第四話 初動
2027年3月10日(水) 07:54
大阪府庁。
危機管理監は、自室でその電話を受けていた。
受話器を持ったまま窓へ向かう。
カーテンを開けた。
雲一つない青空。
その中央に、巨大な紋様が静かに浮かんでいる。
言葉が出ない。
受話器を持つ手が止まる。
『危機管理監?』
『聞こえていますか。』
数秒遅れて我に返る。
「……確認しました。」
「これより対応に入ります。」
受話器を置いた。
携帯電話を取り出す。
登録された番号を押す。
数回の呼び出し音。
『はい。』
「知事、お時間よろしいでしょうか。」
『上空の件だろう。』
一瞬、言葉を失う。
「……ご存じでしたか。」
『朝から電話が鳴りっぱなしだ。』
『今、そっちへ向かっている。』
『体制を整えておいてくれ。』
「承知しました。」
通話が切れる。
携帯電話をしまい、部屋を飛び出した。
エレベーターを通り過ぎ、そのまま階段を足早に下りていく。
◇
危機管理室の扉が開く。
室内では、電話のベルが鳴り続けていた。
危機管理監は室内を見渡す。
「外線はすべて代表電話へ転送してください。」
一瞬だけ室内が静まる。
「以降、関係機関との連絡は直通回線に限定します。」
「代表電話に入った内容は、すべて記録させてください。」
「確認できた事実だけを集めます。」
「憶測は不要です。」
職員たちは一斉に動き始める。
外線が次々と代表電話へ転送されていく。
鳴り響いていた電話のベルが止んだ。
危機管理室に残ったのは、関係機関とつながる直通回線だけだった。
静寂。
その静寂を破るように、一本の直通回線が鳴る。
危機管理室の空気が変わった。
◇
一台の車が大阪府庁正面へ静かに滑り込む。
ドアが開く。
知事が車を降りた。
足を止めることなく庁舎へ向かう。
「知事!」




