44、開店中~妄想で生きていけるか?~
この作品はフィクションです。
「ハロウィンモンスターパンプキンのカボチャ畑に現れたのよ、そいつが。」
「誰がですか。」
「全てを新しくしてしまう、ニューイヤーモンスターリセットの天敵。全てを古くしてしまうオールドイヤークラッシャーゼロよ!」
「…そんなに興奮されても知らないのですが…。」
「ここ盛り上がりどころよ!?」
「先輩の頭の中では、でしょう?」
それはわかってる。でも、これを他人が目視できるようにするためには、途方もなく時間と技術が必要になる。ならば、お話をするしかないではないか。
私の妄想物語は絶好調に続いていた。自分で自分が怖くなる。私の妄想の泉の無限大さ加減に。
後輩くんはついてこれていないようだが、相槌をついているだけマシになった、といったところだろうか。ここは妄想力が足りないことを責めるよりも、多少でも成長していることを褒めるべきなのだろう。
と、
「あの。」
後輩くんが口を挟んできた。
「何?」
「単純に聞きたいのですが…、毎回変な物を買ってこさせるのは、何のためなんですか?」
「…へ?」
「別に必要な物ではないですよね。店に並べるわけでもないですし…。変な物を集めるのが趣味なんですか?」
「……………」
…う~む。
まさか、ここまで伝わっていないとは思っていなかった。
「あのねぇ。」
多少呆れた声で返してみる。
「私が何の意味もなくあんな無茶な買い物をリクエストしてたとでも思ってんの?」
「違うんですか?」
「違うわよ!」
先輩に向かって何て言い種だ!全くこの後輩は…。
「これはね。ズバリ、親心よ。」
「…はい?」
怪訝な表情の後輩くん。
「後輩くん。あなたは、とにかく現実に囚われすぎる!」
ピシリ!
何度目かの指差し。そして、言葉を続ける私。
「それじゃあつまらないのよ。せっかく生まれてきたのに、現実に囚われてばかりで。世界っていうのは、もっともっと広くて楽しくて輝いてるのよ!」
「妄想の話ですよね、それ。」
「勿論。」
「だったら意味がないですよ。」
「なんでよ。」
「当たり前でしょう?現実じゃないんだから。何をどう妄想したところで、それは頭の中だけの産物。現実には反映されません。」
「当たり前じゃない。」
「それで生きていけますか?生活は成り立つんですか?」
「成り立つわよ。現に私が成り立たせてるじゃない。」
「それは、なりたってるように思い込んでるだけてす。」
………今日の後輩くん、随分と当たりが強いな。
そんなに嫌だったのかな。今日の買い物。




