おもちもちもち
やる気があるうちに投稿
「ほい、ほい、ほい、ほい」
「あよいしょ、あそーれ、そいそいそい」
街角で、なにやら奇声をあげる私とデージーさん。
は? 奇声じゃないけど?
「ほい、ほい、ほい、ほい」
「はいどーんどん、じゃーんじゃん」
一定のリズムを刻む私とあまりにも自由なデージーさん。
これでピッタリなんだからさすがだ。
「ほい、ほい、ほい、ほい」
「あもっと、もっと、そいやっさ」
一体何をしているのかというと……。
「よし、いい感じにもちもちしてきたね」
「ふいー、おつかれ〜」
そう、お餅を作っていたのだ。
「はーーーー、つっかれたーーー」
「まぁ量が量だもんね」
しかも超巨大槌と超巨大臼で。
どれくらい超巨大かというと、臼の方は私が丸々2人は入る2トーカ、槌は私よりちょっと大きいくらいの1.5トーカである。
そりゃ疲れるってもんだ。
「弟子ちゃんってば、こんなことに私を使うとは慣れてきたというか、肝が座ってきたというか」
「だって私筋力足りなくて木槌振れないんだもん」
私は水でパシャパシャするほうをやっていた。
まぁ確かにこんなことに貴重な人化を使うの勿体ないとは思うがお餅のためだ、仕方ない。
ということで早速あんこをかけて試食してみよう。
え? もちろんつぶあんですけど? こしあんとかナイナイ。
ではいざ!!!
みょーーーーーーーーーーーん。
「ん、おいしい」
「ほんとだ、初めて食べたけどおいしいね」
あ、デージーさん初めてだったんだ。
お餅の美味しさを布教できてよかったよかった。
「それにしてもよく伸びるね〜」
「ふふーん、そりゃあこの伝説の錬金術師デージー・グレープがわざわざやったんだから当然なのだよ」
お餅はのびればのびるほどおいしいくなる。
たしかにあんまり伸びすぎると食べにくくなるのかもしれないが、それ以上に楽しいからいいのだ。異論は認めない。
ということで出来上がったお餅に魔法の調味料をまぜまぜして……。
「お? 弟子ちゃんそれって……」
「くっくっく、ふっふっふ……あーっはっはっはっは!」
いやーみんなの喜ぶ顔を見るのが楽しみだな!
《ヒバナ視点》
「トーカちゃん手づくりお餅だって!?!?!?」
わなわなパニック公式Twitterに突如投稿されたそのツイートを見た瞬間、既に私は駆け出していた。
まぁ? これでも私は? 突撃兵のトッププレイヤーですし?
別にそこまで拘ってはないんだけど、もしかしたら一番乗りになっちゃうかもなー。拘ってはないですけどね?
いっちばん♪ いっちばん♪ わったしっがいっちばん♪
「あ、ヒバナちゃんも来たんや! えらい遅かったな〜」
くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!
「な、なな、ななななな、な、なな……」
「いやー、幼馴染ゆーてたし? さすがに1番はヒバナちゃんやろなー思っとったからのーんびり来たんやけど、まさかまさかウチの方が先やったとはなーー、びっくらぎょうてんやわほんま! かんにんな?」
うぐぐ、うぐぐぐぐぐ……うぐぐぐぐぐぐぐ…………。
「シャー! フシャー!」
「なんや威嚇しとんの? かわいいなぁほんまに」
そう言いながら顎の下を指でぐりぐりしてくるロンちゃん。
「ほれほれ、ここか? ここがええんか?」
「ふ、フシャー……ごろごろ」
くっ、悔しい! でも(ry
「それより、早く行かんと2番目も取られてまうで?」
「ごろごろごろ……はっ! そうじゃん急がないと!」
ロンちゃんのびっくりするくらい上手い顎の下ぐりぐりから逃れ、トーカちゃんの元へ駆け出す。
「きぃつけてやーー! ま、いくら頑張ってもトーカちゃんの初めてはウチが奪ってもうたから無いんや、け、ど!」
なんてこと言うんだこの幼女!!
「これで勝ったと思うなよーーーー!!!!」
「なーっはっはっはっはっは!!」
幼女の高笑いを背に受けながら、私は急いでトーカちゃんの元へと向かった。
待っててねトーカちゃん! あんな女、私が忘れさせてやるんだから!!
「…………はぁ、はぁ……お、おもちください……」
「はいはい、そんな急がなくてもお餅は逃げないってば」
辺りに人影はなし、なんとか2番目にはなれたみたい。
よかったぁ……。
くっそロンちゃんめ許さん。
「あ、そうそう、インベントリから出すと冷めちゃうからまた出さないでね」
「ふぇ? 今食べればいいんじゃないの?」
今から食べる気まんまんだったんだけど。
「ふっふっふ、実はそのお餅には秘密があるんですよ」
「ひみつ?」
どうやらトーカちゃんによると、丁度15時……今から1時間後だね、にフィールドで食べて欲しいとのこと。
「まぁ全然いいけど、なんで?」
「食べてみてからのお楽しみ♪」
うわぁ、トーカちゃんに音符マークがついてる……。
これはろくでもないぞ……。
だがしかし! 罠だと分かっていても! トーカちゃんがぺったんぺったんしたお餅をたべないなどと言う選択肢は初めから存在しない!!
