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“怪物”伯爵は愛妻家♡ 〜嘘がつけない人造花嫁は、拗らせ夫とクセ強使い魔に甘やかされすぎて危険です〜  作者: 藤崎まみ
第2章 怪物屋敷で家族ごっこ

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3



温泉掘った日から数日後。


ヴィクターは、ベルフェリアがジャスティンと戯れながら洗濯を干しているのを影で確認しながら、緊急会議を開いていた。


呼び出された、アイゴール、アガサ、メアリーが研究室のソファで神妙な顔で手を組むヴィクターの言葉を待つ。



「浴室の件だが。

建築も無事終わり今日から入浴できる手筈にはなった。

……しかし、ベルフェリアが全然嬉しそうじゃないのはなぜだ!?」

「はぁ……」



何か重大な命令でも申し付けられると思っていた使い魔の3人は、それぞれ体の力を抜く。


アイゴールは、これみよがしに頭を振って呆れ返っていた。


メアリーが呆れながら、自分のうさぎの耳を指で撫でつつ口を開く。



「なぜと言われましても、やりすぎだからではありませんか?元々、ベルフェリア様は温泉に入りたいとは仰らなかったですし」

「前世の国では至る所にあったと言っていた。

毎日入浴するなら、どうせなら体にいいものがいいだろう?」



心底分からないとばかりに頭を抱えるヴィクター。

アイゴールが見かねて、口を挟む。



「シャワーヘッドに付けた、軟水変換器のフィルターは喜んでいたではありませんか。

喜ばれるという点では、成果は出ているのでは?」



友人の騎士であるヘンリーが軍の遠征などに使っている、非常用に飲水の浄水に使っているフィルター。

それをシャワーヘッドに取り付ければ、ミネラル分を取り除き軟水にできるのでは、と閃いたヴィクターが取り寄せていたのだった。


ベルフェリアはそれを見た時には、髪の毛のガサガサから解放されると確かに嬉しそうにしていた。


ーーしかし、その後すぐ。



『ヴィー様、お風呂とか色々ありがとうございました。

……でも、次からは環境破壊は避ける方向でお願いします』



またもやり過ぎだと、言われてしまっていた。



「そもそも私の所有の土地で、()()()人的被害も一切出さなかったのに…!」

「街の代表から一体なんの爆発だと、問い合わせは来ましたけどね」

「……ヴィクター様。もしや、私の地中に向けて放った衝撃波が怖かったんでしょうか。

話に聞いている、ベルフェリア様の前世はかなり平和だったように思いますし」



アガサが、自分の行動がベルフェリアを怖がらせてしまったかと反省していると、メアリーが首を振る。



「いえ。あの後お話を聞いたら、

『アガサは攻防兼ね備えた“スーパーヒーロー”みたい』となかなか図太い感想を述べられていました」

「つまり、ヴィクター様の突発的な行動についていけてないだけでしょうな。はっはっは」



アイゴールとメアリーが、ドン引かれてて笑える、とばかりにヴィクターをからかうのを見て、アガサが苦笑する。


使い魔に馬鹿にされようと、それどころではないヴィクター。

彼が一番ショックを受けていたのは、ベルフェリアの反応が薄いことだった。



「なんというか、もっとこう…!

感激のあまり、ギュッと抱き着いてくれるとか。

メロメロになってお礼にキスを許してくれるとか……あるだろう!?」



自宅で温泉に入れるという少し贅沢な環境を整えれば、ベルフェリアが感激して、夫婦関係が一歩進展するかもしれない。ヴィクターは本気で思っていた。


つまり、下心は全くないと言う訳ではなかったヴィクターは、愛する嫁からの甘い“ご褒美”が欲しかったのだ。


使い魔たちはやっとヴィクターの求めることが分かった瞬間、酷くガッカリした目で主を見ていた。


ベルフェリアが泣いてしまった修羅場の時に、あれだけ見返りは要らないと言っておきながら、本音は下心たっぷりだった。



「さて、そろそろ仕事に戻りましょう。メアリー、入浴の準備を」

「はい。湯あたりさせないよう、気を付けます」

「湯上りにフルーツ牛乳でしたね。ミックスジュースから作りましょう」


「まて、まだ話は終わってないぞ!」



拗らせてめんどくさいことになっているヴィクターを放っておいて、もう一人の主人であるベルフェリアの世話をしようと動き出していた。



「……髪を綺麗に保ちたいなんて。多少なりとも意識しているに決まってますのに」



ボソリと呟いたメアリーの女心の的を射た意見は、ヴィクターには聞こえなかった。



***



一方、ジャスティンと戯れるベルフェリア。


ベルフェリアは、キョロキョロ、ウロウロと無駄な動きの多いジャスティンの行動が見ていて飽きなくて、好ましかった。


……チョロチョロ動くのが、小動物を見てるみたいで、とってもかわいい。



「ベル様、その、すみません、いつも手伝わせてしまって…」

「ジャスティンさんの邪魔になってないなら。

……実はずっと気になってて、もしかしてリスの尻尾はついてますか?」

「はぅあ…!!!」



メアリーにはうさぎの耳が着いているので、ジャスティンにはもしかしたらしっぽがあるではないかとずっと気になっていたベルフェリア。


ふんわり盛り上がったメイド服のスカートからは見えなかった。


ベルフェリアの視線がおしりに向かうと、ジャスティンの挙動が余計おかしくなる。



「みみみみ、見せろと言われましたら、その、見せないと行けないので、お見せすることになるかと思うんですが、その……」



顔色が悪くなるジャスティンに、ベルフェリアは見られたくないことだったかと少し焦る。


…そういえば、わたしの言うことを聞くようにいわれているんだった。



「ご、ごめんなさい。見せたくないなら見せなくていいんです。……おしりのことなんて嫌よね」

「あぁそんな…!ち、違うんです、見られたくないとかじゃなくて、その、見せたところでガッカリされたらショックと言いますかぁぁぁ」



ガッとスカートの裾を捲ろうとしたジャスティンの腕をベルフェリアが掴んで制止する。


ほんの思いつきの好奇心だけで、ジャスティンにセクハラする訳にはいかない。

ジャスティンからすれば、こんなことで機嫌を損ねたら怒られるとパニックになっていた。



「いいのいいの!ほんとにいいの!」

「いえいえいえ」


「……一体何を戯れていらっしゃるのです?」

「「わー!!」」



背後からぬっと音もなく現れたメアリーに、声を出して驚く2人。

別にやましい事はしていないのに、心臓が飛び出そうになるベルフェリアとジャスティン。



「めめめ、メアリーさん!違うんです!

尻尾を出し惜しみしてるわけじゃなくてですね…!」

「出し惜しみって、……ふっ…ははっ!」

「まぁ、ベルフェリア様。とても楽しそう。

……ジャスティン、良い仕事しますわね」



つい一連の流れがくだらなさすぎて、笑いが漏れたベルフェリア。


ほんの小さなことだったが、ベルフェリアが声を出して笑うことは、前世では滅多にないことだった。




お読み頂きありがとうございます!

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