第二十六話 気づいた者 ――残り3日
2027年3月14日(日) 07:31
暗い部屋。
カーテンは閉じられ、室内を照らしているのは机の上に置かれたモニターの光だけだった。
一人の男が、椅子に座っている。
机の上には、飲みかけのペットボトル。
空になった缶コーヒー。
何枚もの紙には、数字と計算式が書き込まれている。
男はモニターを見つめていた。
画面には、大阪上空の紋様を撮影した画像。
マウスを動かす。
次の画像。
また次の画像。
男は紙に目を落とし、再び画面を見る。
「…………」
部屋の外から声がした。
「シゲオー」
返事はない。
「シゲオー、今日も仕事でしょうー。起きてるー?」
「あー……」
「遅れないようにしなさいよー」
足音が遠ざかっていく。
「府庁も今、忙しいんでしょ……」
声も遠ざかり、部屋は再び静かになった。
シゲオはモニターへ向き直る。
画像を送る。
次。
また次。
手が止まった。
机の上の紙を見る。
「……俺は、何を計算させられていたんだ」
モニターを見る。
「あの紙の紋様……」
しばらく画面を見つめる。
「なんなんだよ……」
再び、マウスを動かした。
◇
新聞社。
机に向かう記者の横へ、両手にコーヒーを持った男が近づいてきた。
「ほい」
片方を差し出す。
「ありがとう」
記者は受け取り、そのまま一口飲んだ。
「相沢、お前の勘、当たりかもしれん」
カップを口元で止める。
「どうした?」
「世界中のVIPが、南半球へ移動しているらしい」
「何?」
「政府関係者、企業経営者、資産家……。ここ数日で妙に増えてる」
記者は黙って男を見る。
「これだけなら、まあ、あり得るかもしれない。あんなものが大阪の上に出てるんだからな」
「ああ」
「ただ、今朝、中国にいる特派員から連絡があった」
男が声を落とす。
「中国とブラジルのトップ会談が、急遽決まったそうだ」
「このタイミングで? なぜブラジル?」
「それは知らん。しかもだ」
わずかに間を置く。
「会談はブラジルでやるらしい」
「……え?」
記者の表情が変わった。
「総書記自ら向かうのか?」
「ああ。今夜にでも発つそうだ」
「…………」
記者は手にしたコーヒーを机へ置いた。
「……いったい、何が起こっているんだ……」
「……そして国は……」




