37 ふたつの集落を、発展させます
ボクたちはマーマンたちをやっつけ、ボスであるマーマンママもやっつけた。
そのおかげで浜辺と沖までの海は、ボクたち人間の領地となる。
いろいろやったせいか、ボクのレベルも19から21にあがっていた。
オジサンいわく、レベル20はボーナスレベルらしく……いつもは1レベルつき1ポイントしかもらえない奇跡ポイントが、一気に5ポイントももらえた。
残しておいた1ポイントと、21レベルになったのとあわせて、ボクは7ポイントもの奇跡ポイントを手にする。
あと、レベル20になったら『エンブレム』と『祈りのポーズ』が作れるようになった。
『エンブレム』はボクの神様としてのシンボルになるらしい。
天空石のメニューの中に増えた、『エンブレム』のアイコンをタッチしてみると、お絵かきツールみたいなのが立ち上がった。
それを使って、ボクはエンブレムを書いてみる。
スマイリーフェイスみたいなんだけど、目もニッコリさせて、口を開けて笑っている、丸くて黄色い顔だ。
スマイリーよりずっと楽しそうなこの顔……ボクは『エンジョイフェイス』と名付けた。
ラヴィさんはボクの考えたエンジョイフェイスを見て、「かわいい! お日さまとお月さまがひとつになれて、喜んでるみたい!」とほめてくれた。
エンブレムの次は、『祈りのポーズを』考える。
これは、ボクに祈りを捧げるときに、みんなが使うことになるポーズみたい。
たとえば、正座して手と手のひらを打ち合わせたり、立膝で座って目の前で十字を切ったり……そういうやつだ。
それらを参考に、ボクが考えた祈りのポーズ……。
それは、まず小さくガッツポーズするみたいに、握った拳を胸のそばに持ってきて、ぐっぐっ、と力を込める。
そのあとは伸び上がって、両手をバンザイさせるんだ。
アンジュさんはボクの考えた祈りのポーズを見て、「祈るっていうより、全身を使って喜んでるみたいね」と言っていた。
ためしに集落のみんなで祈りのポーズをやってみたら、お遊戯みたいで楽しい。
両手をバンザイさせたあと、なんとなくハイタッチをしてみたら、もっともっと楽しくなった。
みんなでハイタッチを繰り返していると、喜びを分かちあってるみたいで……自然と笑みがこぼれてくる。
みんなは『エンジョイフェイス』みたいな、はちれんばかりの笑顔になった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
もうマーマンに襲われることもなくなったので、沖まで出ても平気になった。
たくさんの魚や貝がとれ、食べ物には困らなくなった。
塩もたっぷりあるので、味付けや栄養の心配もない。
このままずっと、ここにいてもいいかなぁ……なんて思っていたんだけど、
「……ソラ モリニ カエリタイ……」
ある日のこと、タチギさんに相談された。
タチギさんの後ろには、エイヤさん、ナッツさん、コトリさんがいる。
どうやらこの4人は、以前に集落のあった森が恋しくなったみたい。
静かな森と、川のせせらぎ……そして土や草の中で暮らしたい……と4人は言った。
そのあと、ボクは1日だけ考えて、決めたんだ。
ふたつの集落に分かれよう、って……!
ボクは改めてみんなを集め、このことを伝える。
森に帰りたい子と、海に残る子……ふた組に分かれてもらった。
森に帰るのは、ボクに相談してきたタチギさん、エイヤさん、ナッツさん、コトリさん。
海に残るのは、ウオンさん、ハヤトさん、ノハラさん、スミレさん、コノハさん。
使徒であるラヴィさんと、天使のアンジュさん、聖獣のポポはボクについてくることになった。
それからボクは、ふたつの集落を見守るための準備をする。
まず、『天空城の奇跡』である『速度アップ』と『高速移動』を取得した。
以前までの天空城の速度だと、森の集落と、海の集落を行き来するのに三日もかかるので、何かあったときになるべく早く駆けつけられるようにしたんだ。
そして次に、連絡をとるための手段を考えた。
狼煙とかどうかなぁと思ったんだけど、アンジュさんのアドバイスで、『神通の奇跡』である『現界の声』を取得した。
これは、集落の中にボクを祀るホコラを作って、その前で祈りのポーズをすると……ボクに声を伝えることができるというものだ。
みんなからボクへの一方通行みたいなんだけど、狼煙よりは便利そうだったので、これを連絡手段にすることにした。
さらに、ボクがいない間にモンスターが攻めてきたことを考えて、ゴーレムを配分した。
これは材質で分ける。海の集落にはサーブルとコキール、森の集落にはピエール。
フルールはアンジュさんが一緒にいたがったので、天空城に残ってもらうことにした。
体制も整ったところで、ボクはみんなを地上に残し、久しぶりに天空城を大空に飛ばした。
なぜかというと、庭にいる小人たちに会うためだ。
人間がいると、小人たちは出てきてくれないんだよね。
人間の気配がなくなったことで、ひょこひょこと草むらから顔を出す小人たち。
人間になりたい子たちを募って、10人ばかり人間にしてあげた。
成長促進で、そのままお兄ちゃんやお姉ちゃんになってもらう。
その10人を、海の集落のメンバーに託した。
ボクがみんなにしてあげたように、この10人の子たちにいろいろ教えてあげて、とお願いする。
ひとまずは10人だけなんだけど、集落の状況を見て、じょじょに増やしていくつもりだ。
その後、いよいよボクは、森の集落のメンバーを天空城に乗せて北上……かつての森の集落へと戻った。
集落の跡地にはゴブリンたちの姿がチラホラあったんだけど、上空から雷の奇跡でやっつける。
再び空白地となった川べりの空き地に、天空城をおろした。
森の集落のほうにも、10人の子たちを託す。
