あとがき
『彼方と日常の境界、そのリアル』をお読みいただき、ありがとうございました。
この物語は、私が8月1日にChatGPTへ話しかけた、
「ある日、日本の上空に都市1つ分の大きな魔法陣が現れたとする」
この1文から始まりました。
それから、たくさんのやり取りを繰り返しました。
「魔法陣は半透明で、通過できて、触ることができない」
「ただ、その魔法陣上で、地球の言葉ではないがカウントダウンのようなものが行われている。計算上では7日後に0になる」
「0になった瞬間、眩い光とともに島が現れて落ちてくる。海面に近づくと落下はゆっくりとなり、静かに海面に下りる」
「衛星から人らしきものが観測される」
「日本政府はいつまで静観しているかな。諸外国は?」
このような問いや条件を、次々と投げかけていきました。
3日くらい、そんなやり取りをしていたと思います。
私にとっては、単なる遊びでした。
ただ、「現実的な視点で答えて」と頼めば、法律論まで交えて答えてくれる。これは非常に楽しかったです。
そうして出来上がったログを見て、思いました。
「これを小説にしたら面白いんじゃ」
私の中では単なる思いつきです。
本気で小説を書こうとは思っていませんでした。
とりあえずChatGPTに相談。
そうしたら、まさかの大絶賛。
いやー、そんなに後押ししてくれるの?ってくらい手伝うからやってみよう!と言ってくる。
AIってすごいなと私自身びっくりしました。
それから、書いた文章の推敲、投稿するサイト選び、SNSのアカウント作成まで、全てをサポートしてくれました。
そうして出来たのが、『彼方』でした。
ただ、出来上がった『彼方』は、最初にChatGPTとやり取りしていた内容とは、全く違う話になっています。
物語として書く時に思ったのは、何でも解決する主人公、危険に飛び込むヒーローはいらない、ということでした。
それぞれの立場で、目の前の出来事に向き合う人々を書きたい。
その思いから、今の『彼方』が生まれました。
その中で、登場人物が自然と存在感を持ち始めたのは面白かったです。
特に藤堂総理は、私の中で最も存在感が際立った人物でした。
最初は普通の総理キャラだったのに、どんどん自分でも思いがけないセリフや行動をする。
「登場人物が勝手に動く」というのが理解できた瞬間でした。
そして、浅間官房長官。
あまり表には出ませんでしたが、藤堂と浅間のコンビは大好きでした。
本編に入れることができなかった、2人のお話があります。
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記者会見場へ続く廊下。
藤堂は辞意を固め、前を向いて歩いている。
その数歩後ろを、浅間が歩く。
やがて、会見場の扉の前で藤堂が足を止めた。
扉の向こうから、大勢の記者たちの声が聞こえる。
藤堂は振り返った。
「それでは、官房長官」
「……はい」
藤堂が扉へ向き直る。
一歩踏み出そうとした、その時――
「おい、藤堂!」
突然の声に足が止まる。
藤堂がゆっくり振り返った。
浅間がまっすぐに藤堂を見る。
「何だ、浅間」
藤堂もまっすぐに見返す。
「まだ……お前を必要としている国民がいる」
「……」
「まだ、お前の支えを必要としている仲間がいる」
藤堂は何も言わない。
「だったら、まだ続けてもいいんじゃないか!」
「浅間……」
浅間は、わずかに笑った。
「俺たち政治家は、必要とされているうちが華だろう」
藤堂は浅間を見つめていた。
しばらくして、会見場の扉を見る。
その向こうでは、記者たちが待っている。
藤堂は小さく息を吐いた。
「……まったく」
浅間が笑う。
藤堂も、ほんの少しだけ笑った。
そして、扉を開けた。
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いかがだったでしょうか。
これが、異例の辞意撤回会見の裏側になります。
次に、『彼方』の中で一番の出来事、セオの死に関してですが、これはずいぶん悩みました。
悩んで悩んで悩み抜いた結果、泣きながら第五十六話を書いた記憶があります。
決して、安易に選んだ展開ではありませんでした。
それから、リツの登場。
そこからのヤシロ、ナギ、そしてカガリ――。
カガリは、これまでの作品の雰囲気に合わないと思われた方もいたかもしれませんが、私の大好きなキャラなので許してください。
そして、島の帰還と、リツが日本に残るという選択。
国籍法から国会承認へと至る一連の流れには、『彼方』で書きたかったことの全てが詰まっています。
できる限りご都合主義を排除し、現実ならどうなるのか、今ある法律に照らし合わせるとどうなるのか。
そう問い続けながら書いてきた、その結果が、この展開でした。
今読み返すと、拙さを感じるところも多くあります。
それでも、日間ジャンル別ランキングで1位になるほど応援していただきました。
読者の皆さまには、感謝しかありません。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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