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まじょカル  作者: リトナ
マジョカル×魔女×巫女 ~第一章 まじょカル~
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第十六話 魔女vs魔女

 復讐することに歓喜の心が生まれた本物の魔女。


 普段の逢花なら狂気に飲み込まれた異常な精神状態の魔女相手にもしかしたら同情したかもしれない。


 しかし、今回だけは退くわけにはいかない。


 この戦いには水葉の命がかかっている。


 躊躇して良い相手でも状況でもない。


 魔女が片手をこちらに向けて掌を突き出すと、そこに魔法文字が浮かぶ。


 すると無数の魔力弾がマシンガンのように逢花に発射された。


「【操技絶剣(アンサラー)】!!」


 対する逢花は微動だにせず、代わりに頭上に浮かぶ魔剣が逢花の前に移動した。そして一閃する。


 直後、魔女が放った幾つもの魔力の塊の全てを一振りで薙ぎ払う。斬られた魔力弾は爆発し、逢花と魔女の間で噴煙となった。


 煙で魔女の姿が見えなくなったがそれは向こうも同じこと……


「!!」


 噴煙の中から、数本の蔦が飛び出してきて、逢花の手足に一本二本と巻き付いていく。


(動きが……)


 一度巻き付かれると、行動が制限され次々と他の蔦にまで絡め取られてしまった。


「ふふ。私がなぜ『新緑の魔女』と呼ばれていたのか忘れていたのかしら? 私の魔法は植物を操るのよ。……意外とあっけなかったわね」


「くっ…………あ!」


 手足だけに留まらず、蔦が足から腹へ、腕から首へ伸びてきた。


 蔦が身体中を這いずり回る感覚が気持ち悪い。


 お腹を絡め取った蔦が、次の目標を目指してさらに上へ、胸にまで伸びた。


「なかなか扇情的で良い眺めよ、逢花。ふふふ」


 下品な笑みを浮かべている魔女の顔を見ていると、胸を良いように弄ぶ蔦の動きも気にならず、怒りが頭の中を支配した。


「かわす必要がなかったから避けなかっただけです……」

「そんなカッコで言われてもねぇ……」

「水葉ちゃんの身体でそんな顔しないで!!」


 空中で待機していた【操技絶剣】が目にも見えぬ速度で逢花を絡め取っていた蔦のみを切り払い、束縛から解放された逢花。


「なら……これなら、どう!!」


 今度は絡め取ろうといった動きではなく、そのまま貫こうという勢いで直線状に数本の蔦が伸びてきた。まるで何本もの槍のように。


 その場から一歩も動くことなく、逢花は横を通り過ぎる数本の槍状の蔦を表情一つ変えず一瞥した。


「まさか! そんな…………」


 蔦は床を突き破っていたが、なんと逢花には一つも当たっていなかったのだ。


 逢花の目前で魔剣の一払いが逢花に迫る攻撃を全て斬り落としていた。


「これでもうお終いですか?」


 一歩二歩と魔女に歩み始める逢花。


 そのゆっくりとした歩みとは対照的に表情は厳しい。


 魔女は今になって、ようやく己の身の危険を自覚し、自分でも気付かないうちに芽生え始めた恐怖から後ずさってしまった。


「調子に乗って………………【戦舞衣装変換(ドレス・フォーム)】!!」


 逢花の【戦舞衣装変換】のように眩い光の帯が螺旋状に魔女を包み込んでいく。


 そして次に姿を現した時、先ほどまでの巫女服を着た姿から真っ黒な胸元が開いたドレスのような服装に変わっていた。頭には身に付けている衣装に合わした黒の三角帽子を被っている。


