22、開店中〜報告、別名、自慢〜
この作品はフィクションです。
気がつくと、目の前に後輩くんがいた。
完全に呆れた表情でこちらを見ている。
もしかして…、全部聞かれていたのか!?
「盗聴は犯罪です!」
「いきなり何の話ですか。知ってますよそれくらい。」
やれやれ、といった感じに、後輩くんは手に持っていたビニール袋をレジカウンターの上に乗せた。
「頼まれたもの、買ってきましたよ。」
そうそう。店に来るついでに買い物を頼んでいたんだった。
「お、ありがとうありがとう。………うん、そう、これこれ。」
袋からブツを取りだし、笑顔になる私。
「しっかし…、よくそんなに塩っぽいものばかり食べられますね。」
「え?美味しいじゃない、塩昆布。」
「口寂しい時にたまにつまむと美味しいですけど、そんなに毎日毎日食べてて飽きないんですか?」
「飽きないのよね〜これが。なんだろ、身体が常に塩を求めてる感じ?」
「そんなに新陳代謝よくないでしょ?」
「何よ〜。なんで私の新陳代謝がよくないって勝手に決めつけてるわけ?」
「歳が歳ですから。」
「失礼な!」
「歳が歳なんですから、食生活気を付けてください、ってことですよ。濃い味のものは控え目に。野菜の摂取もしっかりと。」
「母か!お前は私の母なのか!だとしたら産んでくれてありがとう!」
「どういたしまして。」
「つっこめよ!!」
と、こんな意味のないやり取りをするのも、最近の日課になりつつある。
が!
こんな意味のない日課を繰り広げている場合ではない。もっと意味のある報告をしなければ。そう、今日の売り上げ報告だ。別名、自慢。
「そういえばね。売れたわよ?」
「何がですか?売れてくれなきゃ困りますよ。店なんですから。」
…いちいち嫌味なこと言うわね。まぁ、いいわ。今の私は寛大だから。売り上げ報告、別名、自慢のために、嫌味には目をつぶってあげる。
「それがね。倉庫の中の物が売れたのよ。」
「倉庫の?」
さすがに驚いたのか、少し声色の変わった後輩くん。うんうん、いい反応だ。
「そうなのよ。いや〜、さすがの私も、こんなに早く倉庫の中の商品が売れちゃうとは思わなかったわ〜。」
「そうですよね…。倉庫の中にあるのって、絶対に一般ウケはしないだろ、って商品ばかりですもんね。やっぱり妄想好きな人って特殊な思考回路してるんですね。」
……………。
許してやろう。ああ許してやろうともさ!こんな心をえぐるような嫌味を言われても寛大な私は許してやろうじゃないか!
…明日覚えてろよ。




