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38 新たに牧場、作ります

『我が神、ソラ様……! どうか、海の魚や貝を、我々にお恵みください……!』


『我が神、ソラ様……! どうか、森の果物や肉を、我々にお恵みください……!』


 集落のホコラからとどいた、ふたつの願い。


 どうやら森の集落の人たちは、海で獲れるものを……海の集落の人たちは、森で採れるものをほしがっているようだ。


 天空城はいま、青空のなかをのどかに漂っている。

 爽やかな風が吹き抜ける庭を、ボクは歩き回って考えていた。


 いったいどうすれば、みんなの願いを叶えてあげられるかを……。


 庭ではボクのほかに、ラヴィさんがいた。

 鼻歌をうたいながら、洗濯したてのみんなの服を物干し台にかけている。


 ふとボクに気づくと、


「あ、ソラちゃん、今日のお昼ごはんはお芋でいい?」


 とニコニコ顔で尋ねてきた。

 ボクが「うん!」と頷くと、ラヴィさんはおそらくサツマイモが入っているであろう木箱を抱え、忙しそうに火焚き場に歩いていく。


 サツマイモは、アンジュさんの家庭菜園で採れたやつだ。

 育て方は集落のみんなにも教えてあって、森の集落のほうにはかなり大きな畑がある。


 ボクは、なんとなく家庭菜園のほうに行ってみる。

 すると、アンジュさんがせっせと土いじりをしていた。


「へへー、この前ソラにもらったミニトマトの苗、順調に育ってるよ!」


 我が子を紹介するみたいに、緑々としたミニトマトを見せてくれるアンジュさん。


 サツマイモを育ててからというもの、家庭菜園の楽しさに気づいたのか、他のものも育ててみたいとおねだりされた。

 そこでボクは、野生のミニトマトの苗を探してきて、プレゼントしたんだ。


 かつて天空城には集落があって、10人ほどの人が暮らしてたんだけど、いまはみんな地上に移り住んでいる。

 誰もいなくなった集落はぜんぶ、アンジュさんの花畑と家庭菜園のスペースになったんだ。


 ボクは、トマトに話しかけながら楽しそうに水やりをしているアンジュさんに、集落のホコラから届いた『お願い』について相談してみた。


 すると、あっさりとした答えが返ってくる。


「簡単じゃない。この天空城で往復して、届けてあげればいいだけだよ」


「……うーん、それがいちばん簡単だとは思うんだけど……それだと根本的な解決にはならない気がして……」


 すると次に返ってきたのは、壮大なスケールの答えだった。


「じゃあ、海のそばに森を作って、森のそばに海を作ればいいじゃない」


「……そんなことできるの?」


「ソラは神様だから、なんでもできるよ。まぁ、もっといろんな奇跡が使えないと無理だと思うけど……」


「そっかぁ……」


 他になにかいいアイデアはないかと、頭を抱えていると……ふと、犬のポポがやって来た。

 空になった木箱の取っ手を咥え、アンジュさんの足元へと寄り添っている。


 アンジュさんは、足元でキュンキュンと鳴くポポに気づくと、


「あ、サツマイモが欲しいんだね、はいどうぞ」


 ポポの咥えている木箱の中に、採れたてのサツマイモを入れてあげていた。

 きっと、火焚き場のラヴィさんに頼まれて、ポポがお使いをしに来たんだろう。


 それは、いつもの何気ない光景だったんだけど……ボクは閃いた。


「……そうだっ! お使いができるようにすればいいんだ!」


 ボクは、思いついたらすぐにやってみたくなる……!

 足早に天空石のあるホコラへと向かった。


 いつもオーバーオールのポケットに入れてある、スマート天空石でもいいんだけど……ホコラにある天空石のほうが、画面が大きくて使いやすいんだ。


 ホコラに飛び込むなり、天空石の画面に触れる。

 地図画面を開き、勢力図を確認してみると……森の集落と海の集落の間には、ひとつの平原が横たわっていた。


 当たり前のように赤い……敵勢力地だ。

 まず、この敵地をなんとかしよう。


 そしてそのあと整地をすれば、安全に行き来できるようになるはず。


 最初の方針を決めたボクは、天空城を動かし、問題の平原へと向かう。

 空の上からモンスターを探していると……海へと繋がる川のそばで見つけた。


 大勢のゴブリンたちが川べりに陣取って、集落みたいなのを作っている。

 ボスであろうオークの姿もある。


 よぉし、降りて戦おうかな……と思ったんだけど、もっといい手を思いついた。

 空の上からやっつけられないかと、奇跡画面を開いてみる。


 並んだ奇跡アイコンを眺めながら、考える。

 やっぱり『雷』かなぁ、と思ったんだけど……ふと『増水』というアイコンに気づいた。


 水かさを増すという奇跡だ。

 もしかしたらこれで、何とかできないかな……?


