プロローグ
――キミには、僕の声が届くみたいだね
そうだね……そうですね? 俺にはキミが誰か分かんないけど……
――無理に畏まらなくていいよ。あと、心配しなくても僕の正体は後で教えるよ。
今教えてよ。
――ところで早速話は変わるけど、キミ、浮浪者って見たことある?
浮浪者……? いきなりだね。俺の街にはいないかな、田舎だし。
――そうなの?
そうだよ。
――なら想像でいいから答えてくれないかな。キミは浮浪者に石を投げる若者を見て、どう思う?
……悪いことだと思う、かな。
――本心で答えて。
…………本心だよ。
――悪いようにはしないから。本当のキミが知りたい。
本当?
――本当。僕は冗談は言っても嘘は吐かないよ。
なら正直に言うけど、馬鹿だと思うな。
――それは何故?
自分たちと全く関わりない浮浪者を痛めつけるなんて無駄なことしているから?
……??
――どうしたの?
何で無駄なの? 無駄じゃないと俺は思うけど……。
――どうして?
だって若者たちはそれで満足してるんでしょ? なら無駄じゃないよ。
ただ、俺は馬鹿だなって思うかな。俺だったら絶対に浮浪者に石なんて投げないし。
――続けて。
浮浪者は大人でしょ? 中には力仕事をしてた人もいるかもしれない。徒党を組んで復讐されるかもしれない。警察に駆けこまれるかもしれない。そんな危険が沢山あるのに、浮浪者を狙うなんて馬鹿だよ。
――言われてみれば、確かにそうだね。
俺が狙うなら……。
――狙うなら?
やっぱり子供かな。
石を投げるなら、やっぱり子供。
子供は浮浪者と違って何処にでもいる。
浮浪者は諦めて反応が鈍いけど、子供は純粋だから反応の鮮度も良いんだ。
純真が染まっていく様は癖になるよ。
おまけに他人の顔を覚えるほど記憶力も良くないし、親に泣きついて、警察に情報が回って注意を呼びかけられたとしても、……ほら、俺と似た特徴の人間は腐るほどいる。
――罪悪感とかはないの?
ないよ、俺は実際にやっていないし。ただ、俺ならこうする。それを正直に話しただけだよ。
――やってみたい?
…………それより、キミの正体を教えてよ。
――僕の正体? いいよ、教えてあげる。名前はマキナ。職業は……
……職業は?
――ふふっ、僕は神様さ! ねぇキミ、僕の天使になってよ。
――僕の天使になれば、きっと毎日が楽しいよ。
※注意※
神様は物語の登場人物であり、現実世界の一切に関係ありません
特に宗教色が強い訳ではありません
バトル物ですので、ご心配なく