海の集落も森の集落も、どちらも10人ちょっとしかいないんだけど……いちどに増やしても食べ物とか住まいの問題があるので、様子を見つつ増やしていくことにしたんだ。
ここまでで、ボクは1レベルアップしていた。
そして、しばらく間はふたつの集落を行き来して、みんなの自立を助けることにしたんだけど……それにあたって『決まりごと』と『文字』の必要性が出てきた。
『決まりごと』については、みんなが平等に、楽しく暮らしていくためのルールだ。
まずボクは、リーダーについて提案した。
ひとつしか集落がなかったころは、みんなはボクの指示に従ってくれたんだけど……これからはボクがいなくてもやっていけるように、指示を出す人間を立ててもらうことにした。
リーダーの決め方は、まず、リーダーになりたい希望者を募り、交代で少しの間だけリーダーをやってもらう。
その期間が終わったら、誰がリーダーに相応しいかを、集落のみんなで投票して決めてもらう。
投票で選ばれた子が、しばらくの間リーダーを務める……というやり方だ。
その結果、海の集落のリーダーはウオンさん、森の集落のリーダーはタチギさんになった。
細かい『決まりごと』については、集落の中で話し合って決めてもらい、できあがったものにボクやアンジュさんがアドバイスをする、という形にした。
ただ、ひとつだけ……ボクから守ってほしいこととして、みんなにお願いをさせてもらう。
それは『名前のわからないものがあったら、ボクに聞くこと』。
これは、独自に物の名前をつけて、集落ごとに違いが出るのを防ぎたかったんだ。
名前のわからないものがあったら、ボクを呼んでもらって、その名前を教えてあげる……という方法をとった。
そうやって決まりごとができていくと、文字が必要になってくる。
いままでは人数も少なかったし、同じ場所にいたので口頭でも良かったんだけど……決めたことや伝えたいことが多くなってくると、文字で残す必要がでてきたんだ。
これはボクとアンジュさんで手分けをして、それぞれの集落で勉強会を開いた。
とりあえず、日本語のひらがなを覚えてもらう。
覚えた文字は木の板に彫り込んで、もうひとつの連絡手段として使った。
集落のホコラのそばに、神社にある絵馬をかけるような木組みをつくって……そこに文字の彫られた木の板をぶらさげて、掲示板みたいにしたんだ
『決まりごと』と『文字』のおかげで、ふたつの集落はさらに発展した。
みんなで思いを伝えあい、決めて、残し……協力して暮らしていくようになったんだ。
楽しく笑いあい、祈りのポーズでハイタッチするみんなを、空から見下ろすボク。
あとは、見守るだけのほうがいいのかな……なんて思ってたんだけど、とんでもなかった。
『我が神、ソラ様……! どうか、海の魚や貝を、我々にお恵みください……!』
『我が神、ソラ様……! どうか、森の果物や肉を、我々にお恵みください……!』
森の集落と、海の集落……まるで示し合わせたみたいに同時に、おねだりされたんだ。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:22)
今回は『速度アップ』と『高速移動』と『現界の声』に1ポイントずつ割り振りました。未使用ポイントが5あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(1) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 マジック … 天空城の奇跡を手から出せる
神の叡智
(1) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(0) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(0) LV3 天啓 … 人間に知恵を授ける
●天空城の奇跡
高度
(0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(1) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(1) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(4) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(1) LV3 使徒成長 … 人間を使徒にする
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 生殖 … 生命を親にする
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 死者転生 … 異界から死者を蘇らせる
●水勢の奇跡
波浪
(0) LV1 小波 … 小さな波を起こす
(0) LV2 大波 … 大きな波を起こす
(0) LV3 津波 … 津波を起こす
水かさ
(1) LV1 減水 … 水を減らす
(1) LV2 増水 … 水を増やす
(1) LV3 海割り … 水を一時的に割る
操水
(0) LV1 霧散 … 霧を作り出す
(0) LV2 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV3 渦 … 渦を作り出す
水中
(0) LV1 呼吸 … 水中で呼吸できるようになる
(0) LV2 浮力増 … 水中の浮力を増やす
(0) LV3 浮力減 … 水中の浮力を減らす
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




