26 初めての漁で、ごちそうをゲットします
ボクはラヴィさんの髪の毛を使って、タチギさんに糸の作り方を教えた。
数本の髪の毛をより合わせて、太い糸を作る。
複数の太い糸どうしを結び合わせて、長い糸にする。
できあがった長い糸を、しなりのいい枝の先に結びつける。
糸の反対側には、あらかじめタチギさんに作ってもらっていた木の釣り針を結びつける。
「……オオイ! ソラ! トッテキタゾ!」
ちょうどいいタイミングで、他の男の子たちが戻ってきた。
男の子たちは頼んでおいたミミズを、手のひらいっぱいに持っている。
「ありがとう! これを、こうして……っと!」
ボクはミミズを一匹つまみ上げて、釣り針に刺した。
「……コレデ ナニ スルンダ?」
男の子たちはボクのしていることを、まるで妖しい儀式でも前にしているかのように……いぶかしげに眺めている。
「『釣り』をするんだよ! 見てて!」
ボクはできたてホヤホヤの釣り竿を手に、ザブザブと海の中に入る。
竿をグルングルンと振り回して、沖のほうめがけて釣り針を投げ込んだ。
見よう見まねで作った釣り竿での、初めての釣り。
うまくいくかどうかちょっと心配だったけど、すぐに手応えがあった。
ぐんっ! と海に引き込まれるみたいに引っ張られる。
ボクはあわてて足を突っ張って、踏ん張った。
海砂のなかに、足が埋まりこむ。
釣り竿は、への字みたいに大きくしなる。
こらえているはずなのに、すごい力で引きずられる……!
お……思ったより大物みたいだ……!
「……み……みんな手伝って!!」
砂浜で見ていた男の子たちに助けを求めると、次々に海に入ってきてくれる。
釣り竿やボクの腰をガッと掴んで、引っ張られるのを止めてくれた。
「ウ……ウオオオオオオオンッ!!」
みんながさらに力を込めると、ぐぐぐぐっ……! とボクの身体ごと、力強い腕で引っ張りあげられる。
相手は大物かもしれないけど、さすがに男の子数人がかりだと負けない。
沖に引きずり込まれそうになっていたのがピタリと止まり、綱引きで大逆転するみたいに、一気に砂浜まで引き上げることができた。
……ザバンッ!
枕みたいな大きな魚影が海面から跳ね上がり、砂浜にどさりと落ちる。
ビチビチと暴れまわる魚は、川では見たこともないように幅広で、しかもカラフル。
「う……うおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!?!?」
そのインパクトの強さに、ボクらは思わず叫んでいた。
「コンナデカイ サカナ ハジメテダ!」
「シカモ アカイゾ!」
「ウマソォォォーッ!」
男の子たちは大喜びで、魚を胴上げしはじめる。
「ヤ……ヤッタナ! ソラ!」
「コレガ ホシカッタンダ!」
「ホシイモノヲ スグニ トレルナンテ……!」
「スゴイ ソラ モ ドーアゲダッ!」
興奮した男の子たちは、ボクも一緒に担ぎあげようとしてくる。
ボクはとれたての魚と一緒に、何度も宙を舞った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
みんなが落ち着いたあと、ボクはもう一本釣り竿を作った。
ふたりに釣り竿を渡して、魚釣りを体験してもらう。
その間、ボクは残ったメンバーを引き連れて、石ヤリを手に再び海へと向かった。
次に教えたのは、『素潜り漁』というやつだ。
これは魚にそーっと近づいて、ヤリで突くという漁法。
といっても泳いでいる魚を狙うのは難しいから、なるべく止まっている魚を狙うのがコツだ。
普段は泳いでいる魚が、止まる場所といえば……岩陰とかが考えられる。
海の浅瀬のあたりだと、底には砂しかないんだけど……沖のほうまで行くと岩があるんだ。
そこには隠れるためにじっとしている魚がいるはずだから、ソイツを狙うことにした。
ボクは泳いで沖まで出ると、すぅ~っと息を吸い込んで水中に入る。
バタ足で底のほうまで潜っていくと、いい感じの岩があった。
ちょうど窪みのあたりに魚が息を潜めていたので、狙いを定めて……思いっきり突いてみる。
……ガツッ!
