第二十八話 決壊
2027年3月14日(日) 23:47
大阪の空は、雲に覆われていた。
雲の向こうに、巨大な紋様の光がぼんやりと滲んでいる。
◇
真っ暗な部屋。
モニターの光だけが、シゲオの顔を照らしていた。
画面には、大阪上空の紋様を撮影した画像が並んでいる。
シゲオは1枚を拡大した。
「……これだ」
記憶にある紋様と同じものだった。
別の日に撮影された画像を開く。
同じ場所。
同じ位置を拡大する。
「……紋様が違う」
もう一枚。
違う。
さらに別の画像。
また違う。
シゲオは椅子に座り直した。
撮影日時を確認する。
画像を切り替える。
戻す。
もう一度、切り替える。
「……変化してる」
シゲオは動画を探し始めた。
投稿された映像は無数にある。
短いもの。
手ぶれしたもの。
紋様が小さくしか映っていないもの。
次々と開いては閉じる。
やがて、一つの動画で手が止まった。
遠くから撮影された映像。
解像度は低い。
それでも、紋様は映っている。
シゲオは再生した。
何も起こらない。
そのまま見続ける。
「…………」
突然、紋様の一部が変わった。
シゲオの手が止まる。
巻き戻す。
再生する。
また変わる。
「……やっぱり」
シゲオは動画のURLをコピーした。
そして開いたのは、数日前から見ていた大規模匿名掲示板の紋様に関するスレッドだった。
『これ、途中で紋様が変わってる』
動画とともに投稿する。
しばらく画面を見つめた。
一つ、返信がついた。
すぐに二つ目。
三つ目。
画面を更新する。
また増える。
『マジ?』
『どこ?』
『何分あたり?』
『ほんとだ』
『他の動画にもあるぞ』
更新するたびに、新しい書き込みが現れる。
10件。
20件。
50件。
シゲオは何も書き込まず、その流れを追った。
誰かが別の動画を貼る。
別の誰かが撮影時刻を書き込む。
さらに別の画像が貼られる。
画面が猛烈な勢いで流れていく。
その中で、一つの書き込みに目が止まった。
『おい、これ10分24秒で変化するぞ』
「…………」
シゲオの指が止まった。
机の上に置かれた計算用紙へ目を向ける。
紙を手に取る。
自分で書いた計算式。
その下に残された数字。
10分24秒。
そして――
2027年3月17日 13:03
「…………」
紙を持つ手が震え始めた。
画面には、その間にも新しい書き込みが流れ続けている。
『別の動画でも確認した』
『こっちも同じ』
『周期あるってこと?』
『10分24秒ごと?』
『誰か過去の画像持ってない?』
『10日の画像あるぞ』
シゲオは計算用紙を握ったまま、画面を見つめる。
新しい書き込みが現れた。
『おい、これ数字じゃないか』
『数字?』
『どういうこと?』
『待て』
『ありえる』
『画像並べてみろ』
『10日のやつ集めよう』
『動画もだ』
『誰か一覧作れ』
『海外の画像も探せ』
新しい書き込みが、次々と画面を押し上げていく。




