28、開店中〜女性展望〜
この作品はフィクションです。
かなり大胆な一言だった。
作家になろうと思う。
作家になりたい、ではなく、なろう。
かなり大胆な一言だった。
「作家に?なんでまた。」
「は、はい…。」
一呼吸置いて、
「…………私は、見ての通り、人と向き合うのが、苦手です。話すのも下手で、人付き合いも苦手で、友達もいなくて、いつも一人で、うつむいて、生きてます…。そんな私が、唯一、気持ちだけは明るくなれる時間。それが、妄想をしているとき、なんです。」
「ふむふむ。」
「でも、大人になったら、働かないといけません。今は、学生だから、まだ、親に養ってもらえているけど、いつまでも、養ってもらうわけにはいきませんから。でも、こんな私が、働ける場所なんて、あるのか、って………」
「ほぉほぉ。」
「それで考えたんです。なるべく人と関わらずに働けて、私の性格でも出来る職業って、なんだろう、って。それで、出てきたのが、作家、なんです。」
「…なるほど。つまり、一人でいられる時間が長くて、なおかつ、お金も稼げる職業だから、作家になりたい、ってこと?」
「…は、…はい。そうです。」
「…ふぅん。」
「素晴らしいっっ!!」
「ひゃっ!?」
思わず賞賛していた。実際賞賛に値すると、私には思えたから。
「いや〜、まだ若いのに、そこまで将来のこと考えてんだ。いいと思う、それ。すごくいい。」
「そ、そう、ですか?」
「そりゃそうよ。無理して苦手なことしたってストレス溜まるだけなんだから。それなら自分の得意分野をとことん突き詰めた方がいいわ。仮に、今あなたが18才だとしても、10年経っても28才。いや〜、若い!若いっていいわね〜。財産よ財産。」
「は、はぁ。」
「学生の今から目標を定めて、ひたすら妄想と文学を極めていけば、10年後にはきっと売れっ子作家よ。間違いない!」
「そ、そうですよね?」
「勿論!」
…いや、本当にそうなる保証はどこにもないけど、なんとなく、この子なら出来そうな気がするんだよなぁ。根拠はないけど。
「でもさ。なんで急にそんな話をしてくれたの?」
「え?それは…」
「自分の夢とか妄想語るのって、結構勇気いることだと思うのよね。それをしてくれたってことは、私を信用してくれた、ってことでいいのかな?」
「…ん………、信用、というか……その…、…なんと、言えばいいのか…」
「あはは、いいよ無理しなくて。とりあえず、自分のこと話せるくらいには信用してくれた、ってことでいいのよね?」
「…は、はい。」
「会ってまだ二回目なのに、もう信用してもらえたなんて。これも、私の人徳かしらね〜ふふん〜。」
「え…、…は、はい。」
………。
…う〜ん、さすがに後輩くんみたいなツッコミを期待するのは酷か。