 もちろん、ただのドレスなどではない。


 見た目の生地の薄さに反して極めて物理にも魔法・魔術的にも優れた耐性を持っている。その上、普段は抑えていた魔力を解き放つ意味もあった。


 魔女が本気を出した証である。


 これで箒でも持っていれば、その姿はまるで昔話に出てくる魔女そのものを見る人に連想させてしまうだろう。


「これなら…………どう!?」


 蔦による前方位攻撃。


 一本一本の攻撃は先ほどまでと同じに見えて、その攻撃力はまるで違って強化されている。


 そこまで知りつつも逢花は歩を緩めなかった。


 『先ほどまでとまるで違う』はずだった攻撃を『先ほどまでと同じ』ように魔剣が踊るように蔦を一掃していく。


「なぜ……なぜ、七百年生きてきた私がこんな年端もいかないような魔女なんかに……!」


 後ろに飛び退いて逢花と距離を取った魔女は、再び魔法文字を宙に書き出した。今度のはさっきの魔弾のものとは違う。


「【絶対魔力障壁(ウォルマ)】!!」


 魔女を中心に円形型の結界が張られた。


「ふふふ、あーはっはっははは! 油断したわね! この私がマジョカルにだけ警戒していたとでも思った? この結界は対魔女に特化した防御壁よ。私に逆らう魔女との戦闘を想定して用意した魔法! あなたに破れるものじゃないわ!」


 少しの間、結界を見つめていた逢花だったが、すぐに視線を持ってきたスマホのディスプレイへと向けた。


「私を相手に余所見とは舐められたものね……。まぁ、いいわ。どうせ、あなたにはこの結界を破る手はないんですもの」


 魔女も懐からスマホを取り出す。


 どうやら逢花同様に時間が気になる模様なのだが……


 現時刻23時51分。


(……あれ? 水葉ちゃんのいつものスマホじゃないような……?)


「あと九分……あと九分でこの身体は私のものになるのよ! 完璧に蘇れる! ふふ……あーはっはっはははは!!!!」 


(どういうこと?)


 違和感を感じた逢花はしばし考え込む。


 そんな逢花の姿を絶望感から塞ぎ込んだものだと勘違いしたのか、魔女の顔がニヤニヤと優越感に浸る。


 水葉の顔でそういう顔をされるのは嫌だし、そろそろ我慢の限界だった。


「結界はそれで十分ですか?」

「は?」


 魔女は一瞬、逢花が何を言っているのか分からなかった。


「結界の強度は十分か聞いたのです」

「強度は十分かですって? 見てのとおり完璧じゃない! どうしようもないからって私の精神を揺らして結界を弱らす作戦かしら? お生憎様。新人魔女じゃあるまいし、その程度どうってことないわ」

「そうですか……では、怪我をしないように本気で持ち堪えてください」


 無論、魔女の心配をしてるのではない。水葉の身体を心配してのことだ。


 魔剣が静かに、けれど威圧的な迫力を放ちながら逢花のちょうど頭上で浮いたまま停止した。


「いきますよ」


 ……と言うが早いか、魔剣【操技絶剣】が横一閃し、激しい衝撃波が同時に生まれた。


 衝撃波は三日月状の刃となって魔女を守る結界に衝突すると共に結界を砕かんと大きな音を鳴らした。


 ピキ……ピキピキ……


「!! ……け、結界が割れて…………」



 パッリ――――――ンッッッッ!!!!!!



 まるで魔女の姿を映した鏡が割れていくかのように結界は無残にも粉々に砕けていった。


「そんな、バカな……対魔女用結界がこんなにあっさり破られるなんて……」


 イスカに向かって、まるで何事もないかのように再び歩き出す逢花の姿に焦りの色を浮かべた魔女は、すぐさま、もう一度【絶対魔力障壁】を唱えたが……


 パキーンッ!!!!


 これも難なく粉砕。


「く、来るな! 来るな――――っ!!」


 先ほど逢花を襲った蔦が床に突き刺さった際に、おそらく切り札として忍ばせていたのだろう。蔦が床を突き破って逢花に襲い掛かる。


「 【閃瞬(ラ・ヴァーナ)】!!」


 逢花が瞬きをした間に、いつの間にか床から現われた蔦から離れた場所で、筋肉質とは言わないまでも男性のそれと分かる腕の中に抱きかかえられていた。


「お待たせ。もしかして余計なお世話だったかな?」

「いいえ、良いタイミングでした。ありがとうございます」


 逢花の危機に駆けつけたのは薙斗だった。


 抱きかかえていた逢花を手頃な場所で薙斗は下ろし、魔女を見る。


 外見は今朝見た音羽水葉ではあるが、薙斗にはその中身はまるで違って見えた。


「あれが『新緑の魔女』」

「はい」




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