いやー楽しみだなぁ、なにがあるんだろうなーとわくわくしていると、いつからいたのかめちゃめちゃ可愛い女の子がトーカちゃんの横に立っていた。
……いや、トーカちゃんもめちゃめちゃかわいい女の子なんですけどね!!
「どう? そろそろ人集まってきた?」
「んー、まだ2人だけど……まぁそろそろいっぱいくるでしょ」
この声どっかで聞いたことある気がするんだけど……どこだっけな〜……。
「トーカちゃんトーカちゃん、新しい友達?」
「あれ、こっちでは初めてだったっけ? んーまぁそうだなぁ……友達っていうより……ペット?」
「ペッ!?!?」
ぺっぺぺっぺっぺっぺっぺっ!?!?!?
「ちょいちょい弟子ちゃん……いやまぁ間違ってはないんだけど……」
「間違ってはない!?!?」
そんな……そんな……いつのまにそんな爛れた関係を!!!
「ずr……えっちなのはよくないとおもいます!!」
「いまずるいって言った?」
「よくないとおもいます!!」
「ふふっ……あーおかし、デージーさん、ネタバラシしてあげて」
ん? デージーさん?
デージーさんってたしか……。
「はいはーい。しゃららららーん」
謎の美少女がそう言うと、ボフンという音と共に煙が身を包み、それが晴れると……。
「じゃじゃーん、突如現れた謎の天才美少女ちゃんの正体は、みんなのアイドルしらすでした〜」
いつもトーカちゃんが侍らせているねこが現れた。
「??????????」
????????????
「あ、だめだヒバナがアホの顔になってる」
つまり……つまり?
「ほら、前言ってた昔の錬金術師、あれがこのデージーさんなの」
あっなるほど! それでペットか!
たしかにテイムモンスターだからあながち間違いでもないのねなるほど。
「はーいというわけで、禁忌で伝説、ちょっぴり可憐な世界一の天才美少女錬金術師、デージー・グレープでーす。よろしくにゃん?」
またもやボフンと煙を出すと、しらすの時のねこみみを生やした美少女……もといデージーさんが立っていた。
くっあざとい……そしてかわいい……。
てか可憐のルビおかしくなかった? 気の所為?
「ちなみに300歳だよ」
「ちょっと弟子ちゃん!! 17歳で不老になったから実質17歳なんですー!」
「はいはい、かわいいかわいい」
そう言いながら慣れた手つきでデージーさんの頭を撫でるトーカちゃん。
「くそ! こんな、こんなのなんかに屈しな……ふにゃあ」
あ、また猫になってる。
うわぁめっちゃ気持ちよさそうに目細めてる……喉もあんなに鳴らしちゃって……。
ってちょっとトーカちゃん!? 手馴れすぎてません!?
うぅ……最近トーカちゃん私のこと全然撫でてくれないのに……。
「ん? ……ふっ」
「なっ!」
あの猫!! 今絶対こっち見て嘲笑った!!!
くっ! 気づいてトーカちゃん! その猫とってもじゃあく!!
「ふんっ!」
「あっ」
急いでトーカちゃんからしらすをひっぺがして距離をとる。
「あーーれーー」
しらすはされるがままに私に運ばれていった。
「トーカちゃん! この猫あぶないよ! 気をつけtうわなにこれすっごい伸びる」
こう、なんていうんだろ……今しらすの前足の辺りを両手で抱えて、ぶらーんと胴体が垂れ下がってるんだけど……なんか、すっごい伸びる。
「ふふん、ねこは液体だからね」
そ、そうだったのか……。
テレビとかでちょくちょく見るけど、生だとやっぱ違うね……。
「そ、れ、よ、り……とつぜん私をトーカちゃんから取り上げるなんて」
またまたボフンと煙がたつと、人型になったデージーさんがゼロ距離に現れた。
「そんなに私が欲しかったの?」
「な、ななな、な、な、な……」
さっきまでしらすを抱えていた腕はデージーさんの腰の辺りにあり、逆にデージーさんの腕は私の背中に回され、抱き合うような……いやようなというかまんまの形になる。
そしてなにより顔が近い!
「それならそうと先に言ってくれたらよかったのに〜」
「あ、いや、その、えっと」
離れようとしても背中に回された腕はピクリとも動かず、せめてもの抵抗に首を逸らそうとしても止められ逃げられない。
お互いの吐息がかかる程の距離で、葡萄のような紫色の瞳にまっすぐ目を見つめられる。
それが無性に恥ずかしく、慌てて目を逸らすと、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように三日月を描く口が目に入った。
リップの塗られていない唇はそれでも充分なみずみずしさがあり、血色のいい薄ピンクは少女のようなあどけなさを持ちつつたしかな色気を放っていた。
そしてそんな唇が段々と近づいて……段々と近づいて!?
「ふふ、かわい」
「ひゃ、わ、あの! わわわわわ」
やばい、やばい、顔が熱い。
逃げようにも逃げれないし、というかこんな可愛い人ならもうっていやいや何考えてるの私あーもう頭まわんないよ!!
