35、開店中〜タオルミイラ〜
この作品はフィクションです。
「ふ〜む。」
翌日。塩フルーツゼリーを食べながら、私は考えていた。
私の依頼した買い物に対して、完全に赤点な品物を買ってきた後輩くんへの、再試に関してだ。
まさか塩の容器に砂糖を入れるとは…。発想が稚拙、というか、なげやりに、こんな感じでいいんじゃないの〜?、的な考えで買ってきたようにしか思えない。
やはり、私が直々に妄想講義をするべきか…、いや、だがしかし、私は信じたい。彼には、自分で秘めたる妄想力を引き出せるだけのポテンシャルがあると。
王道の主人公というものは、そういうものなのだ。まぁ、後輩くんは主人公という柄ではないが、そういうものなのだ。
いずれ、妄想の荒野に一人旅立ち、顔傷系の逞しい戦士となって帰ってくる。そんな予感をさせてくれる逸材なのだ。
などと脳内主人公論を繰り広げていたら、いつの間にか客が来ていたらしい。ドアの開く音と、何者かが入ってくる気配。
視線を送る。すると、そこにいたのは、
タオルミイラ男だった。
いや、さすがに今は普通の状態だ。前回来たとき同様、古びたジーパンとスニーカーに、キャラもののシャツ、リュックサックに眼鏡に小太り。額には汗。
あまりに前回から変わってなさすぎて、少しはアレンジしろよ!、と、言ってしまうところだった。
「…………。」
店内に入るや否や、巨体を揺らしながら、のてのてと歩いてくるタオル男。前回は業者か、ってくらい、大量のバスタオルを買っていったけど…、まさか、今回も…?
「……………。」
彼が行き着いた先。それは、
「すいません〜。」
私の目の前だった。
「って!タオルじゃないんかい!!」
「…は?」
………。
…しまった。つい、ベタにツッコミを入れてしまった。
「え?あ、おほほほほ〜。何でもないですよ〜何でも〜。…え〜、何か、お探しですか〜?」
「あ、はい〜。」
額の汗を拭きつつ、自分の目的を告げる彼。
しかし、それは、
「僕に合うアイテムって、どれでしょうか。」
……………。
かなりの難題であった。
「…はい?」
思わず聞き返してしまった。だが、それも仕方ない。仕方ないってことにする。
だって、僕に合うアイテム、って、どういうこと!?。会うの今日でまだ二回目なのに、そんなアバウトな注目ある!?
………まぁ、初対面で、海はあるか、って聞いてきた、七光りセレブスーツはいたけど…。