しかし、寸前で逃げられてしまった。
ダメか……でも、もう一度!
あきらめずに別の場所にいる魚を突いてみたら、うまく胴体を捉えて捕まることができた。
ボクは大喜びで浮上する。
「……獲った! 獲ったよーーーっ!!」
海面に顔を出して知らせると、みんなも一緒に喜んでくれた。
……この『素潜り漁』のいいところは、魚だけじゃなくて、海の底にある貝とかも捕ることができるんだ。
ボクはさらに潜って、海の底を歩いていたカニも捕まえた。
川にいる小さなカニとは違い、十倍くらいある大きなカニ。
ボクが前にいた世界では、このくらいのカニは高級食材で、お店の看板にもなっている。
看板にもなるくらいだから、きっとすっごくおいしいぞ……! とボクはいまから晩ゴハンを想像して、ゴクリと喉を鳴らした。
みんなも素潜り漁をやりたがったので、コツを教えてあげる。
次々と潜っていく男の子たち。
彼らは最初はなかなか獲物が捕まえられず、何度もあがっては潜りを繰り返していた。
でも、少しずつうまくなっていき、最後は自力で獲物を捕まえられるようになっていた。
ボクたちが挑戦した、はじめての漁。
魚釣りと素潜りをあわせて、まずまずの成果だった。
男の子たちはひとり一匹ずつ魚やカニを抱え、塩作りしている女の子たちの所に向かう。
じゃじゃーん、と大きな魚を見せられた女の子たちは、キャアキャアと大喜び。
感激のあまり男の子たちに抱きついて、感謝の気持ちを表していた。
「お魚を、こんなにいっぱい……! 今夜はごちそうね! ソラちゃんがみんなに教えてあげたんでしょ? えらいえらい!」
ラヴィさんもボクをギューッと胸に抱きしめ、ナデナデに加えて、頬ずりまでして喜んでくれた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ヨシ モット トッテ クルゾ!」
女の子たちの反応に気をよくしたのか、男の子たちはヤリや竿を手に手に、また海に向かって走り出す。
あとは任せても大丈夫だろう、と思いボクは行かなかった。
女の子たちはというと、塩作り班と調理班に分かれ、とれたての魚をさっそく調理している。
石器のナイフで、魚をさばくのももう慣れっこのようだ。
最初に魚のさばき方を教えたときはぎこちなかったけど、今ではボクよりずっと上手だ。
きっと男の子たちがやっている漁のほうも、すぐに追い抜かれちゃうんだろうなぁ……なんて思っていると、叫び声が聞こえてきた。
沖に出た男の子たちが、揃って助けを求めていたんだ。
「タッ……タスケテ!!」
「ヘンナ ヤツガ イルッ!!」
「ワアアッ!? ヒッパルナ!! カミツクナ!!」
水面から顔を出したかと思うと大声をあげ、また沈み込む。
どうやら何者かに足を引っ張られて、溺れているようだ。
「……ポポ! ピエール! フルール! 助けにむかって!」
ボクはとっさに、仲間たちに呼びかける。
ポポは地を蹴りながら犬に変身し、魚雷のような勢いで海に飛び込む。
陸では目の覚めるような速さだったんだけど……海に入ったとたん亀のような遅さになる。
……犬かきなので、かなり遅い。
ピエールは丘の向こうにいて、ズシン、スジンと地を揺らしながらゆっくりとこちらに向かってきていた。
ああっ……!? これじゃ、ポポもピエールも、どっちも間に合いそうにない……!!
そうだ、最後の頼みであるフルールは……!?
と思ったら、ボクの横に佇んでいた。
「マスターに確認します。自分は塩分の含有量が多い水に入ると、著しく身体を損傷します。また水の中での移動速度は、現在のポポと同等です。対費用効果が劣悪だと判断しますが、命令実行してよろしいですか?」
「そ……それは……。あっ! じゃ、じゃあ、アイヴィーウイップで絡め取れない!?」
「あの距離までは届きません」
冷静に拒否され、ボクは頭をかきむしる。
ああっ、どうすればいいんだっ!?
