第二十九話 カウントダウン ――残り2日
2027年3月15日(月) 05:16
新聞社。
机に突っ伏して眠る相沢のそばで、突然スマートフォンが鳴った。
「……ん」
相沢は顔を上げ、鳴り続けるスマートフォンを手に取る。
「……もしもし」
『おい、見たか!』
「……何を」
『今すぐSNSを見ろ』
「どこの?」
『どこでもいいから今すぐ見ろ! 俺も今から行く』
電話が切れた。
「……なんだよ」
相沢はスマートフォンを操作し、とりあえずXを開いた。
トレンドの一番上。
目に入った文字に、指が止まる。
『カウントダウン』
「…………」
相沢はそれを押した。
画面いっぱいに投稿が流れ込んでくる。
大阪上空の紋様。
並べられた過去の画像。
動画。
見慣れない記号に振られた数字。
10分24秒。
そして――
2027年3月17日 13:03
相沢の指が止まった。
◇
二人は並んでモニターを見ていた。
手にはコーヒー。
画面には、カウントダウンについての投稿が次々と流れている。
「相沢、これ、どう思う?」
「……分からん」
相沢はコーヒーを一口飲む。
「分からんが……本当なら、これまでのことが納得できる」
二人はしばらく、黙って画面を見ていた。
「今の紋様と照らし合わせれば分かるんじゃないか?」
「大阪は曇りだ。見えない」
「…………」
「これ、カウントダウンだったらどうなる?」
「分からん」
「国は知っていたと思うか?」
「分からん」
「17日、何が起きる?」
「…………」
相沢は頭を掻いた。
「あー、分からん」
椅子から立ち上がる。
「分からんから確認する!」
◇
ガチャン、と受話器を置いた。
「くそっ。何を聞いても『確認中』としか言いやがらない」
「どうする。官邸に行くか?」
「いや。この調子じゃ、官邸に行っても同じことしか言わないだろう」
相沢は椅子にもたれた。
「…………」
机の上のコーヒーに手を伸ばす。
途中で、その手が止まった。
「……いや」
「ん?」
「昨日の連中だ」
「昨日?」
相沢は身体を起こした。
「国が答えないなら、動いた連中に聞けばいい」
「米軍か?」
「それだけじゃない」
相沢はモニターを見る。
「南半球に移動した連中だ」
「でも、そんな連中に直接聞けるのか?」
「俺にそんな当てがあると思うか」
相沢はスマートフォンを手に取った。
「だから、聞ける奴に聞く」
連絡先を開き、電話をかける。
「もしもし、相沢です。今朝のカウントダウンの件、見てます?」
「――」
「米軍関係者の家族が国外に出た件、もう一度洗ってほしい。今回の話と関係がないか」
「――」
「お願いします。何か分かったら、すぐ連絡ください」
電話を切る。
続けて、別の番号を呼び出した。
「相沢です。オーストラリア支局、もう動いてますか?」
「――」
「一人、アポイントが取れた?」
「誰です?」
「――」
「なるほど……。取材はこれから?」
「――」
「分かりました。終わったらすぐ連絡ください」
電話を切る。
相沢はスマートフォンを机に置いた。
「……よし、これからだ」
残ったコーヒーを飲み干した。




