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怪物伯爵の花嫁〜孤独な怪物の為に造られた人造人間の恋模様〜  作者: 藤崎まみ


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目を覚ました少女は、久しぶりの肉体の感覚にぼんやりとしていた。

ふわふわのバスタオルで体を拭かれ、全裸のままタオルを巻かれた少女は、絨毯の上に座り込む。



「……『花嫁』って、あの花嫁ですか?」

「そうだ。私が黄泉の世界から君の魂を呼び寄せた。その身体は私が作り上げた依代(よりしろ)で、君はいわゆる人造人間だ」

「人造人間…!?」



そっとベルフェリアの頬を触れて、魂の定着を確認するヴィクター。


じっとまるで診察する医師のように観察するイケメンの後ろに、アイゴールと二人の女性が立っていた。

動揺する少女を見かねた執事アイゴールは、メイドのジャスティンとメアリーに花嫁の服を用意するように指示し、一歩前に出た。



「失礼ながら、わたくしアイゴールからご説明します。

この方はヴィクター・ブランケンシュタイン伯爵です。 貴女を心から切望し、この世に生み出しました」

「はぁ…」

「私も説明くらいできる…。まぁいいか」


事の経緯と、今自分に置かれた状況を丁寧に説明された。



***



メイドにシンプルなワンピースを着せられた少女は、ふかふかのソファに座らされ、隣に立つヴィクターを信じられない顔で見つめた。


こんなイケメンが引きこもりの根暗で“怪物”で、彼女もいないなんて信じられなかった。

…この世界の美意識はおかしいんだろうかとすら思っていた。


そして、ならば『理想の花嫁』を作ろうという発想に至ったことに軽く引いていた。



「マッド“サイエンティスト”だぁ…やば」

「…なんだそれは。言語形態は調整出来たはずだが、この世界に無い言葉か。ふむ、なかなか遠いところから来たようだな」

「この世界にヴィクター様の求める条件に合う魂がいなかったということですね…」



ヴィクターはじろりとアイゴールを睨みつけるが、当の本人は視線を合わせず、けろっとしている。


魔法や魔術があるこの世界に科学者はいなかった。


生まれたばかりの少女は、頭では理解出来たが、どこか夢見心地で思い出そうとしても前世の詳しい記憶が靄がかかったように不鮮明だった。


…これはいわゆる“異世界転生”か。人間じゃないけど。


とぼんやり思案するが、どこかまだ他人事だった。



「…わたしってこの世界で人として生きられるんですか?」

「勿論だとも。国にも許可を取って研究を開始した。

君の名前はベルフェリア・オニキス・シェイド・ブランケンシュタイン。今日から正式な私の妻だ」

「…えー?名前長い…」



嘘が付けない彼女は、小さな声で文句を口にした。

驚いて口に手を当てるベルフェリア。

気を使って、綺麗な名前ですねと言おうとしたのに、口から出たのは本音だった。



「……ご、ごめんなさい」

「言い忘れましたが、ベルフェリア様には〈決して嘘がつけない〉という誓約が魂に結ばれております」

「そう、なんですね…。魔法ってなんでもありだなぁ」



ピクリと反応したヴィクターだったが、“妻”といったことには拒絶の言葉がないことにソワソワしつつ、じっと花嫁を見つめた。


アイゴールは、主人が荒っぽいことをしないかハラハラしていた。

その気になれば、この男の持ち合わせる莫大な魔力で、自暴自棄になって暴走すれば街の人間などひとたまりもない。



「もう戸籍を用意してしまっている。…屋敷の中ではベルフェリアと名乗ればいい」

「それくらいなら。…ベルフェリア、うん。かわいいかも」

「そうだろう。二年間、毎日考えた名前だ」



どこか誇らしげに胸を張るヴィクターを、ぼんやり見上げるベルフェリア。どうやらこの男は本気で『理想の花嫁』像を現実に作り上げた様だ。


つまり、今この自分の意思で動かせる肉体が彼の理想の外見。


身長は以前の体と余り変わらず平均的で、体型は華奢だが程よくついた筋肉と脂肪。腰まで伸びたシルバーの髪は栄養が行き届いており、ツヤツヤしていた。


先ほど裸だった時に視界に入っていた、ぷっくり膨れた胸は爆乳とは言えない普通サイズだった。


自分の体をぺたぺた触るベルフェリアに、ヴィクターは不思議そうにする。



「どうした。体に違和感があるか?」

「いいえ。てっきり引きこもりの“オタク”気質の男性は豊満な女性がタイプだと思ってました。

…こーんな、腕で支えきれない程の胸に作られなくてよかったなぁって」



腕で胸から床に向かって、大袈裟な胸の膨らみのジェスチャーをする花嫁に、ギョッとするヴィクター。



「な、何だその偏った知識は!?

