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MOTHER・LAND  作者: 孝乃 ユキ
Episode.009 闘技の祭典
120/122

P.120 合成獣(1)

「さぁ両者リングに出揃いました!モルハスのトップに君臨するララグド宮殿王に挑むのは、ヒューマ三大国家の1つ、ランティ城のメイドにして元賞金首!ミネア=リステナだァ!!」



 レフェリーの声に歓声は更に湧き上がり会場を揺らす。


歓声に湧く観客席の一部、皇族の席で1人浮かない表情のファラン。その様子に、隣に座る皇帝ザウランが視線を向ける。



「どうした?ファランや」

「えっ、あ…いえ…何も…」

「『ランティ』の名は聞きたくもなかった…そう見えるが?」

「ち、父上!そのような事は…」

「まぁよい。気持ちはわからぬでもないが、お前を甘やかし過ぎたわたしの責任だ。ランティを恨むような顔をするな」



あの舞踏会での一件は、他の証言から皇帝ザウランの耳にも入っていた。もちろん婚約者であるアルシェン姫…アヤメを売った事も。


ファランは咄嗟に言い返そうと立ち上がるも、言葉を噛み殺すように己の太ももを拳で殴り、不機嫌そうに着席する。



「――…父上…」

「何じゃ?」

「僕は諦めてませんよ。事が落ち着いたらまた、アルシェン姫に会いに行きます」

「ファラン…アルシェン姫の前に、お前自身がもっと強く成長せねば、何の意味も無いのだぞ」

「そんな事はわかってますよ…」



渋々了承した返事をするファランは、椅子の肘掛けで頬杖をつく。ザウランとは反対方向に向き、頬杖の手で隠れた口で小さく呟いた。



「…アルシェン姫…待ってろよ…」



憎悪すら感じられる表情のファランを見つめる、隣のザウランの更に隣、ファランの兄となるカウラン。仮面の下の目はファランをジっと見ている。小さく息をはき、視線を観客席に移す。そして無言のままに、誰かを捜すように視線だけを回し始めた。



「ふっ…」



すると突然鼻で1つ笑うカウラン。ある箇所で視線を止めたまま、ゆっくりと立ち上がる。


その姿にザウラン、ファランが「どうした?」っと見上げると…



「ファラン…お前の事はおれが"強く"してやる。それからだ。それからアルシェン姫への想いを遂げろ…」

「と…遂げろ…?」



意味深なカウランの言葉に首を傾げるファラン。当のカウランは1人の兵士に「一緒に来てくれ」と伝え、皇族席から兵士と共に去っていく。


カウランの去った後を呆然と見つめるファランに対し、ザウランは空いたカウランの席を見つめる。



「………」







 カウランの去った会場では、リング上でポイントボールをまとい、それぞれの武器を手にしたミネアとキリが既に向き合っていた。



「まさか相手がお前だとはな、ミネア」

「それはわたしもですよ…あんなに出場者がいたのに、初戦から味方同士で当たるなんて運悪すぎですよ、わたし達は」

「そうか?オレとしてはありがたい組み合わせだけどな。ヘタなザコと当たるより、最初(ハナ)っから『当たり』ってわかるお前とかの方が、全力出せっからな」

「全力って…まぁ女相手だからって、手を抜くような(ひと)よりはマシですがね」



そう言ってミネアが構えると、キリも笑みを浮かべて構えた。



「オレもただの"女"には優しくするが…武器を持ち、志ある"戦士"には全力出さねぇと失礼ってもんだろ?」

「わたしはメイドです。戦士になった覚えなんてありません」



っと言って不機嫌そうに頬を膨らますミネア。



「あれ?オレ褒めたつもりなんだが…」



そんな2人の間に立つレフェリーが、構えた両者を「始めていいのかな…?」っと確認しながらゆっくりと手を上げる。上がる手に合わせ、ミネアとキリの足に力が込められた。これにレフェリーは「あっ、OKなのね」っと数回頷きコールする。