 ボクは試してみる意味もこめて、『増水』をタッチする。


 すると、地図画面に切り替わった。

 水があるところが水色に強調された、特別な地図だ。


 ダムとかの水量を制御する、端末みたいな画面。

 川や湖のなかに、青い数字が書かれている。おそらくこれが現在の水面の高さだろう。


 地図上で、ゴブリンたちの集落がある川上のあたりに触れる。

 すると水位観測所にありそうな、水位標みたいなのが現れた。


 矢印をドラッグして水位をあげてみると、青い数字が黄色に、さらにあげると赤い数字に変わる。

 おそらく、青い数字から危険色になると、氾濫水位ということなんだろう。


 ボクはめいっぱい数値をあげてみた。

 すると、


 ……ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!


 突き上げてくるような轟音が、足元から響いてきた。

 まるで重低音のスピーカーの上に乗ってるみたいだ。


 ボクは急いでホコラを出て、天空城のヘリから下の様子を確認する。

 かつてアンジュさんが足を踏みはずしたことがあったので、今は手すりがあるんだ。


 ボクが手すりから乗り出さんばかりに覗き込んでいると、後ろから抱き上げられた。


「あぶないわ、ソラちゃん。なにがあったの?」


 ラヴィさんだ。隣にはアンジュさんもいる。

 ふたりとも、音にビックリして駆けつけたようだ。


 三人そろって、地上の状況をたしかめる。

 川の一部分が、鍋から吹きこぼれたみたいにあふれていた。


 河原どころか、まわりの草原にまで飛び出している濁流。

 ドザザザザという地すべりみたいな音とともに、なにもかもを覆いつくしていく。


 目をこらしてよく見ると……溺れているゴブリンたちが、海に向かって押し流されていた。


「すごい……まるで大雨でアリが流されてるみたい……ソラがやったの?」


 アンジュさんは瞬きも忘れて見入っている。


「うん、降りて戦おうかと思ったんだけど……奇跡を使ったほうがいいかと思って」


 すると、ラヴィさんがボクをギュッと抱きしめてきた。


「ゴブリンちゃんたちはかわいそうだけど……ソラちゃんが危険な目にあわないんだったら、わたし、そのほうがいい……!」


 ……ボクたちは、象の群れが走っているような氾濫を、小さくなるまで見送った。


 ボクはそれから、またホコラに戻って天空石を確認する。

 平原の勢力図は、空白になっていた。


 どうやらあの増水で、モンスターたちをみんな押し流せたようだ。


 よぉし……! これで、最初の準備は整ったぞ……!


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 ボクはそれから数日かけて、次の準備をした。


 森の集落と海の集落をそれぞれ往復して、人手と資材を借りる。

 森で切り倒した木材を平原に運び込んで、藁葺き屋根の家をいくつか作ってもらったんだ。


 それと、広い敷地を柵で囲んでもらった。

 これは、何かというと……馬や牛を飼うための、放牧場になるんだ……!


 ボクは最初、森の集落と海の集落の人たちが行き来できるよう、交易ルートの確保をしようとした。

 でも、途中にある平原を人間の勢力下におかないと、モンスターに襲われて危険だと気づいた。


 それだったら、いっそのこと……間に牧場を作ったらどうか、って思ったんだ。


 平原なら、牧場にするにはピッタリ。

 それに牧場で馬を飼育できれば、移動手段としても使える。


 さらに馬車を作れれば、たくさんの荷物が速く運べる……と考えたんだ。


 数日して、牧場の設備が整った。

 といっても、放牧場にはまだなにもいない……いまはポポが楽しそうに駆け回っているだけだ。


 でもこれで、ボクの計画も最終段階へと移れる。


 ボクは集落のみんなに、牧場までの道を整地するようにお願いした。

 そして、その間に……ボクが動物を集めてくることにしたんだ。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:22)


 今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが5あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (1) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 マジック  … 天空城の奇跡を手から出せる

  神の叡智

   (1) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 天啓    … 人間に知恵を授ける


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界   … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???   … ???

  速度

   (1) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる

   (1) LV2 高速移動  … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???   … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少  … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出    … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???   … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (4) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (1) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (1) LV3 使徒成長  … 人間を使徒にする

  有機生物

   (1) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (1) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 生殖    … 生命を親にする

  回復

   (1) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 死者転生  … 異界から死者を蘇らせる


 ●水勢の奇跡

  波浪

   (0) LV1 小波    … 小さな波を起こす

   (0) LV2 大波    … 大きな波を起こす

   (0) LV3 津波    … 津波を起こす

  水かさ

   (1) LV1 減水    … 水を減らす

   (1) LV2 増水    … 水を増やす

   (1) LV3 海割り   … 水を一時的に割る

  操水

   (0) LV1 霧散    … 霧を作り出す

   (0) LV2 噴水    … 水を噴出させる

   (0) LV3 渦     … 渦を作り出す

  水中

   (0) LV1 呼吸    … 水中で呼吸できるようになる

   (0) LV2 浮力増   … 水中の浮力を増やす

   (0) LV3 浮力減   … 水中の浮力を減らす


 ●天候の奇跡

  雲

   (1) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

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