44 大麻とオオカミの赤ちゃん、育てます
牧場におさまったヒツジたちを見て、アンジュさんは「わぁ、かわいい!」とさっそく触ろうとしていた。
ボクは危ないよと止めたんだけど、
「平気平気、天空城に入った動物は大人しくなるって神様学校で習ったもん」
と柵のそばにいるヒツジを、両手でこれでもかと撫でまわしていた。
ボクはヒヤッとしたんだけど……でもアンジュさんの言うとおり、毛をワシャワシャにされてもヒツジたちは嫌がらず、穏やかな表情を浮かべてされるがままになっている。
さっきまで必死の形相で逃げていたとは思えないほど、メェ~とのどかに鳴き、牧場の草をムシャムシャと食んでいた。
安全だとわかると、ラヴィさんも抱きついて「わぁ、ふかふか」と頬ずりしている。
そして、おっかなびっくりで触ろうとしているクルミさん。
その首には赤い花の首飾りがついていた。
「……その首飾り、キレイだね。どうしたの?」
ボクの言葉にビックリしたのか、クルミさんはヒツジに触る直前でビクッと手を引っ込めてしまった。
そしてボクに向かって、ペコペコと頭を下げはじめる。
「はっ、はいっ! アンジュ様がお花畑を見つけられて、作ってくださったんです。ごっ……ごめんなさいっ……!」
どうやらクルミさんは、ヒツジ追いの最中にサボっていたことを、ボクが怒っていると思い込んでいるようだ。
「あっ、勘違いしないでクルミさん。ボクは別に責めてるわけじゃないよ。むしろ褒めてあげたいくらい。その花の花畑を見つけたの?」
「は……はい……」
「ちょっと、その場所を教えてくれない?」
ボクはクルミさんを落ち着かせたあと、花畑まで案内してもらう。
天空城から少し離れたところにある、山の斜面へと向かった。
「こ……こちらです……」
新人のバスガイドさんみたいに緊張気味に、かざした手で花畑を示してくれるクルミさん。
山に張りつくようにして広がる赤いじゅうたんに、ボクはときめいた。
「やっぱり……この花、間違いない……!」
「あ、あの……ソラ様……このお花が、どうかしたんですか……?」
不安そうに尋ねてくるクルミさんに、ボクは力強く頷き返す。
「うん! これは……大麻の花だよ!」
「たいま……?」
大麻の花……マリファナで有名だけど、最古の植物繊維でもあるんだ。
これは、いいものを見つけてくれた……!
それも、こんなにたくさん……!
ボクは説明もそこそこに、天空城を移動させ、『ジオグラフ』で大麻の花畑を切り取る。
これにはアンジュさんも大喜び。
女の子たちは赤い花畑で蝶々みたいに飛び回り、みんなの分の花輪をつくってくれたんだ。
お揃いの花輪にノボルさんはなんだか照れていたけど、ボクはとっても嬉しかった。
でも……大事な事を忘れちゃいけない。
大麻の花は、扱いによってはとっても危険な花なんだ。
ボクはみんなに、この花だけは絶対に火にくべないように、そして料理にも絶対に使わないようにと、何度も何度も言い聞かせる。
ラヴィさんはさっそく今日の料理の香り付けに使うつもりだったようで、危ないところだった。
これはあくまで繊維をとるためのものとして使うつもりだから、吸ったり食べたりしちゃダメなんだ。
みんながしっかりと理解してくれたようなので、ボクは本来の目的に戻り、ヒツジ追いをまた手伝ってほしいとお願いする。
「ヒツジは50匹もいるじゃない、もうやらなくてもいいんじゃないの?」
とアンジュさんに言われちゃったんだけど、
「ムフロンは雄と雌で別々の群れを作るんだよ。いま牧場にいるのはぜんぶ雄だから、雌も捕まえておきたいんだ」
「うぅん……そういうことならいいけど、雷はもうやめてよね」
「ごめんごめん、でも次は雌だから、さっきよりは楽に捕まえられると思うよ」
……ボクの予想どおり、二回目のヒツジ追いは楽勝だった。
すでに一回やっている分、みんなも手際よく、ホラ貝の息切れも起こさなかったので雷の出番もなかった。
あっさりと成功し、ボクはレベルがひとつあがる。
ずっとカラッポだった天空城の牧場にはついに、100匹ものヒツジが入った。
大麻もそうだけど、ヒツジからも繊維がとれる。
これで、布が作れるようになる……!
布が作れるようになれば、衣服や布団、そして袋が作れるようになるんだ……!