そんな非現実的な胸を待つ人間が存在するはずないだろう!」

「“二次元”の話ですよ〜」

「さっぱり分からない…!」


「はははっ!」



説明を終えたアイゴールが後ろに控えていたが、二人の会話の緩さに笑いを漏らす。

…気になるところは胸なのかと、ツボってしまった。


現代の日本のお色気系萌えキャラを思い浮かべたベルフェリアに、全く理解が及ばないヴィクターだった。

らしくもなく声を荒らげてしまったことに、咳払いをする。


ヴィクターは彼女に確認したいことがあった。



「…ベルフェリア。君はこれから、夫婦として私と生きることが出来るか?」



それは嘘をつけない彼女に対して、自分を受け入れられるのかという究極の質問だった。

傍で見守っていたアイゴールは、もし花嫁が拒絶した場合どんな目に会うのかと、ゴクリと生唾を飲む。


…主人が一番恐れていたのは、花嫁からの拒絶だと知っていたからだ。


ベルフェリアの魂の未練は、恋愛が出来なかったことと幸せな結婚をして見たかったことだった。


転生してみれば、夫となる相手はイケメンで、それも自分は人間不信の男がわざわざ作り上げた『理想の花嫁』だという。


…浮気なんて考えもしなさそうだった。



「…うーん。嫌ではないです」

「そ、そうか…!」

「ただ、…肉体関係を今すぐと言われたら、まだちょっと」



ベルフェリアの受け入れる返事に食い気味で近寄り、隣に腰を下ろすヴィクター。

肩に触れようと後ろから手を伸ばしたところ、ぎゅっと眉間に皺を寄せるベルフェリアが勘違いしている事にギョッとする。



「だから…!私はそのために花嫁を作ったんじゃない!」

「いやいや、伴侶を作ったんですから。あながち的外れではないでしょう」

「アイゴール…!もう黙ってくれ!」



余計なことを言うなと焦るヴィクター。

拒絶されなかった喜びと性的な欲求の為に作ったんじゃないと証明したい焦る気持ちが入り交じる。


ベルフェリアの魂を吹き込んでから、ずっと感情が高ぶっていて普段の自分とはかけ離れていて落ち着かない。


…不思議とそれも悪くないと感じていた。



「夫婦として寄り添いたいだけだ… 。独りは嫌だろう」



ベルフェリアの前世は肉親からの愛情は貰えなかった。しかし、養護施設で自分よりもっと酷い目にあってきた子や親切な職員に出会えた。


施設を出て、いざこれから一人で生きていく、そんな時に命を落とした。…幸せになれるなんて保証はどこにもなく、酷く心細い気持ち抱えていた。


ヴィクターはきっと同じ寂しさを抱えた人なんだろう、と考えていた。


…それでも、ベルフェリアは恋愛感情や愛情を知らない。できるかと言われても自信が全くなかった。



「…まだ、好きとか分からないです」

「それは私も同じだ。だが強く君を求めている。

…どうしたら受け入れられる?」



まっすぐ見つめられて、色白で素晴らしく整った美しい顔に頬を染める。


…嘘が付けないなら正直に言ってしまおう。



「恋がしたいです。

…貴方に惚れさせてください」



誓約で縛られた、嘘偽りのないベルフェリアの言葉に、ヴィクターは強く胸を打たれていた。


…な、何だこの、可愛らしい素直な生き物は…。



「……努力しよう」

「はい、よろしくお願いします」



ヴィクターは初めて、他者に対して愛おしいという感情を知った。

二年の月日をかけて、一から作った花嫁の体。情が移るのも無理はなく、実際に自我が芽生えて動く姿だけても込み上げるものがあった。



「ところで、旦那様の一体どこが“怪物伯爵”なんですか?人造人間作っちゃうやばいところですか?」

「……あぁ。これだ、見た方が早いだろう。

生まれた時からこの痣がある」



いつかは気づかれてしまうと、前髪をかきあげて額の左側の赤い痣を見せるヴィクター。生まれつきあった痣は成長とともに大きく濃くなっていた。


じっとそれを見つめるベルフェリア。

…気持ち悪いと言われてしまうだろうと目を伏せるヴィクター。



「あぁ!“サーモンパッチ”ですか?それは“天使のキス”とか言うんですよ」

「……」

「旦那様の肌は白いので濃く見えちゃうんですね」



顔色一つ変えないベルフェリアに固まるヴィクター。



「私もおでこの真ん中に…あ、えと前の記憶です」

「…まだ、定着して間もない。記憶が混在するのは仕方ないことだ。

…気味が悪くないのか」

「えぇ、全く。ホクロみたいなものですよね?」



記憶が曖昧で戸惑うベルフェリアに、安心させるように寄り添うヴィクター。肩に大きくて温かい手が置かれ、小さくほっと息をつくベルフェリア。


どこかふわふわとした感覚が心細くて、触れられた体温に強く安堵を覚えていた。


ヴィクターは、ベルフェリアの肩を抱きながら、すんなりと自信が抱えていた不安や悩みの原因がなくなってしまったことに心が震えていた。



「あったかい…。もう少しこのままでもいいですか?」

「あぁ。…寒いか?」

「いいえ。なんだか旦那様の手、ホッとします」

「…ヴィクターでいい」



ぎゅっとベルフェリアを胸に抱き寄せてソファに座るヴィクターは、素直に甘えるベルフェリアに胸の奥がぎゅうっと締め付けられていた。


ベルフェリアの前世の言葉で表すならばそれは

ーー“嫁しか勝たん!”状態であった。


二人の馴れ初め(?)が上手くいったのを確認したアイゴールは、ほっと安堵の溜息をつくと夕食の準備へと向かった。




お読みいただきありがとうございます。


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