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“怪物”伯爵は愛妻家♡ 〜嘘がつけない人造花嫁は、拗らせ夫とクセ強使い魔に甘やかされる〜  作者: 藤崎まみ
第3章 思い出話と惹かれる心

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3



「そいえばさ、上から見えたんだけど屋敷広くしたんだな。離れとか?」

「あれは浴室だ。ベルフェリアには毎日入浴する習慣があったから、温泉施設を用意した」

「温泉?ないだろ、この辺には」

「えと、掘ってもらいました……」

「そうかー。掘っちゃったんだな、温泉」



ヴィクターがドヤ顔で胸を張り、ベルフェリアが気まずそうにしているのをみて、すぐに察したヘンリー。


一瞬でヴィクターが張り切って暴走したことを理解したヘンリーは生暖かい目をする。

同時に、内心では不器用なヴィクターがベルフェリアと上手くやっていることに安心していた。


アイゴールが、ヘンリーのワインの世話をしながら口を挟む。



「ヴィクター様も随分気に入られて、頻繁に入浴してますよ。ヘンリー様も是非温まってきてはいかがです?」



夕食のあとでも、と勧めたアイゴールだったがベルフェリアがやんやり止めに入る。



「温泉は、泥酔時に入ったら危険です。まだたくさん飲まれるなら、先に入ってきた方がいいと思います」

「ヘンリーは持ってきた酒は、毎回一滴残らず飲み尽くす。……今回は無駄に量が多かったな」

「よし!ヴィクター、今入ろうぜ!ペップス、行くぞ!」

「バァァァ!」

「……なんで私まで一緒に行くんだ」



有無を言わせずヴィクターの首根っこを掴んで、ずりずりと浴場へと向かっていくのをベルフェリアは見送った。


……完全に拒否はしないんだ。


ベルフェリアはヴィクターがヘンリーを受け入れていると感じていたが、実際は無理やり連れていかれる時は抵抗しても無駄だと経験でわかっていただけだった。


ジャスティンの後を追いかけ回していたペップスが、呼ばれてヘンリーの後をトコトコと追う。



「…か、髪の毛、全部毟られるかと思いましたぁぁぁ」



ジャスティンは、ほっと安堵のため息をついていた。


ヨロヨロとするジャスティンを労うベルフェリア。


彼女もヘンリーの纏う陽気な空気に少しだけ緊張していて、疲れを感じていた。


メアリーがそんなベルフェリアに気づく。



「ベルフェリア様、お疲れですか?堅苦しい方ではないので、この後は放っておいてもいいんですよ」

「そんな、一応お客様なのに……」



相変わらず辛口のメアリーに、ふっと笑みをこぼすベルフェリア。



「お二人って全然タイプ違いますよね?なんなら、ヴィー様は、ヘンリー様のような方苦手そうだから、仲良いの意外でした」

「ははっ!そう思うのも無理はありませんな。

しかし、私達と契約する前からの仲と聞いております」



割と失礼な感想を口にするベルフェリアに、アイゴールが笑いながら、時間つぶしに話を始めた。



***



ヴィクターは、地方貴族の男爵家の妾の子として生まれた。父親は仕事と女遊びで忙しく、家庭を顧みない男だった。


早くに亡くなった母の泣け無しの遺産で、王都の魔術学校に進学したヴィクター。


既に母方の姓を名乗っていた。

幼い頃から膨大な魔力を保持していたが、顔の痣と持って生まれた暗めな性格から、王都でも浮いた存在となっていた。


しかも得意とする魔術は闇魔法だ。


闇魔法というのは、火、水、風、土、という基本的な四属性より強いとされている。つまり、相性が悪いといってしまえば簡単だった。


秀でた力は恐れられ、忌避された。


成績が良かったため、王都で研究室を与えられたヴィクターは、より一層の『魂の研究』にのめり込んだ。


実験に人間を使うわけにいかず、弱った野生動物などを集めて行っており、それは周囲をより遠ざけた。


『ヴィクター・ブランケンシュタインは天才だが、野生動物を痛めつけている』

『死者の魂の研究までしていて、死人の軍隊でも作るつもりだ』


おどろおどろしい噂ばかりだったが、騎士育成学校に同時期に通っていたヘンリー・クラーヴァルは、強く惹かれていた。


ーコンコンッー


噂を聞きつけたヘンリーがヴィクターの研究室のドアをノックし、返事を待つ前に中へ入った。



『お前がヴィクター・ブランケンシュタインか?』

『……騎士見習いがくるようなところではない』

『俺に、使い魔との“魂の契約”方法を教えてくれ!』

『はぁ……?』



ヘクターは中流家庭の平民で、周りと差を付ける強さを手にしたいという野望があった。


ヴィクターは、魔術師になるため研究をし始めたばかりで、魔術式として確立するにはまだまだ先の長い段階だった。



『魔術式はまだ未完成だ。正式に発表したら、勝手に使えばいいだろう』



魔術師は、魔術式を提出し国に許可が得られれば、国に所属する全ての魔法使いに公開することを条件に報奨金や地位が与えられた。


新しい魔法を生み出すというのは、魔術師として人生をかけて行うようなものだった。


ーーヴィクターは必ずやって見せる自信があった。



『それじゃ遅い。騎士育成学校で何らかの功績を残せなきゃ、平民上がりは一生下っ端扱いだ』

『私の知ったことじゃないが?……そもそも、お前は誰だ』

『ヘンリー・クラーヴァル。未来のエリート騎士だ』



ヘンリーの目は、熱意と希望に溢れ、まさに夢見る少年でヴィクターは嫌悪感で彼を睨みつけていた。


この日から、いち早くヴィクターの魔術を使いたいヘンリーに追いかけ回される日々が始まったのだった。




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