぐらいの力を出すとあの建物でも力が漏れてしまいますね。
『ヒーロさんと実戦をしておりました』
『結構長く感じましたが』
『あの程度であれば私たちには大したことはありません。ヒーロさんも息一つ乱れていませんでした』
『そうなんですね……』
『ところで、明日の朝ですが3人と一緒にあの訓練場に行きますので時間を空けておいてください。ヒーロさんに呼ばれましたので』
『え? はい、承知しました』
シーとの会話が終わると体を休ませることにしました。ただ、基本的に寝ることはしませんので、休むと言っても瞑想をするだけです。
ヒーロさんは私のフードを取りたいとおっしゃっていましたが、私の力だけに興味を持っているのでしょうか。
まさか私の素顔に興味を持っていただけているなんてこと――――いけませんね、瞑想中に何を考えているのでしょう。
ヒーロさんは私がメデューサという話をご存じでしょうが、もし素顔を見られたときに蛇の頭を見てショックは受けないでしょうか。
受け入れてもらえなければ私がショックを受けてしまいま――――いけません、いけません。瞑想中に何を考えているのですか。
ヒーロさんはどのような姿をされているのでしょうか。ヒーロさんの顔を見て話をしてみた――――私は何を考えているんですか! このようなことで私の誓いを破ってどうするんですか! もし万が一ヒーロさんを石にしてしまったらそれこそ私は…………。
私はどうしたのでしょう……ヒーロさんと実戦を行ってから少しおかしくなっていますね。
やはり長いこと生きてきたのにこの数日間で初めてのことが多く少し頭の中が整理できていないのかもしれませんね。
次の日の朝、ヒーロさんたちがあの訓練場に入ったのを確認したので3人を連れ立って私たちも訓練場に向かいました。
「ヒーロさん、おはようございます」
「リアさん、おはようございます」
ヒーロさんたちは4人お揃いで、皆さんとも挨拶が終わりヒーロさんが話始めました。
「これからやることなんですが、三蛇華姫の3人は見届けるぐらいで特にやることはありませんし、オレ以外のこの3人も特に何もしません」
「ということは、私とヒーロさんだけが何かをするのですね」
「そうですね。ちょっと強引な手なので、リアさん先に謝っておきますね」
「はぁ……? 何をされるのでしょうか」
ヒーロさんが説明を終えると、ヒーロさんが私だけを建物の中央に移動させました。
「それでは、リアさん――行きましょうか」
「えっ? ――――ヒーロさん!?」
私が自身のうしろに違和感を感じ、おそらくワープホールが作られたと気づいたころにはヒーロさんが私の両肩を掴んでそのワープホールに私と一緒に飛び込んでいました。
「「「ロリアデラ様!?」」」
ヒーロさんによってワープホールでどこかに移動させられましたが、そこがどこなのかまったくわかりませんでした。
周りにはヒーロさん以外まったく何も感じない、何もない空間にいるような感じでしたが……。
「くっ、下に引っ張られる」
さきほどから下に引っ張られる何かの力が体にかかり私でも抗えません。ヒーロさんも私の肩を掴んだまま私と同じように落ちて行っていますが、ここはどこなのですか!?
「ひ、ヒーロさん、ここはどこですか!?」
「――ダーク・アビスです」
「なっ!?」
ダーク・アビスなんてありえません! あそこは入ると終わりという謎の空間…………しかし、状況的にダーク・アビス以外も考えられません。
さきほどから抗おうとしていますが、落ちるスピードが多少遅くなるだけで一向に止まりません!
「ヒーロさん分かっているんですか!? こんなところに連れてきたら私もヒーロさんも――」
「オレはリアさんがフードを取って力が解放されれば止められると予想しました」
「えっ!?」
強引な手というのはそういうことですか!?
「ここであればオレ以外誰もいません。そして、オレの周りには何もありません。つまり、オレさえ石にならなければリアさんは誓いを守ったまま、オレと目を見て話すことができます」
「そんなことのために」
「リアさんは1000年以上前から誰かと顔を合わせて目を見て話したいと思っていたんですよね。そして、オレにはそれを叶えるだけの力があります」
「しかし……」
「大丈夫です、オレを信じてください。リアさんの石化の力はオレには効きません」
「ヒーロさん……」
たしかに、この状況とヒーロさんであれば大丈夫なはず――しかし……いや、もう時間がありません! やるしかありません!
私はフードの裾に手をかけフードを勢いよく取り暗闇の中にフードを投げ捨てました。そして、私の力が解放され下に引っ張られる力に抗うと徐々に落ちるスピードが緩みしばらくして止まりました。
「どうですか? やっぱりオレなら石にならなかったでしょ」
「もうめちゃくちゃですよ」
いま私は初めて相手の顔を見て目を見て会話ができています。
「改めまして、オレがヒーロです」
「ふふ、こちらこそロリアデラです」
ヒーロさんは私の目をしっかり見て私に自己紹介をしてくださいました。
相手の目を見て話すのってこんなに恥ずかしいのですね、気を抜くと恥ずかしさで目を逸らしてしまいそうです。
「うまくいきましたね」
「フードを取るためだけにここまでする人はいませんよ」
「オレにはそれだけの価値があると思いましたからね」
もぉ、この人は変な方ですね。――――あれっ!? ヒーロさんが私から手を放して離れていきますけど…………なぜ落ちないんですか!?
「ああああ!」
「どうかしました?」
「ヒーロさん! 私を嵌めましたね!」
「リアさん、人聞きが悪いですよ。一芝居打っただけです。それに冷静に考えてください。オレの力がどの程度なのか、ワープホールがなぜここに作れたのか」
「うっ……急にあんな状況にされては無理ですよ」
「オレからしたら冷静に判断されたら困るのでそこも賭けでしたけどね」
今ならわかります。この方はいまの私より強いです、しかも私なんかでは届かないほど。本当に私は何を視ていたんでしょうね。
それよりも冷静になって考えましたが、1000年以上ぶりにフードを取って私の顔は変ではないでしょうか。
「あ、あの……私は変ではないですか? 蛇の頭とか……」
「いえ、リアさんはかわいいですよ。その白い蛇の髪も含めて」
「!?」
あわわわ!? かわいい!? かわいいって言われました! あぁ、顔が赤くなってしまう、こういうときフードを被ってないのはイタイですね。
「あっ!?」
「ん? リアさん、何かありました?」
「フードがありません」
「えっ?」
「フードがないので、帰るといろいろ石にしてしまいます」
「ああ――――オレの外套の中に入ってすべての目をオレのほうに向けるとかは?」
「たしかにそれで大丈夫ですが、よろしいのですか?」
「大丈夫ですよ」
ヒーロさんがそうおっしゃったのでヒーロさんの外套の中に入り蛇もすべてヒーロさんのほうを向くようにしてヒーロさんにくっつきました。
そういえば目を閉じるという手もありましたね…………ま、まぁ、せっかくのご厚意なのでこのままでお願いしまし――――!?
あれっ!? なんで、なんで感知眼がここで発動するんですか!? ヒーロさんのことを感じようとしている、知ろうとしてる!? ちょっと待って、これ以上感じようとしないで、知ろうとしないで、ダメです!
「リアさん、どうかしました?」
「スーハー……スーハー……」
「リアさん?」
ヒーロさんを知ろうとしてにおいを嗅いでしまう。あぁ、ダメ。いいにおいがする。
1000年以上こじらせてたら、それはもう一気にはじけますよね。
(あの花みたいにはならないので安心してください)
Q. ヒーロの服は石化されないのですか?
A. ヒーロが石化されないように頑張っています。