こうしてるうちに、溺れてるみんなの姿が、どんどん見えなくなってきてるのに……!
あ! そうだ……! 新しい奇跡、新しい奇跡があったんだ……!
ボクはオーバーオールのポケットから、わたわたとスマート天空石を取り出すと、奇跡ツリーを開く。
今朝、新しく追加されたのは『水勢の奇跡』。
水にまつわる奇跡のようだ。
ボクはざっと見渡して、少しだけ考えたあと……『水かさ』の奇跡に賭けることを決意する。
レベル1の『増水』、レベル2の『減水』、そしてレベル3の『海割り』に連続タッチして、1ポイントずつ割り振った。
もしかしたら『減水』があれば、みんなを助けられるかもしれないんだけど……海の水を減らすのは時間がかかりそうだから、ズバリ海を割れる奇跡まで取ってみたんだ。
ボクはスマート天空石から顔をあげると、右手をバッとかざし、叫ぶ。
「……海よっ!! 割れろぉぉぉっ!!」
ボクの右手が海神の矛のように、まばゆい光を放つ。
続けざまに手のひらから放たれる、放水のようなレーザービーム。
ビームが海に着弾すると、曳き波のような白い跡が走った。
泡立つような白いウェーブは、男の子たちが溺れていた場所まで及ぶ。
直後……そこからナイフで、ゼリーでも切り裂くかのように、
……ドバッ……!! シャァァァァァァァァァァァァ………ッ!!!
海が、真っ二つに割れたんだ……!!
まるで、『モーセの奇跡』のように……!!
旧約聖書に出てくる、指導者のモーセ。
彼は紀元前13世紀ごろ、奴隷のヘブライ人たちを引き連れてエジブトを脱走、約束の地と呼ばれるカナンを目指した。
しかしカナンまであと少しという海の手前で、ファラオが差し向けた軍隊に追い詰められる。
最大のピンチ……! でもモーセが手を上げると、海が割れて道ができたんだ。
新たな道を通って、海を渡るモーセたち。
彼らが渡りきったところで海は元に戻り、後から追いかけてきたエジプト人たちは溺れ、追っ手を振り切ることができたという。
本とか映画とかで見た、モーセの海割りの奇跡は……大勢のヘブライ人が渡れるくらいに幅が広くて、また割れた海もビルみたいな高さでそびえていた。
ボクが今やった海割りの奇跡は……それに比べると幅も狭くて、こじんまりしてる。
しかも沖のあたりで途切れちゃってるけど……でも、男の子たちは助けられたようだ。
割れてできた砂浜のうえに、みんな倒れている。
しかし……安心できるだけの余裕はなかった。
なぜなら魚のオバケみたいなヤツらが、倒れた男の子たちを取り囲んでいたからだ。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:16)
今回は『減水』と『増水』と『海割り』に1ポイントずつ割り振りました。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●水勢の奇跡
波浪
(0) LV1 小波 … 小さな波を起こす
(0) LV2 大波 … 大きな波を起こす
(0) LV3 津波 … 津波を起こす
水かさ
(1) LV1 減水 … 水を減らす
(1) LV2 増水 … 水を増やす
(1) LV3 海割り … 水を一時的に割る
操水
(0) LV1 霧散 … 霧を作り出す
(0) LV2 噴水 … 水を噴出させる
(0) LV3 渦 … 渦を作り出す
水中
(0) LV1 呼吸 … 水中で呼吸できるようになる
(0) LV2 浮力増 … 水中の浮力を増やす
(0) LV3 浮力減 … 水中の浮力を減らす
●創造の奇跡
魔法生物
(4) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(1) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(0) LV3 ??? … ???
有機生物
(1) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(1) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 ??? … ???
回復
(1) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(0) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 マジック … 天空城の奇跡を手から出せる
神の叡智
(0) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(0) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(0) LV3 天啓 … 人間に知恵を授ける
●天候の奇跡
雲
(1) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●天空城の奇跡
高度
(0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(0) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