集落のみんなは今、葉っぱの服や布団なんだけど、ずっと便利な布の服や布団を使えるようになる。
それに入れ物といえば今は土器や木の箱、葉っぱで包んだりしてるんだけど……軽くて丈夫な布の袋が使えるようになれば、採取も楽になるはず。
ボクは集落のみんなの喜ぶ顔を想像して、ひとりホクホクしてたんだけど……その途中でいきなり手をひっぱられた。
「ちょっと来てっ、ソラ!」
「わあっ!? どうしたの、アンジュさん!?」
「いいからちょっと来て! 大変なのっ!!」
ボクは地に足がつく間もないほどの勢いで、アンジュさんにひっぱられる。
大変という大声を聞きつけて、みんなも後に続く。
焦り顔のアンジュさんから連れて行かれた先は……岩山の陰だった。
そこには、一匹の傷だらけのオオカミが横たわっていた。
オオカミはもう息絶えており、お腹には生まれたばかりみたいな小さな小さなオオカミの赤ちゃんがモゾモゾしている。
たぶん……群れから追い出されたお母さんオオカミが、襲われたあとに最後の力を振り絞って……ここで赤ちゃんを産んで、息絶えたんだ。
「見つけたときにはお母さん死んじゃってて……! どうしよう、ソラ……!?」
まるでオオカミのお母さんが生まれ変わったみたいに、泣きそうな顔で助けを求めてくるアンジュさん。
ボクはしゃがみこんで、赤ちゃんを抱えあげる。
「このままじゃ死んじゃうから、とりあえず天空城の庭に運ぼう」
数えてみたら赤ちゃんは15匹もいた。
ボクひとりだととても無理だったので、みんなで3匹づつ抱っこして、まるで豆腐でも扱うみたいに慎重に天空城まで運ぶ。
そして運び終えたあと、ボクは腕組みをして考えた。
さて、どうしよう……赤ちゃんオオカミを育てるのはいいんだけど、ひとつ大きな問題があるんだよね。
離乳食を食べられるようになるまでの、お母さんのおっぱいだ。
ボクは犬の知識しかないんだけど、たしか赤ちゃん犬は生後2週間くらいまではお母さんのおっぱいを飲んで大きくなるって本で読んだ。
そのおっぱいをくれるお母さんオオカミは、もう死んじゃったし……。
育ててくれそうな雌のオオカミを、探してくればいいのかな……?
いや、それはダメだ。オオカミは鼻がいいんだ。
すでに赤ちゃんにはボクらの匂いがついちゃってるから、警戒して近づいてもくれないだろう。
「ソラちゃん、どうしよう。この子たち、指をしゃぶってくるの。お腹が空いているみたい」
赤ちゃんたちの前で、しゃがみこんでいるラヴィさんが声をかけてきた。
両手の指を全部吸われながら、我が子を心配するような顔でボクを見上げている。
それでボクは思い出す。
そうだ……ボクはラヴィさんが赤ちゃんのとき、同じような問題を抱えてたんだ……!
あの時、天空城にはボクとポポとピエールと、赤ちゃんのラヴィさんしかいなかった。
食べ物をあげても全然食べてくれなくて、どんどん弱っていくラヴィさんに対し、ボクは『成長促進』で今の姿まで大きくしたんだ。
『成長促進』って、オオカミにも使えるのかな……? とスマート天空石で調べていると、いつの間にか意外な仲間が活躍していた。
それは、犬のポポだった。
大きくてモフモフの身体で赤ちゃんオオカミを包みこんでいたんだ。
赤ちゃんオオカミたちはモゾモゾしながらポポの身体に潜り込んだかと思うと……そのまま動かなくなる。
「……あっ! 見て見て! ポポが赤ちゃんに、おっぱいあげてる……!」
ポポの毛をめくりあげるアンジュさん。
そこには横一列に並んで、ポポのお腹から出ている乳首に吸い付いている赤ちゃんオオカミがいたんだ……!
「……ぽ……ポポって、女の子だったんだ……!」
ボクはずっとポポのことを男の子だと思っていたので、そのことにまず驚いてしまった。
でも、よかった……!
ポポが赤ちゃんオオカミたちの、お母さんになってくれるだなんて……!
「今日からあなたたちは私の子よ」といわんばかりに、赤ちゃんをペロペロ舐めてあげているポポ。
その姿をそっと見守るボクたちの顔は、思わずほっこりしていた。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:24)
今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが1あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●大地の奇跡
操地
(0) LV1 隆起 … 地面を隆起させる
(0) LV2 陥没 … 地面を陥没させる
(0) LV3 ??? … ???
噴出
(0) LV1 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV2 噴火 … 火を噴出させる
(0) LV3 ??? … ???
地動
(0) LV1 地震 … 地震を起こす
(0) LV2 地割れ … 地割れを起こす
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(1) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 マジック … 天空城の奇跡を手から出せる
神の叡智
(2) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(1) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(1) LV3 天啓 … 人間に知恵を授ける
●天空城の奇跡
高度
(1) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(3) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(1) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(4) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(1) LV3 使徒成長 … 人間を使徒にする
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 生殖 … 生命を親にする
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 死者転生 … 異界から死者を蘇らせる
●水勢の奇跡
波浪
(0) LV1 小波 … 小さな波を起こす
(0) LV2 大波 … 大きな波を起こす
(0) LV3 津波 … 津波を起こす
水かさ
(1) LV1 減水 … 水を減らす
(1) LV2 増水 … 水を増やす
(1) LV3 海割り … 水を一時的に割る
操水
(0) LV1 霧散 … 霧を作り出す
(0) LV2 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV3 渦 … 渦を作り出す
水中
(0) LV1 呼吸 … 水中で呼吸できるようになる
(0) LV2 浮力増 … 水中の浮力を増やす
(0) LV3 浮力減 … 水中の浮力を減らす
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




