表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その悩み、筋トレで解決できます!〜俺のジムに変人しか来ないんだが〜  作者: プロテイン長田


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/13

第1話「第一会員、来る!」

「コレハコレハ、コンナトコロニ、ジム、デキタンデスネェ〜!!」


 ここは都会でもなければ田舎でもない。絶妙な立地の商店街の一角。


 高橋たかはし しゅうは、そんな場所に念願の個人経営ジムをオープンした。


 いや、厳密にはまだ――


「あ、あの……まだ機材運び込んでる段階なんで、オープンは来月――」


「オーウ! Hammer Strength(めちゃくちゃ発音のいい英語で)デスネ!グッドチョイス!」


 この人は、搬入作業中にいつのまにか敷地に入ってきていた外国人のトムさん三十五歳。身長はおそらく二メートルを超えている。超でかい。


 いや、でかいのは身長だけではなく――


「コレハ、ドコニハコビマスカ?」


 積み重なったプレートがまとめられた塊を悠々と持ち上げるトムさん。


 そのタンクトップから覗く筋肉が躍動した。


「でっか……ってイヤイヤイヤ! なんでナチュラルに運んでんすか!」


「ホワイ!? ハヤクハコブ、オープンスル! トレーニングハッピー! オーケー?」


 何故か急に語彙力が下がったトムさん。


 高橋秀は困惑している。


 この外国人は何者なのか。


 どうして勝手に入ってきて搬入を手伝っているのか。


 いや――かなり怪しい中古業者で買った器具のため、輸送業者も勝手が分からず少人数で来たからめちゃくちゃ助かるのだが――


「あ、じゃあ……プレートはこっちに――」


 しばらく考えてから、高橋は受け入れた。


 この謎の助っ人外国人の存在を。


◇◇◇◇◇◇


 テナント前につけたトラックが走り去っていく。


 およそ数時間にわたる搬入作業。


 ガラス張りの店内に運び込まれたのはパワーラックが二台とインクラインベンチが二台。そして五十キロまでのダンベルセットだ。


「フゥ〜!!イイウンドウデシタネ!」


 キラキラの汗を拭うトムさん。


「そ、そうですね」


 いつの間にか、高橋とトムさんの間には奇妙な友情が生まれていた。


「……で、すいませんこんなこと今更言うのもおかしいと思うんですけど――」


「オーウ! バッドスメルウォーターネ! キガルニキイテヨ!」


(バッドスメルウォーター……? あぁ、“水臭い”ってことか)


「あ、あの……」


 高橋は意を決して聞く。


「あなた……誰なんですか?」


◇◇◇◇◇◇


 商店街の一角、ガラス張りの空きテナントに高橋はいた。


 先ほど運び込んだばかりの筋トレ器具たちを眺める。


「……ほんとに始めるんだな」


 念願の個人経営ジムの開業。


 有名二十四時間ジムのフランチャイズオーナーになることも考えたが、高橋にはある考えがあった。


 “会員の悩みに寄り添いたい”


 彼自身、コンプレックスを抱えた青春を過ごした。


 体型の悩みは、相談しづらい。解決も苦難が伴う。


 そんな過去を筋トレに救われた彼は、同じ悩みを抱える誰かの支えになろうと考えたのだ。


 ここは、そんな考えを持つ彼の第一歩。


 サラリーマンを辞め、貯金を注ぎ込み、正直正気とは思えないタイミングでの挑戦だった。


 高橋がその行動に踏み切った理由は、もう一つ――


「うまくいけば……もう一度、彼女に会えるだろうか」


 高橋は呟いた。


 彼の頭の中に、いつまでも忘れえぬ存在。


 名前も知らないその女性。顔すらも朧げにしか覚えていない。


 しかし、絶対に忘れられない。


 あの鍛え上げられた筋肉。あの血気迫るワークアウト。


 大学生の時、寂れた個人経営ジムで出会った彼女は「個人経営のジムを巡る」というイカれた趣味を持っていた。


「ま、期待せずに頑張るか――」


 高橋はすでに運び込まれていた受付用の机に置かれた段ボールの切れ端を拾い上げる。


「まさか、オープン一ヶ月間前で……宣伝も一切してないのに会員が増えるとはな」


 そこには、先ほどまで高橋と搬入作業で汗を流したトムさんの個人情報がびっしりと書いてあった。


 商店街のステーキハウス“トムズグリル”の店長さんらしい。


 高橋はこのジムを開くためにこの地域へ越してきたため、土地勘がないが――


「お礼にあとで食べに行ってみるか」


 そう思いながら、店の場所を調べようとスマホを取り出す。


「おっと」


 入会書類代わりにされた段ボールを落としてしまった。


 そして気づく。その裏面には――


『トムズグリル十パーセント割引券』


 と書かれていた。


「やったぁ」


 高橋は今日の出来事を“奇妙な一日”として処理した。


 しかし、その認識は甘かった。


 誰かのために、そして自分のために立ち上げた個人経営ジム。


 そこに集まるのは、変人ばかり!


 高橋のジム経営が、始まる――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