45 ウマを探して、草原に向かいます
オオカミの赤ちゃんの新しいママが見つかったところで、ボクは天空城を再び大空へと飛ばす。
空飛ぶ島は、コケッコーと鳴くニワトリに加え、メェーメェーと鳴くヒツジ、ミャーミャーと鳴く赤ちゃんオオカミのおかげで、かなり賑やかになった。
動物たちとのふれあいが多くなって、みんなの顔も和やかになっている。
ボクもつい、動物たちと遊んじゃいそうになるんだけど……なんとか気を引き締めた。
ボクにはまだまだやらなきゃいけないことがある。
牧場にいれるための、次の動物を探しにいかなきゃいけないんだ。
残るは、ウマ、ウシ、ブタだけど……この中だと気性のおとなしそうなのは、ウマかなぁ……。
家畜としてならブタなのかもしれないけど、野生のブタはイノシシだから、捕まえるのがすごく大変なような気がする。ウシはなおさらだ。
それらを捕まえる前に、機動力のあるウマがいれば……逃げ回るウシやブタを追いかけるのに役立つような気がするんだ。
……よしっ、ウマだ! ウマにしよう!
野生のウマといえば、『ターパン』だよね。
ボクはさっそくホコラの天空石で、ターパンの居場所を調べてみる。
ウマは暑さに弱いから、涼しいところにいるはず。
それに高い山の上とかじゃなくて、エサとなる草がいっぱいある、広い草原とかにいるはずなんだ。
地図で調べてみたところ、今いる山から少し北に行ったところにある草原に、ターパンの姿を見つけた。
もっと遠くかなぁと思ってたんだけど……意外と近くで見つけることができた。
この距離ならすぐだから、さっそく行ってみよう……!
と思い立ったんだけど、はたと思いなおす。
ウマを捕まえるためには、おそらく犬のポポがいないとダメなはずだ。
とてもボクらの脚じゃ、ウマに追いつくことはできない。
でも、いまのポポは子育てに夢中……赤ちゃんのそばから一時たりとも離れたがらないだろう。
なら赤ちゃんが子犬くらいになるまで、待ったほうがいいのかもしれない。
うん、そうだ……大きくなるまで待ったほうがいい!
そう決めなおしたボクは、天空城の進路を変える。
牧場を作る予定の、草原の集落までひとまず戻ることにした。
そこでしばらく暮らすことにして、オオカミたちが親離れできるようなるまで待つことにしたんだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
……それから二ヶ月ほどが経った。
犬は60日くらいで親離れをするそうだから、それまで時間をかけたんだ。
『成長促進』を使えばすぐに立派なオオカミにすることもできるんだけど、『成長促進』はボクにとっては非常手段。
子供はできればちゃんと親の手で、思い出を作りながら大きくなってほしい……とボクは強く思っている。
そう感じるのは、たぶんボクがパパとママとの思い出を、ぜんぜん持っていないせいだろう。
ボクは赤ちゃんオオカミたちに思い出を作ってあげたくて、いっぱい遊んであげた。
ボクだけじゃない、みんなの愛情を一身に受けた赤ちゃんオオカミたちは、すくすくと大きくなっていった。
そして今や子供ながらも、牧羊犬ばりにキャンキャンとヒツジたちを追い回すようになっている。
もうポポのおっぱいは飲んでなくて、人間の与えるエサをもりもり食べている。
これなら大丈夫だろう、と思ったボクは、そろそろ再出発をしようかと思いはじめていた。
ヒツジのいる牧場と、ニワトリ小屋はすでに天空城から切り離していて、草原の集落の人たちに世話を任せてある。
ヒツジからは毛が刈れるし、ニワトリは卵を産むようになった。
牧場としても、いいカンジに回りはじめていたんだ。
ノボルさんとクルミさんは、天空城でしていた動物たちの世話が楽しかったようで、地上に戻ったあとは、牧場の集落に移り住んでいた。
でもボクがウマを捕まえにいくと知ったら、またついていきたいと言ってくれた。
自分たちが世話をする動物は、自分たちの手で捕まえたい。その方法をボクから教わりたい……!
と熱心だったので、また一緒に来てもらうことにする。
それと……大麻の花畑は、今は森の集落のほうに移してある。
大麻の花は手間がかからないから、世話については心配してなかったんだけど、繊維を採る以外には絶対に使わないようにと、それだけはしっかりお願いしておいた。
あっ……そうそう、いちばん大事なことを忘れてた!
森の集落のエイヤさんと、海の集落のスミレさんに赤ちゃんができたんだ……!