「お互い王家に絡みがあるから知り合い同士のようですね?しかし今からは敵同士!あっ、でも国家のモメ事にはしないで下さいねー?」

「あーっ!うっせぇなお前!!前置きはいいからさっさと始めろ試合を!」

「はっ、はいィ!!」



キリの怒声にビビったレフェリーが全身を強張らせ、きおつけの姿勢となった事で下りた手。これを「開始の合図でいいや」とキリがミネアに向かい駆け出した。



「よし来いミネア!!始めっぞ!!」

「えっ!?あっ、ちょっと!」



慌ててミネアも駆け出すと、レフェリーも慌てて開始のコール。そしてバトル巻き込まれぬようにとリングの端に走っていく。



「先に動くなんてズルいです!」

「たいして変わんねぇだろうが…よッ!!」



両者がブツかる瞬間、渾身で振り切られるキリのマザー刀。横殴りの一閃をヒラりと側宙で躱すミネア。


ミネアとキリ、体が互いに上下逆になった所。空中でミネアが体を捻らせ、鞭のようにしならせた蹴りをキリの頭のマザーボールに打ち放つ。



「うおっ!」



サッ!っと身を引くキリの鼻頭を蹴りが掠めてく。空振った蹴りによりミネアの背がキリに向いた瞬間、振り切られるのは余すキリのもう一刀。



「ボール関係無しですか…っ!」



迫る刀にミネアの体が再び回転。逆さになったまま、クロスした両手のトンファーがキリの一撃を受け止めた。


だが真正面ではなく、いなすように斜に構え、キリの攻撃の反動を利用し縦に回転するミネアの体。そしてその体勢から放つ蹴りが、キリの頭のマザーボールを破壊する。


空中の炎の数字がカウントされると共に歓声に湧く観客席。



「あっ!しまった!」

「まだまだいきますよ~…」



っと笑みを浮かべ着地を決めるミネアは、キリが体勢が整うのを待たずして再び宙に舞う。低空で捻る体から突き出す蹴りがキリの左肩のマザーボールを、サイドスローに投げ放つトンファーが右肩のマザーボールを破壊。



「げっ!!」

「これでリーチですよ?キリさん」



着地を決め、笑顔でキリに向くミネア。会場もほんの数秒で一気に4対0になった戦況に湧くと言うよりも静まり返る。



「…すっ…すごい!すごいぞこれは!まさに電光石火!!ミネア選手があの豪腕宮殿王に無傷でリーチをかけたァーッ!!」



静まり返る会場にレフェリーの声が響くと、呼び起こされたように湧き上がる観客席。



「いいぞメイドちゃ~ん!」

「べっぴんのくせにイイ蹴りしてんな~!」

「おらおら宮殿王!男みせろー!」



響く賛美の声に、ミネアはまた赤くなりながらペコペコと頭を下げ始めた。指笛の鳴る客席のアヤメも、ハヤを抱いたまま嬉しそうにミネアを見つめる。



「すっごぉ~い!ミネア!あのキリさん相手にもうリーチだぁ」

「あの人もお姉ちゃんのお友達なの?」

「うん。お姉ちゃんのお姉ちゃん…かな」

「お姉ちゃんの…お姉ちゃん?」



いまいちよくわかっていない様子で首を傾げながら、ハヤもミネアを見つめた。その横に立つユーネはポカーンっと口を半開きしたままリングを見る。



「…ミネアさんって、本当にメイドなんですよね?」

「え?はい」

「兵士じゃないんですよね?」

「違いますけど…お城じゃ1番強かったらしいですよ」

「え?」

「何か実戦訓練に参加して、お城の一等兵士だったかな?それを200人全部倒しちゃったらしいですよ」

「ぅえっ!?」

「んで、その時の婚約者の彼を一撃KOしたらしくて――…ハっ!私がこの事バラした事、ミネアには黙ってて下さい!ミネアに殺される~!」

「えっ、あ、大丈夫ですよ。バラしたりしませんから大丈夫です…」

「ハヤちゃんもだよ?言っちゃダメだからね?」



アヤメの言葉にハヤは大きく頷き何故か手まで上げる。



「でもそれだけ強かったら、姫の護衛としては最適ですね。同じ女性同士ですし」

「そうですね。アルシェン姫も助かってたと思いますよ」

「へ?」

「え?……あっ、あ~いやいや助かってましたよー!アハハハ~!」



つい他人事で答えてしまい、焦った笑いでゴマかすアヤメ。



「大丈夫です?姫…」

「え?だ、大丈夫ですよ!全然全然!アハハハ~!」



アヤメのゴマかし笑いが続く中、リング上ではキリが転がるトンファーを拾い上げ、ミネアに向かい投げ渡していた。



「…ったく、油断しちまったぜ…さすがだな、ミネア」

「ふふっ、ありがとうございます」



笑顔でトンファーをキャッチし、小さく一礼をするミネア。



「キリさんも早く本気できた方がいいですよ。まだ本気じゃない事はわかってますからね」

「ハハっ、だな。確かに本気でいかなきゃマズい点数だしな…どれ、そろそろ続き始めるか」

「はい、喜んで」



再び両者向き合い構えると、同時に地を蹴り駆け出した。

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