ぐるぐるぐるぐると半分混乱している内にもう唇はすぐそこまで迫って来ていて、まともな思考ができないままにきゅっと目を閉じた。
「…………ふえ?」
いつまでもやわらかい感触が来ないと目を開くと、そこに綺麗な顔はなく、あるのは謎の白い物体だった。
これ……手?
「人の幼なじみに手出さないでくれる?」
声のした方を向くと、ちょっとムッとしたトーカちゃんの姿が。
「と、とぉかちゃん……!!」
もしかしてトーカちゃん、私の事守ってくれたの!?
あっ……天使……大天使トーカちゃん……。
「にゃはは、じょーだんだってば」
「ほんと?」
「ホントのホント、弟子ちゃん怒ると怖いもん」
それは、すごくわかる。
「うぅ、トーカちゃん!! そんなに私のことを!!」
「あーはいはい、だいじだよーひばなちゃーん」
「軽い!?」
まったくもートーカちゃんったら照れ屋さんなんだからー。
「うへ、うへへ」
「うわぁ……」
「そんな目で見ないでよトーカちゃん! 仕方ないじゃん!!」
はードキドキした。
いや、ほんとに、まじで、すっごく。
心臓に悪いよ……。
「じゃ、そろそろ普通のお客さんも来そうだから、ほら行くよデージーさん、ヒバナもまたね」
「はーい」
「ん! またねトーカちゃん!!!」
挨拶を交わし、てくてくと出店の方に戻っていくトーカちゃん。
私も行くかなーと思っていると、ちょいちょいと手招きをしているデージーさんが目に入った。
「?」
なんだろうと近づくと、デージーさんは私の耳元に顔を持っていき……。
「続きはまた今度ね」
「んにゃっ!?」
そう言った。
一気に体温が上がるのを感じながら振り向くと、デージーさんはもう既にこちらに背を向けて歩いていた。
「う、うぁうああうぅぅ」
たすけてトーカちゃん、私もうどうにかなっちゃいそう。
あれから私はお昼の衝撃を忘れるためひたすら狩場を周回し、気が付けば約束の15時まであと5分のところまできていた。
「お、もうそんな時間か」
インベントリにトーカちゃん印のお餅があるのを確認し、その辺をてくてくと歩いて時間を潰す。
「よし! 15時なった!」
原っぱにレジャーシートを敷いて座り、お餅を実体化させる。
「これは……きなこだ! さすがトーカちゃんわかってるー」
私がお餅の中できなこが1番好きってちゃんと覚えててくれたんだ!
「いっただっきまーす!」
るんるんな気分のまま、お餅を口に運ぶ。
「ん〜! 美味し〜♪」
噛めば噛むほど広がるお餅の甘さときなこの香り。
やっぱりお正月はお餅だね〜。
てかめっちゃ伸びるねこれ。おもしろ。
あれ、夢中になって食べてたらもう無くなっちゃった。
あーーーー! 美味しかった。
やっぱトーカちゃんの手づくりしかかたん!
「あれ、そういえば結局仕掛けってなんだったん……」
《トーカ視点》
《プレイヤー「ヒバナ」をキルしました》
《プレイヤー「ロン」をキルしました》
《プレイヤー「カゲロウ」をキルしました》
《プレイヤー…………
「あーっはっはっはっは!」
「うわぁ邪悪」
ログが! ものすごい勢いで流れていく!
っはー気持ちいい……。
え? 何をしたのかだって?
またまたー、皆ももうわかってるでしょ?
そうだね起爆粘土だね。
おもちに起爆粘土をまぜまぜし、それを口で食べる。後はもう芸術は爆発なんですよ。
また、今回はいろいろとバリエーションを用意してみました。
ひとつはきなこ、これは体が端から消滅していく。
次にあんこ、これは体が内側から爆発する。
最後に磯辺、こいつが1番エグいんだけど、お腹から鉄板がバーン! って出てきて、それが体を潰す感じで挟む。
海苔で挟む磯辺焼きを再現してみたんだけど……ちょっとトラウマレベルかもしれない。
反省反省。失敗は次に活かしましょうね。
ま、それはともかく! 今回も大成功だったね!
早速別で作っておいた起爆粘土抜きのお餅で乾杯しよう。
勝利のお餅! みょーーーーーーーーーん。
ん〜! おいしい! いつもあんこばっかりだけど、たまには磯辺焼きも悪くないね。
「あれ? 弟子ちゃんもしかしてそこにあったお餅食べた?」
「え、うん」
「あーーーーーー、うん。なんでもないにゃ♡」
「は?」
え、なに……?
ん? なんかお腹辺りに違和感が……。
その瞬間、私のお腹を突き破って、2枚の鉄板が現れた。
「ヒッ……たすけ」
「いやー、やっぱり悪いことって帰ってくるんだね〜。みんなも気を付けるんだよ♪ ちゃんちゃん♪」
怖い話します。
この話書いてて、大体3分の2くらい書き上がった時にGo○gleが落ちてデータが1回全部飛びました。
ほんとに許さない。