お産のときはアンジュさんとラヴィさんが大活躍。
ボクら男の子たちは、お産をしている家のまわりで、苦しい悲鳴を聞きながらパニックになるばかりだったんだけど……赤ちゃんの元気な泣き声がしたときには、みんなで抱き合って喜んだ。
ボクもこうやって、ママから生まれてきたのか……と思うと、思わず泣きそうになっちゃった。
赤ちゃんの誕生というのは、それだけでかなりの神様経験値をもらえるらしく、ボクは今までためていた経験値とあわせて2レベルアップしていた。
お父さんになったウオンさんとタチギさんは、赤ちゃんのためによりいっそう集落を発展させると張り切っている。
ボクも、赤ちゃんたちが幸せに暮らせる世界を創るため、神様としてがんばろう……! と決意を新たにしていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
牧場の動物を集めるため、ボクは久しぶりに天空城を大空に飛ばしていた。
メンバーは前回と同じ、ボク、アンジュさん、ラヴィさん、ノボルさん、クルミさん、フルール、ポポ。
そして残る動物は、ウマ、ウシ、ブタ……。
以前に決めたとおり、まずはウマを狙う。
狙っているウマである『ターパン』の目星も、もうつけてある。
海の集落から南に行って、大海原をこえたところにある草原にいるんだ。
しかし……肝心のウマを捕まえる方法については、まだぼんやりとしか思いついていなかった。
西部劇の映画とかでよく見るのは、ウマの首に縄をかけ、大勢で大人しくさせるというやり方。
ウマはとっても力が強いから、何人もの大人がいないとダメみたいなんだ。
いまのメンバーでそれができるかというと、たぶん無理だろう。
なにか、もっと別の手を考えなきゃ……。
なんて思っているうちに、目的の草原の上空に着いてしまった。
悩んでいてもしょうがないと思ったボクは、みんなを集めて作戦会議をする。
「次はウマを捕まえるんだけど……三班に分かれよう。ボクとポポとフルールが、草原にいるウマの捕獲。ノボルさんとクルミさんが森にいるウマの捕獲」
「はいっ、わかりました! どうやって捕まえればいいんですか!?」
さっそくシュタッと手を挙げて、質問してくるノボルさん。
頬を紅潮させ、かなりやる気満々のようだ。
ボクは『森のウマ捕獲作戦』について説明する。
「まず、ノボルさんがツタで作ったロープを持って、リンゴの木のそばにある、なるべく太くて高い木に登るんだ。ウマが来たら投げ縄の要領で、ウマの首に縄をかける。きっとウマは暴れるけど、ロープをあらかじめ木の幹に結びつけておけば、引きずられたりすることもないよ」
「あの……私はどうすれば……? それとどうして、リンゴの木なんでしょうか……?」
おそるおそる手を挙げて質問してくるクルミさん。
「クルミさんはリンゴの木のそばのしげみに隠れて、ノボルさんをフォローしてあげて。それとなぜリンゴの木かというと、ウマはリンゴが好きだから、食べるためによく集まってくるんだよ」
「ねぇ、アタシとラヴィはどうするの?」
名前の挙がらなかったアンジュさんが、ちょっと不服そうに口を挟んでくる。
「アンジュさんとラヴィさんは、森でリンゴを集めてきて」
「リンゴを? なんで?」
「捕まえて暴れたウマが落ち着いたときに、食べさせてあげるんだ。そうやって餌付けをしてから、牧場に連れて帰ろうと思って。森のほうはリンゴの木があるからいいんだけど、草原のほうにはないかもしれないからね」
捕まえたウマを、力ずくで連れていくのは難しそうだから、仲良くなってから一緒に来てもらうというやり方だ。
「そのリンゴって、集めたものじゃなきゃダメなの? 集落から送ってもらえばいいのに」
「それも考えたんだけど、食べ慣れた土地にあるリンゴのほうがいいと思って」
アンジュさんはしばらく考えるように唸ったあと、力強く頷き返してくれた。
「うんっ、わかった! リンゴを集めてる合間に、花を摘んでもいい?」
「うん、もちろん。大麻のときみたいに、いい花畑があったら教えてね」
ボクがニコッと微笑み返すと、アンジュさんは「よぉーし、やるぞぉーっ!」とはりきりだす。
がんばってほしいのはリンゴ集めなんだけど、なんだか違う方向にがんばりそうな気がしてきた。
まぁ、やる気になってくれてるなら……いっか。
それにアンジュさんだけじゃない、みんなはなんだかやる気に包まれている。
ボクは、いいムードだ……! と思ったんだけど、ラヴィさんだけはなんだか心細そうだった。
「……あの、ソラちゃん……ウマを捕まえるのって、あぶなくない?」
どうやらボクと別の班になったので、それが心配でたまらないようだ。
「うん、大丈夫だよラヴィさん! ポポとフルールもいるから、へっちゃらだって!」
ボクは親を心配させまいとする子供みたいに、元気いっぱいに言ったんだけど……実は心のなかで謝っていた。
「……ゴメン、ラヴィさん……ボクがやろうとしている『草原のウマの捕獲作戦』は、ちょっと危険かも……」って。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:26)
今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが3あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●大地の奇跡
操地
(0) LV1 隆起 … 地面を隆起させる
(0) LV2 陥没 … 地面を陥没させる
(0) LV3 ??? … ???
噴出
(0) LV1 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV2 噴火 … 火を噴出させる
(0) LV3 ??? … ???
地動
(0) LV1 地震 … 地震を起こす
(0) LV2 地割れ … 地割れを起こす
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(1) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 マジック … 天空城の奇跡を手から出せる
神の叡智
(2) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(1) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(1) LV3 天啓 … 人間に知恵を授ける
●天空城の奇跡
高度
(1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(1) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(4) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(1) LV3 使徒成長 … 人間を使徒にする
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 生殖 … 生命を親にする
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 死者転生 … 異界から死者を蘇らせる
●水勢の奇跡
波浪
(0) LV1 小波 … 小さな波を起こす
(0) LV2 大波 … 大きな波を起こす
(0) LV3 津波 … 津波を起こす
水かさ
(1) LV1 減水 … 水を減らす
(1) LV2 増水 … 水を増やす
(1) LV3 海割り … 水を一時的に割る
操水
(0) LV1 霧散 … 霧を作り出す
(0) LV2 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV3 渦 … 渦を作り出す
水中
(0) LV1 呼吸 … 水中で呼吸できるようになる
(0) LV2 浮力増 … 水中の浮力を増やす
(0) LV3 浮力減 … 水中の浮力を減らす
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




